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アベノミクスの思い出,悲劇にも喜劇にもなりえなかった「暗愚三昧のアホノミクス」が日本をダメノミクス状態にさせた経緯(2)

 ※-1「本稿(2)」に対するまえがき的な「最近世間批評」

 「本稿(2)」は昨日,2023年11月6日の「本稿(1)」のつづきとなっているが,こちらの本稿全体に関した序文的な記述は,その(1)のほうでこの「2023年の秋版」のつもりで書いてあった。

 つまりは,この(2)に対しても序文の意味をもちうる文章がその(1)において書かれていたわけで,できればこの「本稿(1)」もさきに読んでもらえると好都合である。ただし,この(2)でも以下にしばらく「いいたい」ことを,いくつか言及しておくことになっている。

 ⇒ https://note.com/brainy_turntable/n/n6310ce5196d4

 a)「本稿(2)」が初掲されたのは時期は2014年3月9日であった。当時,日本の政治経済に対して害毒を散布しだしていたあのアベノミクスが実は,当初からこの国のありようにとってみれば,単なる迷惑千万なアベノリスクでしかなかった事実は,それから9年と8カ月もの歳月が経過した現在になってみれば,自明も自明どころか,平野貞夫が以前,つぎのように行動していた事実からも理解できる点であった。

 すなわち,安倍晋三の首相在任時,この「子どもの裸の王様」であった「世襲3代目の政治屋」が,権力を私物化することに熱心であっただけでなく,この国に対する「破憲活動」まで強行しつつ,この「美しいはずのヤマト国」を完全に損壊した事実については,その平野貞夫が「内乱予備罪」で刑事告発した。この事実は,世間ではあまりしられていないけれども,注目すべき行動であった。

これでは国が滅びることは当然必然だったから
同時に唖然かつ呆然として
さらに憤然ともなる

 たとえば,徳山善雄『安倍晋三「迷言」録 政権・メディア・世論の攻防』平凡社,2016年は,安倍晋三が国会審議のなかで,

  「早く質問しろよ!」
  「国民の理解が深まっていない」
  「まったく正しいと思いますよ。私は総理大臣なんですから」

などと,政治家に失言や暴言はつきものとはいえ,かつてこれほど「迷言」を吐く首相がいただろうかと問い,自分に対する批判は「レッテル貼り」「デマゴーグ」とまで逆上して応えていた事実にも言及。

 安倍晋三は一方で,みずからが発する暴言は「言論の自由」などと血迷ったというか,リクツのかけらさえもともに駆使できなかったけれども,「世襲3代目の政治屋」としての基本資質ならば,120%程度にまで上手に発揚できていた。

 安倍晋三のボンクラ風の脳細胞からなっていた人間性・人格の発露ぶりとみたら抜群のゆがみ具合であったからには,一国に存立にとっていったいどのくらいにま損害を発生させていたかと思うとき,失望と絶望との入り交じったこの先を,ただ憂うほかないような気分に落ちこむ。

 b) 安倍晋三から菅 義偉を飛んで岸田文雄の自民党政権になっている現在,この岸田首相の為政は安倍晋三の亜流未満の体たらくぶりを発揮するばかりで,なにひとつまともな「内政・外交」を推進できていなかった。

 ただ,外交面では「それこそ外面だけは体面を大事して大盤振るまい」しているが,肝心の自国内における民生問題用の予算確保はシブチンというよりは,ドケチの部類。考えていることといったら,自分自身があとどのくらい長く総理大臣の座に留まれるかという1点のみで,これしか念頭にない小物の,やはり「世襲3代目の政治屋」であった。

 たとえば,FLASH編集部「『バラマキメガネなんとかしろ!』 事業者破綻,全国で給食ストップ… その頃,岸田首相は海外に2兆8000億円をポン」『Smart FLASH』FLASH』2023年9月7日,https://smart-flash.jp/sociopolitics/251416/1/1/ という調子で,借金財政でしかないこの国家の貧弱な中身の財布からいい気になって,ひたすらカネを外国にばらまいてきている。

 それでいて国内でのニュースであったが,国立科学博物館(東京都台東区)は2023年11月6日,運営に必要な資金を集めるクラウドファンディング(シーエフ)で約9億2千万円の寄付が集まったと発表した。目標額の1億円を大幅に上回ったというのである。動植物や化石などの標本の管理費や返礼品の製作費などにあてる,ということらしい。

 東京でJRに乗り上野駅付近を通過するさい,国立博物館が線路の西側上方にみえる風景は,東京都や近隣に住む人びとは日常的に接しており,それなりになじみがある。ところが,この「国立」だという博物館が,日本を代表するはずの公共文化的な施設が,なんとたった1億円の資金に苦労する姿は,なんともみっともない実情だといわざるをえない。

 文系の大学を軽視する学問観を一時期流布させた菅 義偉前首相は,自分が法政大学の出身であり,苦学した経歴をどのように自己認識しているかはともかく,奨学金制度としての給付型のそれに消極的な考えを示したところなどは,自分の人生体験のみを国家運営の次元で反映させる狭量さを感じさせてあまりあった。

 岸田文雄が首相になっても国立博物館のごときクラウドファンディングを公共機関じたいの自助努力によって資金調達をするといった,その好意が発露された経緯は大衆から大事な気持ちが十分に提供されていたゆえ,それ相応に評価・尊重されるべき出来事になっていた。

 しかし,そうした「まさに筋違いの資金調達形態のあり方」は,外交面で湯水のようにわれわれ国家のお金を海外にばらまいてから,だから「外交のアベ」の面目躍如といよりは,「恥さらしでしかなかったボンボン外交」をゴミの山のように積み上げてきた「安倍晋三の衣鉢」を継ぎたいかのように,つまりその姿とまったく同じ要領でもって,外交面において国家予算の海外へのやたらな散布をしでかしてきた「岸田文雄の采配ぶり」は,まったくもって全然なっていない。

 c) 安倍晋三の場合,「地球儀を俯瞰する外交や積極的平和主義」を展開するのだと力んでいたのはよかったが,単に「米日軍事同盟・服属関係」下において,アメリカに隷属した日本の姿をさらすばかりであった。その一方で安倍は,ロシアや北朝鮮など近隣諸国との懸案はいっさい解決できなかっただけでなく,両国との懸案はこじらせるだけのつたない外交演技しかできなかった。

