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最初の就職の話 ⑦

無断欠勤当日。
財布の中身が乏しい状態で遠方へは行けず、定期券の範囲+そこから徒歩で行ける範囲で本来仕事に行っている時間を過ごしました。
解放感と同時に襲ってくる疲労感やむなしさ。 

気持ちを落ち着かせるためには、座って過ごす必要があります。

緑豊かな公園を背後に建てられた大きな図書館の3階の郷土図書を扱ったフロアが私のお気に入りで、平日の昼間は広いテーブルに空きがあったため、賀川豊彦の「死線を越えて」などを読み尽くしたのでした。
(そこで改めて、弱い立場にいる人たちに寄りそう生き方をしたいと思いました)

1階の一般図書のコーナーへ降り、大きな手動のガラス扉を開けると庭に出ることができました。

庭の白いテーブル席で私は自閉症関連の本を読みふけりました。

それらの本を見つけたのは高校時代でしたが、実際に読み始めたのが専門学校に通い始めて1年目の頃。
当時はASD関連の書籍は少なく、相当なことがない限り手にとることのない本なのだと周りの目が気になっていました。

そうとは言え、自分が自閉症であると比較的早い段階(小学校高学年)から意識していた私はドナ・ウィリアムズやテンプル・グランディンの本を手にとっては、彼女たちの幼少期の感性と自らの感性に類似するものがあることを感じていました。

あと、当時は毎日のように詩を書いており、村上春樹訳のレイモンド・カーヴァーの詩集がお気に入りでした(図書館で読むだけでは飽き足らず、のちにそれらの本を全て買うことになります)。

図書館へ寄って充足感を得られた状態で家に帰ると、姉が厳しい顔で待っていました。
私の勤務先の経理部長から姉の会社に電話がかかってきたと。
妹さんが連絡なしで休んだけれどどうしてるのかと。

ちょうど両親は旅行中で家には姉妹2人しかいませんでした。
私は姉に懇願しました。
明日から出勤するから母にだけは言わないで欲しいと。

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