ぶどうほおずき

ASD当事者。がんサバイバー。 文章力には自信はありませんが、発達障がい当事者目線から…

ぶどうほおずき

ASD当事者。がんサバイバー。 文章力には自信はありませんが、発達障がい当事者目線から伝えられることを綴っていきたいと思います。 趣味はスマホで写真を撮ることで、見出し写真を中心に使っていただきやすい写真を共有しております。 よろしくお願いいたします。

マガジン

  • こころとからだ

    頻尿、イップス、解離性障害、PMDD(PMS)、強迫神経症、睡眠障害、依存症etc…病気関連の話がメインになります。

  • 2度目の就職の話

    面接編、薬局編に続き、受付編、検査室編、震災編、闘病編、退職編と続きます。 この頃はまだ一般枠での勤務でした。 社内ニートに陥ってしまう検査室編以降が話のメインとなります。

  • 最初の就職の話

    ASD特性から、女性同士の輪に入ることができず、女性に対し特にルールの多い職場に馴染めなかった最初の就職の話になります。

最近の記事

2度目の就職の話 【薬局編 ⑬】

基本、パートタイマーの蒔田さんの勤務が午前中だけであったために、昼休憩からは嵐のような時間を桐島さんと共に闘う日々が続いていました。 そして、入社2ケ月を迎えようとしていたある日、独自の判断から、桐島さんが昼食で席を外している間に隣りの受付から手渡された手書きの処方箋を、プリンターから打ち出された薬の説明書の内容と照らし合わせながら、単独で薬袋に入れ、複数人の患者様に薬を手渡すといった禁忌な行動を取ってしまったのです。 (「多分間違いもないし、ばれはしないわ。駄目なことと言

    • 選ばれなかった過去

      XやThreadsなどのSNSをしていると、子どもの頃、自分が本当のことを話しても、大人の勝手な価値観から教師に全否定されトラウマを抱えているといった呟きをよく見かけます。 それに対する回答でそんな教師は地獄に落ちるべきだと書かれてあったりしますが、自分も少なからず理不尽な目に遭ったほうではあるものの、そこまでは思えないですね。 もう対象者がこの世界にはいないかも知れないという可能性を考えると、声が届かない人にもう何の感情も湧かないという感じでしょうか。 既に鬼籍に入ら

      • 2度目の就職の話 【薬局編 ⑫】

        「看護婦さん、これ本当に眠れるお薬なの?」 ご高齢の患者様の中には、看護師と似たデザインの制服を着た私をそう呼ぶかたが多々いました。 「え、これ、胃薬?」  後ろで桐島さんがしっと合図をしました。 シートから出して分包された胃薬のカプセルをそのまま黙って渡せばよいと言われていたのですが、私は一瞬で状況を読み取るのが苦手なのです。  「眠れる薬ですよ。」 危機一髪でしたがそう説明しなおして、患者様に薬を手渡しました。 (※現在は投薬の説明は有資格者のみが行うことが徹底されてい

        2度目の就職の話 【薬局編 ⑬】

        マガジン

        • こころとからだ
          2本
        • 2度目の就職の話
          16本
        • 最初の就職の話
          9本

        記事

          2度目の就職の話 【薬局編 ⑪】

          上村さんが使っていたマグカップと同じものを探しに、主要駅にある大型雑貨店を訪ねましたがシンプルなものしか見つかりませんでした。 今ならネットショッピングで簡単に見つけることが出来たでしょうが、当時はまだ初代のWindowsの発売以前、インターネット環境を持つ一般人などほとんどいない時代でした。 「これいいんじゃない?持ちやすいし。」 一緒にいた専門学校時代の友人が、ピンク色で持ち手に特徴のあるスタイリッシュなデザインのマグカップを見つけてくれました。 「そうね。」 上村さん

          2度目の就職の話 【薬局編 ⑪】

          2度目の就職の話 【薬局編 ⑩】

          「今週金曜日の夜、空いてる?」 いつになく笑顔の桐島さんに声を掛けられました。 「院長先生のお気に入りのステーキのお店があるらしくて、よかったら薬局の皆さんも一緒にって」 食事会か…私は前職の苦い記憶が甦りました。 けれど、今回は給料日直後だから大丈夫かな。 私は会費について桐島さんに訊ねると、 「心配しなくていいのよ。院長先生だもの。ごちそうしてもらえるに決まってるじゃない」との回答でした。 薬剤師である桐島さんや蒔田さんだけではなく、私も平等に誘って下さったことが意外で

          2度目の就職の話 【薬局編 ⑩】

          2度目の就職の話 【薬局編 ⑨】

          初給与をいただいた日のこと、 廊下を歩いていたところ、岩橋さんに呼び止められました。 また何か質問をして上村さんと話のネタを共有するのだろうと思いましたが、 気付けば「何でしょう?」とこちらから尋ね返していました。 「基本給はいくらなの?」 予想通りのタイミングでの予想通りの質問でした。 1990年代初期の当時は確かに最低賃金のラインは今よりかなり低かったですが、その時代でもなお低いと感じるレベルのもの。 日本一高いと言われる電車の交通費と週2、3回の残業を含めて手取り12