 その「外交のアベ」がそもそも海外にばらまいてきた日本の予算の「無目的的な浪費癖」をいま再び,岸田文雄も真似て実行している。それでいて,国立博物館のごときクラウドファンディング(当初は1億円あつめるのが目標であったという)がニュースになるようでは,まったくお話にならない「彼ら:世襲3代目の政治屋」の〈金銭感覚〉が問題にされて当然である。

 菅 義偉の場合において顕著であった事実だが,学術研究に対する尊敬の念などいっさいなく,日本学術会議の人事に直接手を突っこみ,ひっかきまわしていた。しかし,菅は,学問や研究に対する理解という以前の感覚そのものからしてほとんど欠落していた点を,みずからいたずらに露呈させる結果に気づいていなかった。

 つぎに挙げるが,日本共産党の機関新聞『しんぶん赤旗』の批判が参考になる。

 
 ところで今年(2023年)において日本は,ノーベル賞の受賞者が1人もいなかった。『産経新聞』からつぎの記事の前半を引用してみる。

 「自然科学のノーベル賞,日本人なし…2016年受賞の大隅氏『基礎研究を軽視』」『産経新聞』2023/10/5 17:24,https://www.sankei.com/article/20231005-GMENIUDANBOABAPMWHF7IPKTLI/ (有料記事から読みとれる分のみ以下に引用)

 2023年10月2~4日に発表されたノーベル賞の自然科学分野に日本人受賞者はいなかったが,受賞の可能性が高いとされる世界トップクラスの日本人研究者は非常に多く,来〔2024〕年以降も期待が高まる。

 ただ,過去のノーベル賞受賞者からは「直近の日本の科学研究は危機的状況」との指摘もある。期待がいつまで続くかは不透明。日本の科学には,いったいなにが必要なのか。

 ノーベル賞のうち生理学・医学賞,物理学賞,化学賞の自然科学分野3賞の日本人受賞者は2000年以降,米国籍取得者も含め20人で,米国に次いで2番目に多い。直近は2021年の真鍋淑郎氏の物理学賞で,そこから2年空いたに過ぎない。

 研究論文の優秀さを示す尺度のひとつに,後発論文への引用件数がある。引用件数が多いほど,研究分野への影響が大きいと考えられるからだ。英学術情報サービス会社クラリベイトは,引用件数にもと基づく引用栄誉賞を毎年発表しており,受賞者はノーベル賞の有力候補とみなされる。(引用終わり)

『産経新聞』2023月10月5日

 ノーベル賞を授賞される研究者が生まれるためには,とりあえず四半世紀ごとにようやく研究の成果が蓄積されていく,その積分的な効果に期待するほかない。今年ノーベル賞を授賞された研究者は,だいたいにおいてその四半世紀以上・以前に着想し,研究してきたその業績を認めらるかたちで,その栄誉を受けていた。

 d) ところが,日本の関連する事情としては,すでにこういう傾向が出ていた。「別表 Q4. マスター及び博士課程に行く学生数が減っている理由」という資料

 ⇒ https://www.ofsf.or.jp/activity/pdf/research/202002/03_result_adademia_Q4.pdf

を参照してみたい。ここには,関連した詳細な事情が列記されている。日本の学生は大学院,それも博士後期課程にまで進学する動機が生まれにくくなった教育環境のなかに居ることが分かる。すでに議論がつくされてもきた教育問題ではあるが,先進国を中心に各国の大学院進学事情と比較するとしたら,日本は異常にも映るごとき後退現象を生じさせてきた。

 つぎの画像資料をみたい。このような大学院博士後期課程への進学率が頭打ちになっている国は,主要諸国のなかでも非常に珍しい。修士課程への進学率も,2010年前後からは全然増えていなかった点も,併せて注目しておきたい。

修士課程から博士課程への進学率が
低迷する現状は21世紀に入ってから
すでに四半世紀以上の時間が経過

 以上,なんだかんだいいながら本日(2023年11月7日)の前文に当たる記述が長くなったが,以下からは2014年3月9日の記述を復活・再掲する段落に進む。


 ※-2「この国の最高責任者は私だといってのけた安倍晋三」の蒙昧さかげんについて

 最近〔とはいっても2013年2月時点の話題であったが〕,落ち着いてきたアベノミクスの低評価という話題から記述を始めたい。

 『東京新聞』2014年2月13日朝刊の「政治」欄に,安倍晋三「首相,立憲主義を否定 解釈改憲『最高責任者は私』」だという記事が出ていた。

成蹊大学法学部政治学科を卒業した安倍晋三君だったが

 1)「最高責任者は安倍晋三」であったことは事実だが

 安倍晋三首相は〔2014年2月〕12日の衆院予算委員会で,集団的自衛権の行使を認める憲法解釈の変更をめぐり,「(政府の)最高責任者は私だ。政府の答弁に私が責任をもって,そのうえで選挙で審判を受ける」と述べた。憲法解釈に関する政府見解は整合性が求められ,歴代内閣は内閣法制局の議論の積み重ねを尊重してきた。

 首相の発言は,それを覆してみずから解釈改憲を進める考えを示したものだ。首相主導で解釈改憲に踏み切れば,国民の自由や権利を守るため,政府を縛る憲法の立憲主義の否定になる。 

 首相は集団的自衛権の行使容認に向けて検討を進めている政府の有識者会議について,「(内閣法制局の議論の)積み上げのままでいくなら,そもそも会議を作る必要はない」と指摘した。

 政府はこれまで,集団的自衛権の行使について,戦争放棄と戦力の不保持を定めた憲法九条から「許容された必要最小限の範囲を超える」と解釈し,一貫して禁じてきた。

 解釈改憲による行使容認に前向きとされる小松一郎内閣法制局長官も,昨年の臨時国会では「当否は個別的,具体的に検討されるべきもので,一概に答えるのは困難」と明言を避けていた。

 今年から検査入院している小松氏の事務代理を務める横畠裕介内閣法制次長も〔2月〕6日の参院予算委員会では「憲法で許されるとする根拠がみいだしがたく,政府は行使は憲法上許されないと解してきた」と従来の政府見解を説明した。

 ただ,この日は憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使を認めることは可能との考えを示した。横畠氏は一般論として「従前の解釈を変更することが至当だとの結論がえられた場合には,変更することがおよそ許されないというものではない」と説明。「一般論というのは事項を限定していない。集団的自衛権の問題も一般論の射程内だ」と踏みこんだ。

