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🐰月うさぎの物語🐰その1

北欧の寒い国のお話です
リリィはお手伝いさんで大きなお屋敷の屋根裏部屋で暮らしていました
屋根裏部屋の床は所々抜け落ち
ギシギシと音を立てるので
とても不安でしたが
リリィはこの部屋が大好きでした

なぜなら小さな出窓から溺れる月の光がとても綺麗でまるで黄金のシャワー見えたり破れたままの古びたカーテンさえもレースのシフォンのように見えたりと
リリィはとても感受性の強い女の子だったので何でも楽しく想像して楽しんでいたのです
カーテンの隙間から溢れるキラキラした月の光が小さなテーブルに当たると
電気のない部屋でもリリィは大好きな読書を楽しむことが出来るので
とても幸せだったのです

コンコン…
小さな出窓を叩く音に
不思議に思いながら少しだけ
窓を開けると
一羽の白いうさぎがちょこんと
こちらの方を見ています
かわいい!うさぎさんだわ!
リリィが窓を全部開けると
ピョンピョン跳ねながらリリィの肩に乗ったり膝の上で甘えたりと
まるでずっと前からのお友達のように懐くのでした

リリィはうさぎの頭を撫でながら
あなたの名前は
そうね…ルウなんてどうかしら?
ルウに決まりね
そう言うとうさぎは嬉しそうに何度も跳ねながら出窓の外へと消えてしまいました
それからと言うもの
毎日のようにルウはリリィの元に現れては
リリィが読書をする横で居眠りしたり
ハギレを継ぎ合わせて作ったベットシーツに丸まったりと
リリィの心を癒しました

そんなある日のこと…
お屋敷のお嬢様が大きな声で
わたしのドレスがないわ!
あのドレスはお母様からプレゼントされた大切なドレスなのよ!今度の舞踏会で着る為にお母様が用意してくださったのよ!
そう言うと突然リリィの部屋の方を指差しメイド達にむかって
もしかしたらあの子が泥棒したのかもしれないわ!探しなさい!
とものすごい剣幕でまくし立てました

メイド達はリリィの部屋をノックするとまだ眠ったままのリリィを
揺さぶり起こし
いつまで寝てんだ!
あんたお嬢様の大切なドレスを盗んだんだろ!と片っ端から探し回りました
するとリリィのベットの下から
お嬢様のドレスが見つかったのです

やっぱり犯人はあんただったんだね!
メイド達はお嬢様をリリィの部屋に呼びつけると
お嬢様はリリィに向かって
貧乏人にこのドレスが似合うとでも思ったの!
あんたになんか似合うわけないでしょ!
泥棒!恥を知りなさい!
もうあなたなんていらない
とっととわたしの目の前からいなくなりなさいな!
散々罵倒し部屋を出ていきました

まったく身に覚えのない
出来事にリリィは
悲しくて涙が溢れ落ちるのでした
その日の夜はとても綺麗な満月で
リリィは月に向かってこう呟きました

神様わたしは
泥棒なんてしてません…
神様わたしを
信じて下さい…
涙にくれるリリィの元に
出窓からルウが現れ
そっと寄り添いました
それはまるで
リリィあなたは
泥棒なんて絶対にしない
ちゃんと知ってるよ…
と言ってくれてるように
寄り添っていたのです

すると満月の光りがリリィの擦りきれたワンピースを照らし
まるで飛びっきり綺麗なドレスのように見えたのです
満月の黄金の光りに包まれたリリィは
本物のお姫さまのように美しく見えました
満月の光りがボロボロの床を照らすと
そこはまるで舞踏会のように思えてきて
嬉しくなったリリィが思わずダンスを踊り出すとルウも見様見真似で
ダンスを踊ります

そんな様子をリリィの部屋の隙間から覗いていたメイドが
お嬢様に告げ口をしたのです

あの子絶対に緩さないわ!
実はお嬢様と
リリィは同じ年で
貧乏人でも楽しそうにお掃除をしたり
明るく振る舞うリリィのことが気に入らなかったのです
何不自由のなく欲しいものはすべて手に入るお嬢様はどんなに面倒な言い付けにも笑顔で答えるリリィのことが大嫌いでした

この間のドレスのことも
リリィがお屋敷をお掃除している間にメイドに命令してこっそりリリィの部屋に忍び込んでベットの下に忍ばせさせたのでした

あの子許せないわ!
何でも持ってるわたしが
こんなに退屈してるのに
何も持っていないあの娘が
あんなに楽しそうにしてるなんて!
絶対に許さないわ!
お嬢様は
そう言うと
美しいドレスをハサミで切り裂いて
ゴミ箱に投げ捨てたのでした

続く…























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