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🎡観覧車の記憶…僕の回想

明日あの観覧車の前で待ってる…
今でも君の声が僕のすぐそばにあるんだ
止まったままの観覧車
止まったままの
僕の時間
この風景って廃墟っていうのかな…
なんとなく違う気もするんだけど…
僕の家のすぐ側にある
小さな遊園地は5年と5ヶ月前に完全に閉鎖され静寂の住みかとなった
小さな町に作られた
観覧車は観光事業に利益を出すこともなく半年持たないまま
人々の記憶力からフェイドアウトしてしまった
小さな遊園地には何故か観覧車とブランコしかなく人々の目的はもちろん観覧車でそれは僕も同じだった
観覧車が動き出す合図はオルゴールでドビュッシーの曲なんだけど
曲名はわからないけどその音が鳴り出すと僕は子供のように高揚していた
観覧車の一番てっぺんまで行くと
見下ろす景色すべてがミニチュアみたいに見えてなんだかとても滑稽に見えた
あんなちっぽけな世界で右往左往する人々の人生がくだらなく見えて仕方なかった
でもそんな滑稽な世界で毎日色んな現実とか葛藤とか理不尽とか不可抗力とかに振り回されながら生きてるのは
僕なんだけど…
閉鎖された遊園地は立ち入り禁止の看板が置いてはあるけど
そんなの誰も守りはしないたまに肝試しをしにわざわざ恐怖を煽りに来る奴らもいるけど普段はその存在さえも風化してしまうほど
誰も近づくことはなかった…
もうひとつ
この遊園地にはある噂があって
その噂って言うのは観覧車の前で女の子の幽霊が出るって話なんだけど
そんな迷信誰も信じていなかった
廃墟によくありがちな
噂話なんじゃないの?的な…
実は僕は
深夜によく遊園地に来ていた
目的は深夜の遊園地がとても美しいから
廃墟の遊園地がなぜ?美しいのかと言うと星の煌めきが観覧車を照らして
とても幻想的でファンタジックなドラマを見せてくれるから
そして今夜も僕はそのファンジックなドラマを観るために遊園地へと吸い込まれるように足を運ぶ
昨夜の雨のせいで
水溜まりがあちこちにあって
そのひとつひとつに写し出される星の煌めきと観覧車の優美さが僕の胸を高まらせる
静寂の中止まったままの時計の針が静かにゆっくりと音を立てて動き出す
様を僕はまだこの時気づいてはいなかった
でもその5分後くらいに
オルゴールがドビュッシーの曲を奏でるとスローモーションみたいに観覧車が動き始めるのが見える
僕の胸の鼓動は高鳴り出して思考が上手く動かない
高鳴る胸の鼓動を感じながらも小走りで観覧車のある場所へと向かう
コンバースの白いスニーカーのかかとを踏みながら君が待つあの場所へと向かっていた
君の姿を見つけると
朴笑顔で手を振って
君の側に駆け寄った
遅い!
そう言って頬を膨らませながら僕の
腕にしがみつく君の髪をそっと撫でる
君は少しだけ機嫌を直してくれたみたいで安心した
もう1人にはしないからね…
君はとても嬉しそうに
笑顔で
約束だよ…って言った
お揃いの白いスニーカーについた鮮血に理由なんていらない
僕たちは手を繋いで観覧車に乗り込むと2度と戻ることのない
何処かへ消えてしまうに違いない…
僕よりも少し先に逝ってしまった君を追いかけて僕は何の後悔もためらいもなく
ただ君のことがずっと忘れられなくて止まってしまった漆黒の暗闇の世界でセンチメンタルな精算を自らの意思で決めたんだ
そこに何の理由もなければ
後悔も
未練も
リターンも必要なかったんだ
僕は君のそばにいることを選んだのだから…






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