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7秒タイムマシン 第27話「別れの試練」

第27話 「別れの試練」


レン、エミリ、そしてアヤカの三人がそれぞれ異なる方向へと引き離され、闇の中へと落ちていった瞬間、彼らの心には恐怖が走った。まるで底の見えない奈落に吸い込まれるような感覚が、彼らを包み込んでいた。

レンは、意識を取り戻したとき、冷たい石の床の上に横たわっていた。彼の周りには暗闇が広がっており、どこかからか水が滴り落ちる音が響いていた。彼はすぐに立ち上がり、エミリとアヤカを探し始めたが、彼女たちの姿は見当たらなかった。

「エミリ!アヤカ!」レンは必死に叫んだが、彼の声は虚しく暗闇に吸い込まれていった。焦りと不安が募る中、レンは自分を奮い立たせ、冷静さを保つように努めた。

「落ち着け…きっと二人も無事だ。何とかして再会しなきゃ…」

その時、遠くからかすかな光が見えた。レンはその光を頼りに、暗闇の中を慎重に進んでいった。やがて彼は広い部屋にたどり着いた。部屋の中央には大きな鏡が立っており、その鏡の前に立つと、自分の姿が映し出された。

しかし、その鏡に映る自分は、なぜか現実とは異なっていた。レンは驚いて鏡を凝視した。そこには、かつての自分が映し出されていた。若い頃、まだ家族を持つ前の、孤独で迷っていた時期のレンが立っていたのだ。

「これは…一体どういうことだ?」

鏡の中の若いレンが、突然口を開いた。「お前は本当に家族を守れるのか?エミリもアヤカも、お前のせいで危険に晒されているのではないか?」

レンは動揺しながらも、自分を奮い立たせた。「違う…俺は彼女たちを守るためにここにいるんだ!一人じゃない。今は家族がいるんだ!」

鏡の中のレンは冷たい目で彼を見つめ続けたが、次第にその姿は消えていった。代わりに、鏡の中にはエミリとアヤカの姿が映し出された。二人は不安そうに彼を見つめていた。

「レン、私たちを本当に守れるの?」エミリの声が響いた。

「パパ、私、怖いよ…」アヤカが泣きそうな顔で言った。

レンはその言葉に胸が締め付けられるような感覚を覚えたが、すぐに心を奮い立たせた。「大丈夫だ。俺は必ず二人を守る。どんなことがあっても、一緒に帰るんだ!」

その瞬間、鏡が光り輝き、レンの目の前で割れた。破片が床に散らばり、その中から一筋の光が差し込んできた。レンはその光に導かれるようにして、再び歩き出した。

一方、エミリもまた、自分だけが知らない場所にいることに気づいていた。彼女は不安を抑えながら、周囲を見回した。暗闇の中、かすかに光る石が足元に転がっていた。彼女はその石を拾い上げ、前へと進む勇気を奮い起こした。

しばらく歩いていると、エミリは突然、かつての自分が立っているのを目にした。彼女は若い頃の自分に驚き、言葉を失った。その頃のエミリはまだ夢を追いかけていて、自由で独立した女性だった。彼女はレンと出会う前の、孤独を感じていた自分を見つめていた。

「あなたは今、本当に幸せなの?」若いエミリが問いかけた。「家族に縛られて、自分の夢を捨ててしまったんじゃない?」

エミリはその言葉に胸が締め付けられたが、すぐに冷静さを取り戻した。「確かに昔の私は自由だったかもしれない。でも、今の私は家族と一緒にいることで本当の幸せを感じている。レンとアヤカがいるからこそ、私は強くなれるの。」

若いエミリの姿はやがて消え、代わりに道が開かれた。エミリは決意を新たにして、その道を進んでいった。

アヤカもまた、暗闇の中で試練を受けていた。彼女は見知らぬ森の中で一人、怯えていた。目の前には、巨大な影がゆっくりと近づいてきた。アヤカはその恐怖に打ち勝とうと、勇気を振り絞って叫んだ。

「私は一人じゃない!パパとママがいるもん!」

すると、影は次第に消えていき、代わりに明るい光が差し込んできた。アヤカはその光に向かって走り出した。

やがて、三人はそれぞれの道を進んだ先で再び合流した。暗闇の中で引き裂かれた彼らだったが、試練を乗り越えたことで、より強い絆で結ばれていた。

「もう二度と離れないようにしような。」レンが静かに言った。

エミリとアヤカも頷き、三人はしっかりと手を取り合った。再び道が開かれ、光の塔の最上階へと続く階段が現れた。

「行こう。ここが最後の試練だ。」レンが言い、三人は階段を上り始めた。彼らの心には、家族としての強い絆と、必ず元の世界に戻るという決意が燃えていた。

塔の頂上には、一筋の光が輝いていた。そこには、アルケンの賢者たちが彼らを待っていた。


つづく

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