 元内閣法制局長官の阪田雅裕弁護士は,首相の発言に「選挙で審判を受ければいいというのは,憲法を普通の政策と同じようにとらえている。憲法は国家権力を縛るものだという『立憲主義』の考え方が分かっていない」と批判した。

 横畠氏の答弁にも「憲法九条から集団的自衛権を行使できると論理的には導けず,憲法解釈は変えられないというのが政府のスタンスだ。(従来の見解と)整合性がない」と指摘した。

 〈立憲主義〉の解説:国家の役割は個人の権利や自由の保障にあると定義したうえで,憲法によって国家権力の行動を厳格に制約するという考え。日本国憲法の基本原理と位置付けられている。

 註記)記事の住所は,http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014021302000135.html

 2) 足下の現実ひとつ満足に解決できなかったこの国の首相(元首相の安倍晋三君)

 この国の首相,おれはアメリカのオバマ大統領まではいかないが,ロシアのプーチン大統領並みくらいまでは,政権を独裁的に志向する政治ができると勘違いしていた。彼のオジイチャンで,総理大臣だった人物に比較したら,3まわりも4まわりも小細工したかのごとき「世襲3代目の政治屋」が,最近(首相在任期間は2012年12月~2020年9月であったが,ここでは2014年12月時点の話題である)は,世界の一流政治家たちと対等〔以上〕に渡りあえていたつもりであった。

 しかし,日本国内の現象をみよ。沖縄県の住宅街のど真ん中にある米軍基地のひとつ(普天間基地)さえ,今後,よそ〔同じ県内の〕に移転させることが決まったにせよ,最低でも10年以上経たないと,実際にはその関係工事が実現・終了しない。あらためて,この現実を「よくみてみよ!」といっているのである。

 ただしこの予定が日程どおりにいっても,すでに10年もの時間をかけねばならなかった事実からして,米日関係の異様なる「軍事同盟国的な上下関係の実相」が表出されていた。この事実に無頓着でいいのか。しかしまたいえば,この予定が予定どおりにいくという保証もない。

 補注)以上のごときこの記述が初めて公表されてから,すでに10年近くの時間が経過した現在は,2023年の11月上旬である。ところが,その普天間基地の移設先となっている名護市辺野古沖の地盤改良工事は,いまだにその埋め立ての工事がいつ完了できあがり,軍事基地としての機能を十全に利用できる時期が来るのか,メドが立っていない。

 その工事そのものは進行中であるが,いったいなんのために沖縄県の米軍基地の移設先を10年単位での工事期間をかけて施行しているのか,大きな疑問が残ったままである。敗戦後78年が経過したこの2023年の時点でも,まだその程度の進捗具合だとするならば,いったい,あとどのくらいの期間をかけると,名護市辺野古沖に新しく敷設される米軍用の軍事基地は使用可能となるのか?

 世界情勢が急変しないまでも,自然に時間が過ぎていくうちに米軍が沖縄県から去る理由が生まれないとはかぎらない。膨大な予算をかけて,アメリカ様のためにだけである日本国沖縄県にある基地を移設する工事は,実は同県の海域関係の自然破壊をともなってもいた。しかもその埋め立て工事のために,沖縄戦で命を落とした人びとの遺骨までまじった土砂が投入されかねないとして,猛烈な反対の声まで上がっている。

 日本全国にある米軍基地(多くの施設)・米軍専用の軍港(サセボ&ヨコスカ,ミサワ,イワクニなど)は,いったいいつになったら,アメリカに返してもらえるのか。なにせ,「他国海軍の母港」までが「日本にある」というだから,この国は,アメリカのいったいなんであるのか(「アンタ ワタシノ ソモソモ ナンナノヨ!」)という疑問が抱かれて当然である。

 佐世保や横須賀の米海軍専用港の存在はそっちのけで,安倍晋三個人が『私がこの日本国の「最高責任者は私だ」』と大みえを切ったところで,この米軍主要基地のひとつでも完全に退去・撤退できてから,そう気張って発生すことにしたらよかったが,なにせいまは故人。

 ところで,2013年12月26日の出来事であった。「安倍政権誕生1周年記念」のつもりか,なぜか「敗戦用の賊軍神社」と化した靖国神社に参拝し,尊い生命を国のために捧げた〈英霊〉に尊崇の念を,アベ君は表してきたということであった。しかし,この行為については,体制寄りべったりの日本経済新聞でさえ,つぎのように報道していた。

        ★ 靖国参拝,安倍首相の危険な賭け ★
     =『日本経済新聞』nikkei.com,2014/1/17 より =

 2013年12月26日,安倍晋三首相が靖国神社に参拝した。現職総理として7年ぶりの参拝は外交上の大失策にみえる。

 安倍首相が,近代以降の戦争における戦没者250万人とともに(東京裁判の)A級戦犯14人が合祀されているこの神社に参拝したことに対して,中国と韓国,米国ははっきりとした反対の立場を表明した。

 不吉なことに安倍氏のアドバイザーの1人は,彼が靖国参拝を毎年の恒例行事にするかもしれないと語っている。今回の参拝は大きな問題にもならず,安倍氏は逃げ切ったようにみえるが,だからといって今後もそうであり続けるという保証はない。

 註記)記事の住所は,http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1600F_W4A110C1000000/ および http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1600F_W4A110C1000000/?df=2

靖国神社の死霊に会いにいく宗教的な意味は?

