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エシカル・マーケティングにおいて、コンプライアンス活動を積極的に発信するというアイデア

ブランディング×弁護士の三浦です。最近別々の企業の担当者から「企業理念・パーパスとの連携」「参加型ルールメイキング」の実施例を立て続けに耳にしました。これらは「コンセプトドリヴン・コンプライアンス」でも提唱している新しいコンプライアンスのメソッドです。私と同じ考えを現場で実践している企業が増えていることをとても嬉しく思います。

さて、今日はエシカル・マーケティングにおけるコンプライアンスの活用ついて考えてみたいと思います。今回の記事もBing AIとChatGPTのアシストを受けて執筆しています。


コンプライアンスによる差別化という発想

これまで、コンプライアンスは単なる社内向け啓発活動ではなくマーケティング活動の一環として積極的に外部発信をすべき、と「コンセプトドリヴン・コンプライアンス」をはじめ、方々で主張してきました。

ビッグモーター事件の例を見るまでもなく、ルールを無視したビジネスは短期的には利益を上げることができても早晩行き詰ります。コンプライアンスは企業が持続的な利益を享受し続けるための装置・資本であり、適切な投資をする必要があるわけです。

コンプライアンスに対する投資のリターンは、ステークホルダーからの信用やブランドイメージ(ブランド価値)の向上いう形で現れます。しかし、体内部門であるコンプライアンス部門は、ステークホルダーに対する発信は不得手。彼らの力だけで適切な投資リターンを享受することはできません。そこで、マーケティング部門の出番というわけです。

エシカル・マーケティングとは

エシカルマーケティングは、商品やサービスの販売において社会的責任や倫理観を尊重するアプローチです。消費者のニーズと共に、環境や人権などの社会的課題にも目を向け、企業の価値観や姿勢を伝える重要な戦略となっています。

エシカル・マーケティングの背景には企業の社会的責任に対する関心の高まりがあります。例えば、グローバルな市場調査会社であるニールセンが2015年に発表した「グローバル・サステナビリティ・レポート」によると、世界66か国で調査をした結果、66%の消費者は社会的責任や環境保護に取り組む企業からの商品やサービスを購入することに積極的であると回答し、そのうち、50%の消費者は社会的責任や環境保護に取り組む企業からの商品やサービスに対して、より高い価格を支払うと回答したそうです2014-2015年版マテリアリティ・アセスメント|ニールセン (nielsen.com))。

企業が「倫理的に行動していること」は、消費者にとって商品やサービスの重要な選択基準であり、自社の倫理的な行動を積極的・効果的に消費者に伝えることで競争優位を築くことができる、というのがエシカル・マーケティングの基本的な考え方といえそうです。

エシカル・マーケティングの成功例

パタゴニア

パタゴニアは、アメリカのアウトドアブランドです。パタゴニアは、自然や環境への愛着と尊敬をビジネスモデルに取り入れています。パタゴニアは、以下のようなエシカルマーケティングの戦略を展開しています。

  • 環境に優しい素材や製法を用いて商品を作ること。例えば、オーガニックコットンやリサイクルポリエステルなどを使用したり、化学染料や有害物質を排除したりすること。

  • 商品の修理や再利用を促進すること。例えば、「Don’t Buy This Jacket」というキャンペーンで消費者に必要以上の購入を控えるよう呼びかけたり、「Worn Wear」というプログラムで商品の修理や交換を提供したりすること。

  • 環境保護活動への支援や参加を行うこと。例えば、「1% for the Planet」という運動で売上の1%を環境団体に寄付したり、「Patagonia Action Works」というプラットフォームで消費者と環境団体をつなげること。

ボディーショップ

ボディショップは、イギリスのコスメティックブランドです。ボディショップは、人権や動物福祉に取り組むことをビジネスモデルに取り入れています。ボディショップは、以下のようなエシカルマーケティングの戦略を展開しています。

  • 動物実験を行わないことや動物由来の原料を使用しないこと。例えば、「Forever Against Animal Testing」というキャンペーンで動物実験の禁止を訴えたり、「Vegan」というラベルで動物由来の原料を使用しない商品を明示したりすること。

  • フェアトレードやコミュニティトレードといった公正な取引を行うこと。例えば、開発途上国の農家やコミュニティから直接原料を購入したり、彼らに適正な価格や待遇を提供したりすること。

  • 人権や社会的課題への支援や参加を行うこと。例えば、「Enrich Not Exploit」というキャンペーンで自社の持続可能性への取り組みを発表したり、「The Body Shop Foundation」という基金で人権や環境保護などの活動に寄付したりすること。

これらの企業は、消費者に対して自社の商品やサービスの品質だけでなく、自社の理念や目標も伝えることに成功しています。「自然や環境への愛着」「人権と動物福祉」といった彼らが大切だと考える価値を尊重するライフスタイルを提案し、それを効果的に消費者に伝えて共感や信頼を獲得することで、高いブランドイメージと顧客ロイヤルティを獲得しているわけです。

こんな風に進めるのはどうだろうか

発信するコンプライアンス活動を決める

(エシカル)マーケティング活動において、重点的に発信している企業の世界観・価値観と親和性が高い法分野を選ぶと良いでしょう。例えば、「フェア・トレード」であれば「独占禁止法」「現代奴隷法」、「自然環境への配慮」であれば廃棄物処理法などの「環境法令」などです。ここでは、法令の知識が必要になるのでコンプライアンス部門とうまく協力することが必要です。

ステークホルダーの共感が得られるような切り口を考える

通常コンプライアンス活動の内容は「研修をやった。受講率〇パーセント」「グローバルな会議をやった。〇人集まった。」という形で表現され、そのままではステークホルダーの共感を得ることはできません。例えば、真剣に研修を受講する従業員の横顔を撮影したり、会議に集まった各国のトップに想いを語ってもらうなど、ステークホルダーに共感を得やすい側面を見つけて切り出します。広報・マーケティング部門の腕の見せ所です。

広告やキャンペーンなどにカタチにして落とし込む

コンプライアンス活動の発信に特化した広告やキャンペーンを作る必要はありません。既存の広告やキャンペーンにスパイスのように落とし込むのが良いと思います。「フェアトレードを推進している」というキャンペーンの一コマとして「独禁法を真剣に勉強し実践する従業員の姿」を加えたり、「自然環境に配慮した工場」という広告の一コマに、「法令に定められた〇項目に及ぶチェック項目をリアルタイムでチェックしてます」という場面を加えたり。ここでも嘘や誇張がないように、コンプライアンス部門としっかり連携しましょう。

企業風土改革へのモーメント

エシカル・マーケティングにコンプライアンスを活用すると、コンプライアンス重視の風土も醸成されます。なぜなら、一度社外にアピールした以上、それに矛盾する行動を取った場合にブランド価値を大きく傷つけることになるからです。

ステークホルダーに約束した以上、形骸化したコンプライアンスはもう許されません。この言行一致へのモーメントはコンプライアンス重視の風土にプラスに働くことでしょう。そして、そういう風土をステークホルダーに発信してさらなる共感を得る。これこそがコンプライアンスを使った新しい競争戦略です。



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