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彼といると煙草の味を感じない。吸い方さえ忘れてしまう。

彼といると、私が私じゃなくなってしまう。

お酒の味がわからなくなるのはしょっちゅうで、
いつもは嫌いな焼酎や日本酒もまずくないし、
まあ、アイスクリームはいつも通りおいしい。

早口になりすぎたかと思えば、
言葉を選びすぎて話が進まなくなったり。

彼の前での私は少し厄介だ。

ヘビースモーカーの彼。

もともと煙草は嫌いだったけれど、彼が煙草を吸ってる姿をみてそうでもなくなった。

夜の空に消えていく灰色の煙と彼の姿は何とも言えず魅力的だ。
服や髪から漂う苦い香りさえ愛おしい。

誰にも言ってないけど、彼が喫煙者だと知ってから煙草を練習した。

好きな男が煙草を吸うからって自分も吸い始めるような女が嫌いだったのに、私自身がそうなった。誰にどう思われるかなんてどうでもよかった。ただ、彼と一緒に煙草を吸いたかった。

でも彼といると、彼にばかり気を取られてしまって煙草を味わうことなんてできない。
気がついたらすぐ短くなっているし、火だって上手くつかないこともある。

もたもたしてると火をつけようとしてくれるところも好き。ぼーっとして灰が落ちそうになると教えてくれるところも、好き。

だから別に今も大して煙草は好きじゃないけど、なんとなく彼を想って吸ってる。

煙草の煙みたいに彼への気持ちも消えてくれたら楽だったのにな、なんて思いながら。

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