 関連してつぎの文書を紹介しておきたい。

政教分離の問題

 3)「NYタイムズ,安倍首相を再び批判『日米関係に深刻な脅威』」『日本経済新聞』2014年3月3日夕刊 

 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は〔2014年3月〕2日,安倍晋三首相の姿勢を「ナショナリズム(国家主義)」と指摘し,日米関係の「ますます深刻な脅威になっている」と批判する社説を掲載した。同紙の社説はこれまで数回にわたり,安倍氏の「国家主義」が危険だと訴えている。

 2日の社説は,歴史問題に対する安倍首相の姿勢が日本周辺の「地域に対する危険な挑発」になっているとした。米国は日米安保条約にもとづき日本を守ろうとしている一方,日中の紛争に引きこまれることは望んでおらず,安倍氏が米国の利益を忘れているとした。

 安倍首相が第2次大戦の「歴史をごまかそうとしている」と批判。さらに「彼(安倍首相)と他の国家主義者たちはいまだに南京大虐殺はまったく起きなかったと主張している」との見解を示した。従軍慰安婦問題をめぐる河野洋平官房長官談話の検証問題にも触れ,慰安婦への「謝罪を撤回する可能性」を指摘した。

『日本経済新聞』2014年3月3日夕刊

 アメリカからこのようにみられていた安倍首相であったが,この報道に接して「さすが日本の最高指導者」らしい最近の振るまいであった,と感心した日本国民もいたかもしれない。しかし,さきほど指摘したように,このニューヨーク・タイムズは,アメリカの有名新聞紙の1社として,アメリカの利害を代表する言論を披露していることに注意したい。

 本ブログは先日,従軍慰安婦問題に関する文献の1冊として,高崎隆治編著『100冊が語る「慰安所」・男のホンネ-アジア全域に「慰安所」があった-』(梨の木舎,1994年)を紹介してあった。

1994年発行

 この本以外に,しかも専門的に研究してその実態を解明した著作は,すでにいくらでも公表されている。にもかかわらず,安倍晋三のように,日本に政治家たちのなかには,このあまりにも当たりまえであった「歴史の事実」を認めたがらない者も大勢いる。この現状は,この国における政治意識の〈あるひとつのもの〉を正直に反映させている。

 もっとも,以上の話題を「歴史認識の問題」として語らせてみるさい,前段に少しだけだが触れてみた日本の政治家たちがこだわる観念は,いま「自国内にたくさん配置されている米軍基地」を「自衛隊の基地である」と確信的に錯覚できる認識に変質しつつある。

 たしかに,2014年という時点ではすでに,アメリカ軍と日本軍(自衛隊)が同じ基地内で共同して任務に従事している実情があった(ヨコタ・ザマ・イワクニ!)。しかし,自国の米軍基地のなかに自衛隊も入りこんで日常的に共同している様相は,まさしくただならぬ「米日間における軍事的に上下の従属関係」も表現していた事実を忘れてはなるまい。


 ※-3「ヴィバ!」とはいえなかったアベノミクス

 前項の記述は,アベノポリティックスの側面に関する記述であったが,今日の本題であるアベノミクスに関する評判のほどについても,関連する新聞記事から拾い紹介してみたい。

 1)「揺らぐ『アベノミクス』の評価」『日本経済新聞』2014年3月3日夕刊「マーケット総合」「FXウオッチ」
 
 外国為替証拠金(FX)取引を手がける個人投資家のあいだで,安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」への評価が揺らぎはじめている。昨〔2013〕年から続いた円安・株高がここにきて一服しているため,その効果に個人投資家が疑問をもちはじめていることが背景にある。個人の期待をつなぎとめられるか,今後の安倍政権の経済政策の行方に注目が集まる。

 外為どっとコム総合研究所が2月12~19日に実施したアンケート調査で,安倍政権の経済政策への評価(100点満点)は70点の回答が最多で,回答者の平均は60.5点だった。2013年2月の同調査では80点が最多,平均は67.3点。平均点は1年間で約7点下がった。

 2013年2月は日銀の黒田東彦総裁の就任前で,当時の円相場は1ドル=94円前後をつけていた。1月に白川方明前総裁が2%の物価安定目標を導入。4月から量的・質的金融緩和が始まり,円安・株高が一段と進んだ。

 外為どっとコム総研の神田卓也調査部長は「1年前の調査では日銀の『大胆な金融緩和』への期待が高かった。今回の評価の低下はアベノミクスが始まって1年が経過しているのに,期待した割に景気回復の実感が個人に及んでいないことが一番の原因だ」と指摘する。

 日銀の異次元緩和を背景に進んだ円安の一服などから,民間エコノミストの間では日銀による追加緩和を予想する声が多い。日本経済研究センターが民間調査機関のエコノミストの予想をまとめた2月のESPフォーキャスト調査では,追加緩和は2014年4~6月とみる割合が42.5%で最多だ。

 一方,外為どっとコム総研のアンケート調査は大きく異なる。個人では同時期に追加緩和を実施するとの予想は27.8%にとどまり,追加緩和を実施しないとみている個人も多い。個人は追加緩和への期待感が小さく,円の先安観も揺らいでいる。「円の高値圏で(先安を見込んだ)売りが減ってきた」(神田氏)という。(日経QUICKニュース)

 --一時期は盛んにもてはやされたかのように写っていたアベノのミクスの好評も,このところの評点は60.5点だというから,大学の成績評価を当てはめるとなんとか「可」(C)評価で,すれすれの合格点である。安倍晋三が首相に就任してから今月で1年と3カ月になるが,そろそろ安倍流のミクス(金メッキ)も剥げかかってきた様子である。

 浜 矩子(同志社大学経済学部教授)が『アベノミクスとアホノミクス-浜矩子特別講義』中経出版から Kindle 版で公刊したのは,2013年8月であったので,以上の記述と突きあわせてみる材料としては格好の素材たりうる。浜はアベノミクスが最初から金メッキ,それも安物の剥がれやすいそれだった事実を,いち早く警告していた。

 2)「アベノミクスの通信簿『良い物価上昇』みえず」『日本経済新聞』2014年3月2日朝刊「けいざい解読」

 『日本経済新聞』2014年3月2日朝刊「けいざい解読」は,こう語っていた。2014年も,はや2カ月が過ぎた。アベノミクスの2年目は軌道に乗るのか。1年目の通信簿ともいえる2013年の国内総生産(GDP)を眺めながら,課題を探った。2012年12月に始動した安倍晋三政権。ふだん暦年のGDP統計は注目されないが,2013年の実績は政策運営を評価する格好の材料といえる。

 物価の動きを調整した実質のGDPは前年から 1.6%増え,525兆円強となった。リーマン・ショック前の2007年を上回り,いまの統計では最高の水準だ。伸びた分の大半は個人消費と公共投資だけで説明できる。

 第1の矢である大胆な金融緩和は円安や株高をもたらし,家計の消費意欲を刺激した。第2の矢である公共投資も大きく伸びた。一定の評価はできるだろう。

 むろん満点とはいえない。円安や公共投資は企業収益を大きく押し上げたが,GDPでみた企業活動はさえなかった。円安でも輸出の数量があまり伸びなかったことは実質GDPで一目瞭然だ。膨らむ輸入に押され,純輸出(輸出マイナス輸入)はGDPの減少要因になった。企業の設備投資も不振だった。