          2度目の就職の話 【薬局編 ⑨】

          2度目の就職の話 【薬局編 ⑧】

          翌朝、私は職場へ向かうも、間近まで来て脚が駅方向へと引き返していました。 とりあえず落ち着こう…。 私は職場の人が通らないか気配を気にしながら、国道沿いにある横長い建物の純喫茶に入りました。 「いらっしゃいませ。」 木の扉を開けると60代と思われる気品漂うマスターが、真空サイフォンで先客のコーヒーを淹れていました。 飾りランプに灯された白壁には、世界地図のパネルが掲げられており、それぞれのコーヒーの産地に焙煎された豆が貼り付けられてあります。 紛れもなく詩が存在する空間。 

          2度目の就職の話 【薬局編 ⑧】

          2度目の就職の話 【薬局編 ⑦】

          入社してひと月ほどが経ち、私はますます焦りと緊張、そして不注意からのミスを繰り返してしまうようになりました。 そのたびに桐島さんに叱責され、隣の受付からは私の噂話が聞こえてくるようになりました。 ある残業の日、薬局のプリンターから打ち出された患者様に渡す投薬の説明の用紙が消えてしまいました。 「ない、ないわ。」 「そんな消えるはずないじゃないの。見つかるまで探して。」 薬待ちの患者様は薬局窓口の前で、いらいらを募らせています。 そして、桐島さんと私のやりとりを見ていた上村さ

          2度目の就職の話 【薬局編 ⑦】

          2度目の就職の話 【薬局編 ⑥】

          桐島さんとふたりきりだった薬局に、院長の紹介で週2回のパートタイマーの大学院に通う女性、蒔田さん(仮名)が入られました。 私より3つ年上でしたが、可愛らしい顔立ちのとても丁寧な挨拶をされるかたでした。  私が彼女に挨拶を終え、いつもの椅子に座ると、受付と薬局の間の扉が開きました。 蒔田さんの椅子がないことに気付き、上村さんが持ってきてくれたのでした。 「どうぞ。」 笑顔の上村さんに、 「ありがとうございます。」と丁寧に答える蒔田さん。 相手は年下なのだから、ありがとうござい

          2度目の就職の話 【薬局編 ⑥】

          2度目の就職の話 【薬局編 ⑤】

          桐島さんは慣れない科長の役割に加え、仕事面でも常識面でも注意が必要で危なっかしい私との毎日に常にピリピリしているように感じました。 昼食時は薬局を閉めて、ふたり同時に行けばいいと思うのですが、劇薬と言われる特に注意が必要な薬も複数置いていたためか、ひとりずつ行く決まりがありました。 外来の処方薬も、病棟へ上げる様々な薬も、集める人と確認する人(※一方は薬剤師でないといけない)、必ず双方いる必要があるため、桐島さんが席を外している間は確認待ちの薬が溜まっていく一方で、患者様から

          2度目の就職の話 【薬局編 ⑤】

          2度目の就職の話 【薬局編 ④】

          「困るわよね。」 桐島さんがため息をつきました。 私が分包機を使って分包した錠剤の個数に過不足がありました。 旧式の機械のため、ロール状のグラシン紙に分包されていく段階で錠剤が飛んでしまうといった事も考えられますが、気を付けるには越したことがないのです。 なお、出来上がったものは薬剤師である科長か桐島さんがチェックするので間違えて患者様の手に渡ることはありません。 その様子を見てまた受付がざわついていました。 「それからね。」 桐島さんが口を開きました。 「患者対応の合間

          2度目の就職の話 【薬局編 ④】

          2度目の就職の話 【薬局編 ③】

          科長の退職間近の頃のこと、私は薬の分包機の使い方を彼女から教わり、一枠ごとにシートから直接錠剤を入れていってました。 私は慣れるとともに少しずつピッチを上げていきました。 その姿を見た桐島さんがひと言。 「この仕事楽しい?」 私は戸惑いながらも笑顔で、 「はい、楽しいです。」と答えると、 桐島さんは次の瞬間、 「楽しいって…。たこ焼き屋のほうが向いてるんじゃないの?」と答えたのです。 私はなんとなく違和感をおぼえました。 そして、その頃、内ドアを隔てて隣にいる受付の上村さん

          2度目の就職の話 【薬局編 ③】

          2度目の就職の話 【薬局編 ②】

          私が入社した時点では、20代の女性が薬剤科の科長で間もなく結婚退職をされるため、後の科長となる桐島さんに引き継ぎをしているところでした。 科長は私にはとても優しく、桐島さんには厳しい印象だったと記憶しています。 桐島さんは30代後半で子育てをしながら薬学部のある大学に通われた努力型のかたでした。 他の院内薬局で2年ほど経験を積んだ後、この病院に来られたそうです。 そして努力型であるとともに、控えめに見えて気位の高いかただと感じていました。 当時の科長は緊張と不安で張り詰め

          2度目の就職の話 【薬局編 ②】

          2度目の就職の話 【薬局編 ①】

          仕事の初日の日、私は面接を行った会議室内でバレーボールの話で苦戦した事務部長とこれから直属の上司になる技術部長に挨拶をしました。 「よろしくお願いします。」 「こちらこそ、よろしく…と、いうか僕たち兄妹やね。」 事務部長と私の苗字が偶然にも一緒、そして趣味が一緒(?)ということで兄妹ということでしょうか。 これまでの人生で年上の男性に気さくに話しかけられたことはなく、戸惑いながらも健康診断を行う内科外来へと向かいました。 ひととおりの健康診断を終えた後、これから働く薬局内へ

          2度目の就職の話 【薬局編 ①】