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【短編】失恋した悲しい夏の日に、パイナップルをもらった。

夏が来れば思い出す~♪
という感じで、この季節になると必ず思い出すパイナップルの話。

もう、7~8年前の話だと思う。
当時大好き過ぎた男子がいた。

行きつけのレストランバーの常連仲間と
その店のスタッフさんとの夏の恒例行事。
みんなで海の家にいくイベントがあった。
もちろん、彼もそのメンバーに入っていて、
数日前からドキドキしながら
その日を待っていた。

彼とわたしは、ビミョーな関係。
彼は
「ただ単なるセフレっていう感じじゃないよ」
と言っていたが、
それはまさしく

「あなたは僕のセフレです。」ということ。

と、後で気づく。

前日の金曜日。
夕方から、すでに週末にログインしていたわたしは
ドキドキわくわくしながら仕事をしていた。
すると、海メンバーのかなちゃんからlineが来た。

「美伊さん、彼、大学時代の同級生と
遠恋してるんだって。。。
他の人から美伊さんの耳に入るほうがつらいと思って。。
いつも相談に乗ってたから、、
私から伝えようと思って。。。」と。

彼は15歳年下だった。
モテるタイプだったから、
それなりに女性がいるだろうとは思っては
いたけれど。
現実を突きつけられると、頭が真っ白になった。

PCの文字ももう頭に入ってこない。
動揺を周囲に気づかれないように、
書いている途中のメールをとにかくなんとか書き終え、
送信。
そして、PCを閉じた。


前日のドタキャン。
土曜日は、35度超えの真夏日。
待ち合わせの時間に時計を見る。
今頃みんな、楽しく海に向かっているんだろうな。。。
悲しくて、むなしくて、部屋に閉じこもっていた。

気晴らしに散歩でもいこうかな。
海に着ていくはずだったワンピースに着替え
外に出た。

あれ?美伊さん?お久しぶり~元気?
近所のお店で働く男前で有名な
けんちゃんだった。

どうしたの~?なんか元気ないね。


うん、まあ、今日、
海に行く予定だったんだけどね。。

あ~、、、

と、
男前のけんちゃんは何かを察したよう。

美伊さん、これあげる。

と、
袋から取り出した大きなパイナップル。

突然目の前に現れた
パイナップルを見て少し笑顔になる。

元気出して。

けんちゃんからもらった
大きなパイナップルを抱えて
部屋に飾ってみたら
ビーチっぽくなった。

一人だけの海ごっこみたいだった。

少しだけ。
ほんの少しだけ。救われた。

けんちゃんからもらったパイナップル

今日も真夏日。

7月の真夏日が一番好きだ。

もう、
海に行くことはないと思っていたけれど。

また、
海に行ってみたいと思えるようになった。

そんな真夏日の朝に、note。



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