 デフレ脱却をめぐる評価もむずかしい。物価の動きを総合的に示すGDPデフレーターは16年連続のマイナスとなった。

 「デフレは終わった」との声も聞く。たしかに円安による輸入品の値上がりを起点に,2013年の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は5年ぶりに上昇した。問題は中身。輸入物価の上昇が経済を圧迫する状況では,消費者物価が上昇してもデフレーターは下落しやすい。

 GDPは消費や設備投資などの内需に,国内でつくって海外に売った輸出をくわえ,海外で生み出された輸入を差し引く。GDPデフレーターも輸入物価の変動は除外される。輸入物価の上昇は国内ですべて転嫁されないかぎり,デフレーターの押し下げ要因となる。

 国内で企業や家計の活動がうまく回転し,家計の所得が伸びる。自然と物価の上昇を受け入れやすくなっていく。そうなって初めてGDPデフレーターの持続的な上昇がみこめる。「国内発インフレ」の指標と呼ばれるのは,このためだ。

 円安の物価押し上げ効果はいつか途絶える。景気の自律回復に根ざした「良い物価上昇」にならないと,デフレに逆戻りする。2年目のアベノミクスが抱える宿題だ。

 日銀は今年後半に良い物価上昇に移行するシナリオを描くが,4月の消費増税後の消費動向を含め,先行きの不透明感は強い。見通しに狂いが生じた場合には追加の金融緩和が選択肢になる。だが,成果が一段の円安だとしたら,経済を圧迫する悪い物価上昇しか生まない懸念をはらむ。

 王道は第3の矢である新たな成長戦略づくりを急ぐことだが,即効性に欠ける。残るは第2の矢。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「安倍政権は年半ばに財政出動に動く」と読む。財政で景気をけん引する試みは,国の借金を膨らませるだけに終わった過去と二重写しになる。良い物価上昇への確かな展望は描けない。(編集委員 大塚節雄)

 --当時において(2014年の2月,3月段階からであったがすでに),アベノミクスのデタラメミクス性が,その化けの皮を剥がされはじめていた。とはいっても,この程度の問題・難点は,多くの「心ある経済学者・経済アナリスト」が,このミクスが開始された時点から早く指摘してきた。だいたい,いまどき〔ここでは2010年代前半期のことだった〕のわれわれ庶民にとってみれば,「良い物価上昇」などといった概念は,ハナから理解不能であった。

 いま〔2014年の話であった〕は,高度経済成長時代でのように「物価上昇:高めのインフレ率→賃金ももっと上昇」といった経済過程の進行をもって,多少は「良い物価上昇」とみなせる経済現象が進展する時期ではない。貧富の差が広がり,経済格差が拡大・定着する傾向が,着実にじわじわと進行しつつある。

 金融緩和・財政出動という政治による経済政策の誘導に,民間の営利企業の経済活動がまともに呼応していけるような十分な国内外の経済情勢にはなっていなかった。円安で儲かっている自動車会社など一部の国際的な会社が,珍しく春闘でベアに応じた程度であって,日本の産業経済・企業経営全体においてアベノミクスの効果を実感できる実況ではなかった。

 安倍君のおかげで物価だけは上昇しだした。おまけに4月から予定されている消費税プラス3%上げで〔このときは8%になった〕,さらに上昇する物価になりそうである。記事にも書かれているように「輸入物価の上昇が経済を圧迫する状況では,消費者物価が上昇しても」,アベノミクスの目玉であった「インフレ・ターゲット目標:2%」本来の狙いが実現されることはなかった。

 最近〔2014年前半〕における消費生活のなかでは,諸物価の値上がりばかりがめだつ。かといって,サラリーマン・労働者の給料が上がりそうなのは,ごく一部の会社だけである。これでは,安倍君の経済政策に対しては,われわれ庶民の生活の立場から「お目玉をくらわしてあげねばならない」だけである。

 

 ※-4「日本経済新聞〈大機小機〉欄」におけるアベノミクスの不安

 1)「成長透視,3つのカギ」『日本経済新聞』2014年3月6日朝刊「大機小機」欄

 日本の国内総生産(GDP)統計を眺めていると奇妙な事実に気づく。有形固定資産(主に設備)の残高が減少傾向にあることだ。経済が成長しているのなら,その基盤としての設備残高も増えるはずである。その減少はなにを意味するのか。

 ありうるひとつの説明は,過去の無駄な投資の清算だ。しかし,バブルの清算は10年ほど前に終わっており,その後に無駄な投資があったとは思えない。もうひとつの説明は,設備の効率が高まり,少ない設備でより多くの価値を生み出すようになったことだ。しかし,これも説得力に乏しい。

 日本の新規投資の絶対額は低位に推移しており,設備全体が老朽化している。家電や情報端末に象徴されるように,日本製品の国際競争力も低下しているから,生産効率性が高まったとは,とうていいえない。

 設備残高の減少は,経済規模が一定なら設備の稼働率を高め,製品需給と企業業績に好影響をもたらす。とはいえ,これも経済活動にとって一時しのぎにすぎず,極論すれば縮小均衡を意味する。経済発展には,設備残高の増加と技術革新が求められる。

 こう考えると,設備残高の減少は深刻な事態である。この状態が続けば人口減少とあいまって日本経済に大きなダメージを与えよう。

 一方で多くの日本企業は豊富な現預金を保有している。事業のリスクを回避するために設備投資を抑制し,現預金を積み増すことが日本好みの経営というのなら,「業を企てる」企業の本質から大きく逸脱している。

 補注)その後10年近くが経った時点にいる「いま・現在」,以上のように指摘された「経済発展に」必須である「設備残高の増加と技術革新」として,日本の産業経営のなかでめだつ要素や動向はなかった。

 さらに「日本企業は豊富な現預金を保有してい」ながら,「設備投資を抑制し,現預金を積み増すこと」に関心を向けてつづけてきた。この方途が「日本好みの経営」方式だとすれば,「『業を企てる』企業の本質から大きく逸脱している」経営方法にいつまでも拘泥していたことになる。

