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【脳死は人の死ではない#9】脳死・臓器移植の真相(1)

今回は脳死・臓器移植の現場を見ていきましょう。脳死・臓器移植の実態を、小松美彦教授の『脳死・臓器移植の本当の話』から引用していきます(引用部分の太字はこちらで付けました)。

この書は、脳死・臓器移植の実態を詳細に検証しているだけでなく、ラザロ徴候の写真公開、植物状態の再考、和田移植と高知赤十字病院移植の問題点の検証、さらには臓器移植法改正案の問題点を指摘するといった、内容充実の労作です。

当時、臓器移植法改正案の国会審議が続いていましたが、誰もこうした実態を検証することなく、臓器移植ありきで、この改正案を推し進めてしまったことに、空恐ろしいものを感じざるを得ません。

この書は、まず序章で脳死・臓器移植問題を考察するための基本姿勢が確認され、第2章で本格的な考察に臨むために、基本的な事項を押さえる作業がなされますが、第2章の次の言葉に、我々はどきりとすることになります。

「脳死患者は、運動能力もおそらく意識もなく、遠からず死に至ると言われていますが、心臓が動いており、さわると温かく、汗や涙を流し、妊婦であれば出産し、時には反射的に動きます。脳死・臓器移植とは、このような脳死患者を死んだものと見なし、その者の心臓や肝臓を取り出し、別の患者に移植する医療です。臓器受容者はそれによってはじめて助かる可能性が高いのですが、一方、臓器提供者は確実に死にます」(PP.60-61)

1.“死体”が子どもを産む

……例えば、五項目によって脳死と判定されたとしても、それだけではチェックできない脳の視床下部というところが機能しており、そこからオキシトシンという子宮収縮ホルモンが分泌されているからこそ、妊婦は脳死状態に陥っても出産が可能なのである。“死体”が子どもを産むのだ。そもそも脳死を死の基準とするに際して、身体の統合機能には神経系とホルモン系との両者が少なくとも関与しているにもかかわらず、厚生省基準を含めたすべての脳判定基準は最初から後者を無視しているため、こうした決定的な矛盾が生じるのである。(P.81)

2.脳死者に麻酔をかけて臓器摘出!

 イギリスにおいてこうした議論は、日本とは違ってマスコミが大々的に報じることにより、一般市民の関心をさらうことになった。2000年の夏、Sunday Telegraph(2000.8.20)紙がこの問題に関する詳細な記名記事を載せたのである。きっかけとなったのは、英国王立麻酔科医師協会が発行している Anaesthesia誌上で、ノーフォーク・ノリッジ病院の顧問麻酔医を務めるフィリップ・キープが、「脳死患者は臓器摘出時に痛みを感じている可能性がある」という懸念を表明したことである。Sunday Telegraphのインタビューに応えたキープは次のように語っている。

「看護婦たちは本当に心底動転していますよ。[脳死者に] メスを入れた途端、脈拍と血圧が急上昇するんですから。そしてそのまま何もしなければ、患者は動き出し、のたうち回りはじめます。摘出手術どころじゃないんです。ですから、移植医は私たち麻酔医に決まってこう言います。ドナー患者に麻酔をかけてくれ、と」。かくしてキープ自身、「現状ではとてもドナーカードを持つ気になれない」と言明しているのである。

 戦慄せずにはいられぬ情報ばかりではないか。しかし、移植帝国のアメリカでは、イギリスのこうした状況をはるかに超えてしまっている。1997年8月25日未明にTBS系テレビで放映された「CBSドキュメント―臓器移植を急ぐ医師たち」によれば、アメリカでは脳死ドナーにはモルヒネを投与することが奨励され、もはや普通のことになっているというのだ。そればかりか、モルヒネの常態化はさらなる段階に達している。1994年の調査によれば、全米の臓器移植施設の実に約3分の1が、「脳死に至る以前に」モルヒネを投与して臓器を摘出できるという規定(プロトコル)をもっているというのである。モルヒネを打ちさえすれば“何でもあり”というわけだ。ちなみに、こうした実情に対してコメントを求められた「全米移植外科医協会」会長のハンス・ソリンジャーは、こう言って憚らない。「臓器が摘出されるころには患者は脳死していますよ」。これが移植最先進国アメリカの移植最高責任者の発言なのだ。(PP.89-90)

3.脳死者が動く!――ラザロ徴候の衝撃

 1982年、アメリカのテンプル大学病院のスティーブン・マンデルらは、著名な医学雑誌 The New England Journal of Medicine(vol.307, no.8)に目を見張る症例を報告した。28歳の男性の脳死者に身体の連続的な動きが見られたというのだ。脳死判定から15時間経った後、四肢の伸長運動に続いて、左足がベッドから自然に持ち上がり、両腕もおよそ45度まで上った。そして、両手を合せて祈るような動作をして、指を握りしめた。その後、両手は離れて胴体の横へと戻った。この間、両足は交互に動き、まるで歩いているかのようだった。こうした運動は自発的に4日間つづき、刺激を与えるとさらに5日間起こったという。(P.95)
 1989年、ベルギーのアントワープ大学病院のリュック・ハイテンスらも、脳神経外科学の専門誌 Journal of Neurosurgery(vol.71, September)でラザロ徴候を報告している。症例として挙げられているのは51歳の男性である。ここでも、脳死判定を終えて人工呼吸器を取りはずしてから2~3分後に、まず両腕が自然にベッドから持ち上がり、肘が折れ曲がった。そして、手のひらが顎や顔まで移動し、やがて胴体の脇に戻った。このようなラザロ徴候が繰り返し約1時間続いた。また、この間に血圧が上昇し(230/120mmHg)、1分間に150回もの頻脈を呈し、顔面の紅潮も見られたのである。

 この事態はきわめて重大な示唆に富んでいる。すなわち、血圧や脈拍の中枢が脳幹であるなら、血圧上昇や頻脈がともなわれたということは、ラザロ徴候には脊髄だけではなく、脳幹も関与している可能性があるからだ。ラザロ徴候を「単なる脊髄反射」の一言でかたづけられないかもしれないのだ。また、ハイテンスらは、何の刺激もないのに患者が背中を繰り返し弓なりにした事実も報告している。こうした諸々の観察事実を受けて、ハイテンスらは、次のような含蓄深い発言をしている。「この患者が脳死状態にあったことは疑いようがなく、仮にこうした動きがさらに持続したとしても、我々は人工呼吸器を取りはずすのをためらわなかったであろう。けれども他方において、この種の自発運動の出現は、臓器移植の手続に入る決断を確実に遅らせることになる」(p.450)。(PP.98-99)

脳死した者が動くラザロ徴候Lazarus sign)」、この名称は新約聖書でイエスによって蘇ったとされるユダヤ人のラザロに由来します。

このラザロ徴候については、動画を見た方が早いかもしれません。トルコのアクデニズ大学のアッティラ・ラマザノグルAtilla Ramazanoglu博士が、2016年3月25日に公開した動画をご覧ください。

これが脳死です!果たして、脳死が人の死と言えるのでしょうか?


見出し画像は、メリカナデシコさんの画像をお借りしました。ありがとうございます。

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