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『とんび』映画レビュー

映画とんびをみて涙が止まらない。

これほど自分に刺さった映画は初めてでいつまでも私の心に刻まれる作品になった。この熱い気持ちが冷めないうちにこみあげる思いを残しておきたい。

原作は重松清さんのベストセラー小説で親子の絆を描いたストーリー。
妻を事故で失った不器用な父親が男で一つで立派な息子に育てる親子愛溢れる話。「とんびがたかを生む」という慣用句からつけられたタイトルである。

不器用で子供のような父親だが息子への愛情がしっかり子供に届いており、紆余曲折ありながらも父親を超える立派な息子に成長する過程が細かく表現されていた。
父子家族特有のぎこちなさや男気、プライドがぶつかりあう様子などかなりリアルな描写が描かれていた。

私がこの映画をみてささった理由は明らかで、父子の境遇が私の生活とほとんど重なっていたからだ。
自分の生活がまんま映画化されていると思うくらいにリンクしていた。

私は重松さんの原作を読んだことなかったが、レビューサイトを目にして自分と重なるストーリーだということを知っていた。

内容を知っていたからこそ目を背けて敢えて観ないようにしていた。
観てしまうと自分の深層にある見えない真意が表面化され、よりつらくなりそうだと当時は思っていたからだ。

親子愛といっても幸せなことだけじゃない。

つらくて、苦しい現実と向き合い、ぶつかって後悔して、でも何もなかったかのように振舞って

という男ならでは意地の張り合いに何度自分も経験したことか。「母親がいれば」と何度思ったことか。

今年、母が亡くなって3年が経ち私は実家を離れる。


母が亡くなってから父親と何を話すのか分からなくなって、テレビやニュースなどの表面的な話が中心になって、家族の在り方がガラッと変わった。

もちろん父親が心配だ。
料理や家事ができるわけでもなく、友達が多いわけでもなく、病気をしないように私がそばにいてあげないとと思う一方で、実家にいつづける限り自立できないとも感じている。

「とんびはたかをうむ」

親元を離れ、自立する一歩を踏み出そうとしている今、この作品を観る決心がついた。

私も同じく男は愛情を伝えるのが下手で、照れくさい心情を伝えようとするとぎこちなくなってしまう。

成長した姿を父親にみせ心から感謝を伝えられるとき、本当の意味でとんびがたかをうむ瞬間が訪れるのではないだろうか。

生きているうちにこの作品に出会えてよかった。

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