〔記事に戻る→〕 企業に求められるのは,つぎの3つを組み合わせて成長投資を積極化することである。

 第1に,革新的な技術にもとづいて事業を展開し設備を増強すること。これは理想であり,かつ先進国の企業がしのぎを削っているなかでは,一部の企業しか達成できない。

 第2に,国内設備の刷新と増強である。老齢化と人口減少が進んでも,有望な新規事業はある。たとえば,子供教育を念頭に置いた職住近接の仕組である。この点,政府としても,既存の発想を超えた規制緩和とルール作りに注力すべきだ。

 第3に,積極的な海外展開である。国内設備の増強にはつながらないが,企業がどこで稼ごうが,その成果を国内に還元してくれるのなら,大歓迎である。

 --この最後の3つの提言はいずれも実現の困難なものばかりであった。日本産業の空洞化は十分承知でうえでの,アベノミクスという企図であったはずである。アベノミクスは,日本の産業経営がうまく回転していけば,こうなる・ああなるといった提唱であった。

 だが,「日本企業は豊富な現預金を保有している」状態,あるいは富裕層は一部にいるけれども,この人たちの資金が国内産業(とくに製造業)に融通される保証などなにもなかった。というよりは,マネーに国境はないのであるから,日本国内向けだけに彼らの手持ち資金が融通される理由はない。

 さらに2つめの提言は,高齢社会のなかで「子供教育を念頭に置いた職住近接の仕組」を築けといっているけれども,現実に可能性のある提言ならばともかく,いったいなにを寝言みたいな主張をしているかという印象である。

 日本において「子供の教育」はどうなっているのか,「職住近接」といったところで,どのサラリーマン・労働者層のことを念頭に置いていっているのか。その実現に要する諸条件はなにか。これらに触れないこの主張はほとんど無意味に近い。

 補注)2020年から日本にも襲来した新型コロナウイルス感染症の影響でリモート方式による通勤なりの執務形態が,奇貨的に普及するといった国内事情が生まれていたが,このコロナ禍の影響が介在しなかったら,あいもかわらず「職住接近」や「在宅勤務」をめぐる議論が,「これからさきの課題」としてのみ,とりあげられていたかもしれない。

 「積極的な海外展開」という点もしかり。すでに海外に進出というか,日本から「出ていった会社」には用済みの表現であるが,さらにそうする意欲のある会社は出てくるのか? 安倍政権になってから20円以上も円安になったので,日本国内に生産拠点を部分的にでも移すという逆の話も聞こえるというのに,なんともちぐはぐな議論である。

 補注)円ドル相場などを本日,2023年11月7日午前9時35分ごろにみた『日本経済新聞』ウェブ版には,こういう数字が並んでいた。

  日経平均 ¥32,517. 52

  円ドル相場(ドル・対・円)¥150. 04-05

 ちなみに,2014年3月のその円ドルレートは,その1日から5日までは105円台であった。いまのほぼ3分の2の水準である。未収党政権の時期には78円台まで上昇していた。こちらの時期だと,だいたい2分の1であった。

 昨日〔2023年11月6日〕に紹介してみた新聞記事(日経朝刊)はだから,こう報道していた。再度ここにもかかげておく。ここでいわれる日本企業とは,もっぱら大企業中心のことである。国内のプラス要因はインバウンド関連。値上げという点は「フザルケルナ」というのが,庶民感情。

円安で儲けられる企業は海外市場の占有率が高い会社だけ

 2)「まず経常赤字脱却を」『日本経済新聞』2014年3月7日朝刊「大機小機」

 わが国の経常収支は昨年秋に赤字に転落して以来,月を追って赤字幅が拡大している。貿易収支(通関ベース)が震災前の2010年の約7兆円の黒字から約17兆円の赤字(昨〔2013〕年11月から今〔2014〕年1月の季節調整値,年率)に転落した結果だ。貿易収支が3年間で24兆円悪化した要因を,為替と価格と貿易数量に分けてみると原因が明確になる。

 まず為替の効果は,円安による輸入金額の増加分が約9兆円で,輸出金額の増加分が約7兆円。差し引き2兆円のマイナスになる。価格の効果は,輸入価格が約8兆円上昇した一方,輸出価格への転嫁分が約6兆円でマイナス2兆円だ。

 貿易数量ベースの効果は輸出入あわせてマイナス約20兆円に上る。輸出は3年間で13%,9兆円目減りした。中国市場で日本のシェアが大きく低下したのをはじめ,すべての地域でシェアを失った結果だ。これに対して輸入は13%増加した。原発停止などで燃料輸入が2兆円増えたほか,燃料以外も9兆円増えたのが大きい。情報通信機器などを中心とする国際競争力の低下や海外生産移転などで,景気回復と同時に輸入が急増している。

 数量ベース(燃料を除く)でみると輸出は年に3兆円減り,輸入は年に3兆円増えて,赤字は年6兆円増えた計算になる。自動車など「勝ち組」は契約通貨ベースの輸出価格底入れで黒字が拡大したが,電機など「負け組」業種では輸出価格を下げても輸出数量の減少と輸入増により赤字が拡大。勝ち組の黒字拡大を上回り,貿易赤字が増えつづけている。

 円安効果で欧米向けを中心に輸出シェア回復の兆しがみえ,そろそろ貿易赤字拡大に歯止めがかかりそうだ。だが,巨額の貿易赤字を所得収支の黒字拡大で埋めるのは容易ではない。経常赤字脱却には産業・通商政策の大転換が必要だろう。

 なにより産業の国際競争力強化が急務だ。新興国との競争で敗退した産業の再生を急ぐと同時に,法人税の実効税率引き下げ,エネルギー基本計画の早急な決定と推進が不可欠だ。環太平洋経済連携協定(TPP)の締結や中国との関係修復,さらには投資の国内回帰も必要だ。経常収支が赤字では対外投資も国債の国内消化もむずかしくなる。

 補注)「法人税の実行税率引き下げ」の穴埋めに「消費税」のみならず「所得税」の増率を企んでいる財務省は,庶民の頸を締め上げる政策しかしらないらしい。

 成長戦略も大切だが,経常収支の赤字脱却こそ今日の緊急課題ではないだろうか。(引用終わり)

 --このコラムは結局,なにをいいたいのか分かりにくい記述であった。アベノミクスのおかげで赤字が大幅に計上されている。要は「産業の国際競争力強化が急務」だといっているに過ぎない。アベノミクスがこの急務に応えるための経済政策を実行しているつもりではなかったか?

