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ハラリの教育論の編集


【 何を伝えたいか】
 教育について素人であるので、教育について私見は書かない。
教育学を学んだわけではないし、議論に参加したことがあるわけでもない。しかし、教育が、世界が、そして地球生態系が変化の瀬戸際にあることは知っている。そんななか、歴史家、ユヴァル・ハラリの『21Lessons』を読んだ。今回は、19章の「教育」を編集してみたい。

【 要約】

まず、ハラリはこういう。

「人類は前代未聞の革命に直面しており、私たちの昔ながらの物語はみな崩れかけ、その代わりとなる新しい物語は、今のところ一つも現れていない。このような史上空前の変化と根源的な不確実性を伴う世界に対して、私たちはどう備え、次の世代にはどんな準備をさせておけるのか。(p.335)』


 つまり、人類社会は、これまでの歴史上で直面したことのない前代未聞の革命に直面している。
気候危機やAI革命、生物工学やバイオサイエンスの劇的な進歩、「10年ごとに職業を変える必要性(p.343)」…. といったパラダイス・シフト、あるいは、ポスト・アントロポセン、または、新たなる産業革命に直面している。変化に次ぐ変化 !
私たちが生きている世界は、空前の変化にさらされている世界なのだ !

では、学びの在り方をどう問うべきなのか。
「そのような世界で生き延び、栄えるには、精神的柔軟性と情緒的なバランスがたっぷり必要だ。自分が最もよく知っているものの一部を捨てることを繰り返さざるをえず、未知のものにも平然と対応できなくてはならないだろう。(p.343)」

つまり、絶えず学び続けるなかで、自身の変容に対する、精神的な柔軟性、バランス、心の安定を保つことが何よりも大切だという。
そして、痛烈にもこういう。

「21世紀に求められる精神的柔軟性を教師自体がたいてい欠いている。なぜなら、彼ら自身が古い教育制度の産物だからだ。(p.343)」

「産業革命が私たちに残したのが、教育の生産ライン理論だ。町の真ん中に大きなコンクリートの建物があり、中にはまったく同じ造りの部屋が並び…(p.343)」

「生徒たちにさらに情報を与えるほど無用な行為はない。生徒はすでに、とんでもないほどの情報を持っているからだ。人々が必要としているのは、情報ではなく、情報の意味を理解したり、重要なものとそうでないものを見分けたりする能力、そして何より、大量の情報の断片を結びつけて、世の中の状況を幅広く捉える能力だ。(p.338)」

【 まとめ】
歴史学者であるハラリが「未知との遭遇が常識となる時代には、自分の過去の経験ばかりか全人類の過去の経験も、手引きとしては以前ほど頼りにならない」と歴史への必要以上の絶対的信頼を捨てる態度を示しているのに対しては、賢明さが伝わってきた。総合知の意義が高まっている今日において、この見方は大切だろう。ビッグヒストリーはだからこそ、必要なのだと思う。

ハラリは、youtubeにある『21Lessons』の公式動画で、この10年間に生まれた子どもたちに、こうメッセージしている。

「精神の健康と感情知能を高め、生きている限り学び続けること(要約)」


最後に、『21Lessons』中の、ハラリの教育論のコアをまとめてみたい。

「教育は産業革命以来の転換点に直面している。従来までの、教師が生徒に情報を一方的に伝える、詰め込みの教育は、時代遅れである。必要なのは、最大限の情報ではない。情報の意味を解釈したり、批判的に思考したり、総合的に捉える能力である。そして、教えることが難しい精神的柔軟性と心のバランスの保ち方が鍵となる。さらに、大人を頼り過ぎず、自分を知ること。」

教育や学びの在り方を考える上で、ハラリの教育論は現在の立ち位置と必要とされていることを把握でき、有意義だった。学びを模索するあらゆる人に『21Lessons』をすすめたいと思った。


ご清聴ありがとうございました。









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