息子男化現象の回 ~30歳になるまでに解きたい呪い~


息子男化現象


 親とはなんだろうか。
 夫婦が子供を産んでから得る称号、肩書きなのだろうか。
 夫婦のことはわからないし自分の母と父のあの夫婦の形はとことんわからない。
 でもあの人たちは私たちの親であり、誰かの子供でもある。
 

 私たちは父の母にあたる祖母の家に住まわせてもらい、祖母と父と母と私たち兄弟4人で2階建ての結構大きな家で衣食住がまかなわれていた。

 しかし、2階建ての2階部分は侵入禁止であった。
 といってもこれは限定的なもので、父と長男は上がることを許されていた。
 祖母はとても時代を表すかのような見本らしい姑で、母を疎み嫌っていた。これは5歳の私ですら感じていた。
 祖母が嫌っていたのは母なのになぜ長男以外の兄弟たちは2階に上がれなかったか長男は良かったのか、その理由はひとまず置いておく。

 そんな典型的な嫌ぁーな姑代表の祖母は父を溺愛していた。もうそれは異常だと思えるほど、父を溺愛していた。
 私が5歳の時、父は50代だったと思う。そんなおっさんになった息子を愛称で呼ぶほどの溺愛っぷり。今思うとまあそこそこ気持ち悪い、だいぶ気持ち悪い。

 その溺愛あって一緒に暮らせている立派な家で、愛してやまない息子が暴力を振るう父親として君臨したことをどう思っていたか聞いてみたかった。そして暴力を振るう父親を責めないのは、どれだけおっさんになってもただただ可愛い息子に見えていたからなのかを聞いてみたかった。
 もう死んでるだろうから聞けやしない。


 私はとにかくこの祖母がとても苦手だった。
 私にとってこの人は母を虐める性格の悪い婆さんでしかなかったからだ。
 なにせこの人は言葉がきつい。母だけでなく、姉や次男の兄や私を傷つける言葉を平気で投げかけるのだ。長男と父にはそんな言葉を掛けやしないこの意地の悪さを超えた性悪さが嫌いだったし、この口悪ババアを責めやしない父にもなんか言えよという気持ちだった。
 この人の性悪エピソードはこの後披露することになるのでひとまずここでは省略する。


 父はその溺愛を鬱陶しがることなく祖母の言うことをわりと素直に聞いていた。やはりそこは母だからだろう。
 私が苦手で近寄らなくても父は祖母を大事にするよう仲良くするように言うのに、祖母が私にきつく父に甘えすぎるなと忠告するのを父は笑って聞くだけ。
 5歳が親に甘えるなんて当たり前なのに祖母は私が父の膝に座って甘えるのをとことん嫌がった。

 私にとって父だけど、祖母にとっては息子を越えて男だったのかもしれない。と今ならわかる。
 父は長男だったし祖父にも似ていたようだし、やはり祖母には甘く優しかったから。
 だとして、それを5歳の娘にぶつけるかね。5歳の娘にすら嫉妬していたのだとしたら本当にこういう姑、ババアにはなりたくねえなと思わせてくれて感謝している。可愛げある年寄りになる年の取り方をしたいものですね。

 きっと一部の母親にとって息子は男なのだと思う。だから世の中には性悪では済まないような小姑が現れ、お嫁さんや多くの母たちを悩ませるのだろう。
 そしてこれはどこの母親にも知らず知らずに出来上がってしまうような現象、息子男化現象なのだと思う。(勝手に名付けた)
 なぜなら、私の母は祖母に虐められながらすでに息子男化現象の予兆があったのだ。

 冒頭に書いた2階に上がれなかった理由をここで話そう。

 長男は父に似ていたがそれを越えて祖父に似ていた。
 祖母はとても祖父が好きでそれはめっちゃ好きで、長男に祖父を見て特別に愛してくれていたしそれは父への溺愛を超えていた。
 そして、次男は母に似ていた。
 その昔一度だけ、祖母の口から聞いたことがある。
「次男は母親に似てて可愛げがない」と。

 ちなみにだが、次男の幼少期はばちばちに可愛い。
 妹の私から見ても女の子のようできゅるんきゅるんだ。
 これは本当に誰が見ても可愛いと唸る可愛さなのです、誘拐されそうになった経験があることにも納得だし本当にめちゃくちゃ特別に可愛かったんです。
 本当におんなじDNAか?ってくらい4人兄弟並んだ写真を見ると別格の可愛さ。
 次男がとてつもなく可愛く産まれたという話しはひとまずこのへんにして話を戻します。

 まあ要するにDNAレベルの話なんですよね。どっちに似たかというだけの話。

 祖母は長男を通して父と祖父を見ていたわけです。次男を通して母を見ていた。
 しかし、この性悪ババアは母だけを見ていたわけではないのです。
 溺愛する息子(父)がいるように祖母にはその溺愛には及ばないもう一人のダメな息子がいました。
それが父の弟です。
 コイツがまたどうしようもねえやつなんですよ、父も呆れるレベルでどうしようもねえ弟。いやあんたが呆れるのも可笑しい、あんたらのどうしようもねえはとんとんどんぐりの背比べなんよ。

 次男にその自身の産んだダメな息子(父の弟)を祖母は感じていたようなのです。 そのDNAはお前らの遺伝子やんけ、と今なら思いますし言ってやりたいもう死んでて言えないけど。

 次男はそういう理不尽な嫌われ方をしており、母はこれがとてつもなく嫌でした。
 母は祖母に「次男は嫌い」とはっきり言われていたようで、悔しくて悔しくてたまらなかったようです。母親なら当然だと思います。
 私だって兄を可愛くないと言われたとき、このババア誰のどこ見て言ってんねんと思ったくらいです。


 同居2、3年目の5歳の私が気づくくらいには本当にこの母親の形をした女2人は仲が悪くて同じ空間にいたことが数えられるほどでした。
 そしてなぜだか父が母を殴ったことで、母の次男への溺愛は加速していくのです。

 
かくして、母親同士の『息子男化現象』のバトルが始まったのだ!


 余談ですが、殴った父と殴られた母を見た私のケアをしてくれたのは姉でした。
 その性悪祖母は5歳の私に「なんで止めないの!大声を出さないの!」と責めてきたこと、実は今でも覚えております。
 いや、無理くね?無茶じゃね?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?