 以上は2014年3月時点の議論であったが,いまはすでに2023年11月でありその後における日本の経済・産業・企業経営の動向はどうなってきたか? トヨタ自動車だけが断トツでまだ高い利益率・額を記録してはいるものの,あとはさっぱりである。

 1) で触れられていたように「日本企業は豊富な現預金を保有している。事業のリスクを回避するために設備投資を抑制し,現預金を積み増す」ような「日本好みの経営」をやっているのに,なぜ「法人税の実効税率引き下げ」が,当面する急務になりうるのか?

 補注)2023年の現時点になってみれば,内部留保ばかり溜めこんできた大企業の財務方針は,労働分配率の低さが文字どおりに「賃金の押さえこみ」によってだけ現象させられている事態が意味する点は,つぎのごとき関連の図表から簡単に読みとれる。

2014年以降の動向に注目
内部留保はたっぷりだが賃金はおさえこむ

 また「エネルギー基本計画の早急な決定と推進が不可欠だ」というのは,ともかく原発を再稼働させろという意味に違いなかった。再生可能・持続志向のエネルギー産業体制を構築するには,このような議論からは抜け出した問題意識と未来展望が必要であった。

 ところが,このコラムの主張にはそのひとかけらもない。ただ目先の利害にとらわれた議論に終始している。つまり,内容的には原子力村的に同調した議論であり,きわめてありきたりで陳腐そのもの。

 また「投資の国内回帰も必要だ」ともいうけれども,どの産業分野のどの業種にどの程度の投資が必要とされているのか,このコラム内でそれを書けといっても無理はあるものの,口先だけの提唱に聞こえてならない。よくも悪くも日本経済新聞流の基調そのままでの論旨であった。

 3)「黒田『一本槍』でよいのか」『日本経済新聞』2014年3月8日朝刊「大機小機」

 3本の矢のはずなのに,アベノミクスは黒田東彦日銀総裁による量的質的金融緩和にばかり依存しているようにみえる。肝心の成長戦略は心もとない。法人税の実効税率引き下げは先送りされ,規制改革は小粒だ。環太平洋経済連携協定(TPP)などグローバル市場戦略も守りの姿勢ばかり目立つ。黒田「一本槍(やり)」は大きなリスクをはらんでいる。

 デフレ脱却に向けて,超金融緩和は大きな役割を担っている。それはこれまでのところ円安,株高に有効に機能してきたといえる。しかし,ウクライナ情勢など地政学リスクがあちこちに広がるなかで,これ以上,円安が進むとは限らない。

 補注)ここで指摘されたウクライナ情勢とは,2014年にロシアがウクライナに侵攻した事件に関したもの。

 安倍晋三政権が賃上げにデフレ脱却の期待をかけるのは分かるが,それが中小企業にまで広がるか不透明だ。結局,安倍政権は日銀と民間企業に大きな役割を担わせるばかりで,政権としての役割は十分に果たしていないのではないか。

 補注)「それが中小企業にまで広が」らなかった事実は,いま(2023年11月)となってみれば歴然も歴然,説明の要なし。

 なにより成長戦略に問題がある。その柱である法人実効税率の引き下げは2015年度以降に先送りされている。政権として真っ先にとり組まなければならないのは税制改革である。レーガノミクスにせよサッチャリズムにせよ,首脳の名を冠した経済政策の柱は税制改革だ。本来,法人実効税率の引き下げは2013年度から可能だった。

 補注)その税制改革とは「消費税」を場外に放り出しての話題らしいから,これはかなり与太った議論である。法人税の穴埋めに最大限に利用されている消費税10%のことなどについては,れいわ新選組が解説するために作成したつぎの「ポスターの一部分」を紹介しておきたい。このポスターの全面はその住所(アドレス:リンク)も添えてあるので,こちらからのぞいてみてほしい。

法人税率の引き下げの穴埋めに消費税が充てられている
消費税の7割以上が本来の使途ではなく
法人税を補填するためなどに使われている

 上のれいわ新選組作成「ポスター」の全体はつぎのリンクから参照できる。

 ⇒ https://reiwa-shinsengumi.com/wp-content/uploads/2023/07/A4-kikanshi255.pdf

〔記事に戻る→〕 今年(2014年)のダボス会議で世界に引き下げの決意を表明したのは,政権遂行能力の乏しさを露呈するようなものだ。世界最高水準の法人税率と最低水準の消費税率といういびつな税制を是正するのは,政治の当然の責務である。

 交渉のさなかにあるとはいえ,TPPにも前向きの姿勢が感じられない。交渉を率先して妥結に導き,それをテコに東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉を促し,TPPとRCEPを束ねる。そんな大きな戦略があっていい。それは緊張関係にある中国,韓国を含めアジア太平洋の繁栄と安定につながる。

 超金融緩和を続けながら,安易な財政刺激に頼るのも疑問である。2本目の矢は本来,財政規律であるべきだ。中央銀行が財政ファイナンスにあたるとみなされれば,先進国最悪の財政を抱える国の国債の信認はいつ揺らいでもおかしくない。

 成長戦略が実らず財政が節度を失えば,黒田「一本槍」はアベノリスクになりかねない。(引用終わり)

 --日経「路線」の典型的な論調ではあったが,現状のごときの「心もとない経済運営」にいらだっていたような論調であった。金融・財政緩和策に大きく傾いている日銀黒田流の経済運営に苦情を呈する論旨であった。税制政策(法人実効税率の引き下げ)については, 2) の論調と同じに主張しているが,これとの相性で,消費税を3%上げたあと〔8%となっていたがその後,2019年にさらに2%上げて現在は10%〕が見物である。

 その「見物」はあまりみたくはないそれになっていたが,事後「アベノポリティックス × アベノミクス」=〔は見事に〕「アベノリスク」の展開になっていった。

 すなわち,貧富の格差をさらに拡大する展望だけは,当時において確実に目前に広く開けていた。アベノミクスは3本の矢を準備していたらしいが,ここでは第2の矢についてからして,批判されている。ましてや第3の矢である成長戦略のほうは,いつまでも「まだ準備中」ということで,出番がなかった。だが,アベノミクスに対する基本的な批判のほうは,すっかり出揃っていたことになる。

