見出し画像

やんもち(鳥もち)造り

 メジロ獲りの為の、やんもち(鳥もち)造り―小説
虚士(きょし)が5歳(昭和30年) 頃の話です。春間近い冬のある日曜日、誠吾あぼ (兄)が、あらかじめ山から「やんもちの木」(山モチノキ)を伐採して、鉈(なた)でその木の皮を剥き、一ヶ月ほど自宅下平瀬の海水に漬けていた「やんもちの皮」を引き上げました。そして岩の上に置き、石でその皮を叩き、程よく皮が砕けた頃、近くで遊んでいる子供達を呼び集めました。
 
 5人集まった中に虚士もいました。すると誠吾あぼが、子供達に「こん、”やんもち” を噛んでくれんきゃ?」(この ”やんもち” を噛んでくれないか?)と言って、石で砕いた ”やんもち” を少しずつ皆んなに手渡しました。
 
 訳も解らず虚士も受け取り、年長の子供のまねをして、口にいれ噛み初めました。ごわごわとしていて、噛む程に苦みが口中に拡がり、唾液も口いっぱいになり、堪らず緑色の苦汁を吐き出しました。しばらく噛み続け、何回か苦汁を吐き出すと“やんもち” はごわごわ感がなくなりました。すると誠吾あぼが、用意した容器に吐き出す様に促しました。
 
 これを皆んなで5回ぐらい繰り返し終了しました。
誠吾あぼは、「だんだんね!」(ありがとう!) と言って子供達に飴玉を1個ずつ配りました。
 
 皆んなが見ている中で、誠吾あぼは容器に入った成果物を、海水に晒し、ぐるぐるを輪を描くように指でかき回しました。すると木片等の固形物が離れて行き、粘りのあるグレーの物質のみが残りました。これを数回繰り返して、水で濡らした小瓶に入れ“やんもち”(鳥もち) 2巻き分が完成しました。(乾いた手で触るとくっつきます)         終わり
                        
(この話は実話に基づいていますが、細部の記憶が怪しいので ”小説”としました)
 
追記、鳥もちは、モチノキ、クロガネモチ等の皮から製造されるそうです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?