 円安誘導⇒輸出拡大⇒設備投資増加⇒賃金上昇⇒消費伸長⇒経済成長という好循環が,いままで眼にみえたかたちで出てことなどなかった。というのも,その2番目の輸出じたいが不調(アベノミクスのもとでは円安要因がほとんど効いていなかった)であったからである。

 日本の自動車会社が儲かっているのは,海外生産・販売比率が高く,円安の効果(恩恵)が大きいせいである。以前にも触れたことがあるが,企業経営は積極的に国際化しているのに,これを日本の国内だけで商売をしながら,しかも輸出入の舞台を介して政府の経済政策に反映させたいという立場は,いかにも隔靴掻痒というか,その〈的〉じたいが見定めにくい経済運営の路線であった。

 

 ※-5 再び,経済から政治へ

 『朝日新聞』2014年3月7日朝刊「声」に「〈声〉衛藤補佐官の責任を追及せよ」という投書が掲載されていた。安藤乾二(塾講師,東京都 47歳)と名のる人が投書した批判である。

 先月,衛藤晟一首相補佐官が,安倍晋三首相の靖国神社参拝に対する米国の「失望」表明を,逆に動画サイトで「我々のほうが失望だ」と批判し,その後,発言を撤回して動画を削除した。

 従来の政治家の失言は,軽率さからか,ポロッと本音を漏らすケースが少なくなかったと思う。しかし,今回のケースは自分の言葉が世間に及ぼす影響を想定し,意図的におこなった,いわば確信犯である。

 こうした言動は,本来ならば,よりきび厳しく追及されて当然のことなのではないか。だが,現政権は,衛藤氏に動画を削除させたものの処分などはおこなっていない。

 衛藤氏は安倍首相と行動をともにしてきた人物で,靖国参拝もしている。「発言は首相の本音を反映しているのではないか」という記事もみかけるようになった。それが本当ならば,日本の現状は民主主義の本来の姿から遠のきつつあるのではという危惧を覚える。

『朝日新聞』2014年3月7日朝刊「声」

 安倍晋三が以前初めて首相になったとき(2006年9月26日,第1次政権)には,お友だち内閣というニックネームを付けられていた。2度目の政権時(2012年12月,第2次政権)に組閣された人物やこの補佐官たちをみていると,好き勝手にいいたい放題する「小物(チンピラ)集団」のように映っていた。

2019年ころのお写真

 衛藤にしてもこの顔をみていると,高い理想もたしかな信念ももちあわせているようには,どうしても「みえなかった」。男の顔は履歴書。すべてを物語るなにものかが凝集されている。

 --最後は,つぎの引用で終わる。分かりやすい説明の2つとして紹介しておく。日本経済新聞のコラムの解説記事(なかには奥歯にモノがはさまったような文章もあった)よりも,こちらのほうがよほど簡明・簡潔。

 その1。 アホノミクス,アベノリスク,アベノミクス,アベコベノミクス,アホノミックスは,最凶で再起不能です。

 大企業や機関投資家に株価上昇による投機で大儲けさせただけで,一般国民にはなんの恩恵もn無いですし,インフレで生活必需品の値段や電力料金が上がったなどの負の部分しか感じていません。

 このままのインフレ続行に〔2014年〕4月1日からの消費増税で確実に3%のインフレに拍車をかけて〔その後さらに2%上げて10%となっていたのがこの消費税〕,消費者の消費意欲が減退して物が売れなくなり,企業利益も落ちこみます。

 そのため,大きなリストラや給与水準の下落をもたらし,さらに消費者の可処分所得を押し下げてさらに消費意欲を減退させ,企業収益を悪化させる「恐慌」に陥ります。

 このように無限のインフレと経済恐慌を同居させた「スタグフレーション」を引き起こし,その再生には一番に厄介な経済状況に陥り,「給料は上がらないのに,買う物は高くなる」という最悪の経済状況となることは,

 浜 矩子・同志社大学大学院教授を始め,多くの経済学者が主張され,本当に最凶で再起不能の経済愚策と考えます。

 註記)「アホノミクス,アベノリスク,アベノミス,アベコベノミクス,アホノミックスは最強(最凶)ですか?」『YAHOO!JAPAN 知恵袋』2014年1月3日 16:15,https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11118876366

 その2。 安倍政権は,そもそも,金融緩和,財政出動,成長戦略の三本の矢からなるアベノミクスによってデフレからの脱却をめざしていたはずです。

 デフレとは慢性的な需要不足に陥っている状態ですから,大胆な金融緩和と財政出動によって内需を喚起し,2%程度のインフレを人為的に作り出すのが,本来のアベノミクスのはずでした。人為的に需要を作り出し,労働需要が高まれば,人手不足が発生するのは当然のことです。そもそも,そのための金融緩和であり,そのための財政出動なのですから。

 その人手不足が,賃金の上昇圧力となり,企業は賃金を上げざるをえなくなる。これによって賃金デフレから脱却するのが,アベノミクスのもともとシナリオであったはずです。それなのに,せっかく生じた労働需要を,海外から安い単純労働者を受け入れて穴埋めし,賃金の上昇圧力を解消してしまったら,元も子もありません。

 バケツの底に大きな穴をあけて,蛇口を全開にしてじゃぶじゃぶ水を注いでも,水はバケツの中にはたまらず,おそらく最初からバケツの下に用意してある,たらいにたまっていくだけです。

 これまでも何度も申し上げてきたように,安倍政権には,デフレ脱却等する意図は最初からありません。日本人の目を欺いて,グローバル勢力に利益をもたらし,そして,その負担は日本人に負わせる。その狡猾なカラクリこそがアベノミクスの本当の姿です。

 註記)http://wondrousjapanforever.blog.fc2.com/blog-category-8.html

 さて,以上の指摘や意見,批判はともかく,10年近くも以前におけるものであった。それらの全部が,現在:2023年秋における日本の政治と経済の状況を,大きく的をはずすこともなく,ほぼいいあてていた。というか,その程度にいなされてしまうことが初めからバレバレだったのが,アベノミクスとアベノポリティックスというガラクタ理念から出発した政治路線・経済政策の真価であった。

 そんな・こんな2010年代の経済運営が失敗裡に進行してきた結果が,2023年の現状とみるや,いまや完全に惨状だと形容したらよい日本の様になっている。この「美しい国」のなかで本当に美しいと形容できそうなのは,もう日の丸ぐらいしかないのか?

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