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71話 王の部屋と夢のカケラ

(報告)今更ですが、ずっと気になっていた表紙帯に「BOX SPACE」の文字を入れました。以前のはそのままにしておきます(変更するの大変なので…)では、今日の物語を!

夢のカケラを集める風の子。その風の子と契約を結び「コントラ」となったドミノとシイナは、神の部屋のある世界の中心にいた。そこは、かつて第1の王、ドウドウが使っていた王の部屋だった。

※  ※  ※

ドミノは机上に用意されていた急須と茶っぱを手にした。手慣れた様子で茶をカップに注ぎ、それを1人と1匹の前に置き互いの気持ちが落ち着くのを待った。守護柱・リスのラルーは机上で丸まる風の子達の体を優しく撫でている。

ドミノはシイナをよく観察していた。落ち着かないその様子は、どこか弟のドムを思い出させる。何にでも興味を持つ年頃なのだろうか。かつての自分もそうだったのかな、と思いを巡らせたが遠い昔の事で記憶がかすれている。

「ところで、自己紹介がまだでしたね。私は夜虹(ヤグ)國出身のドミノと申します」

ドミノは席につくとカップの淵に手を置いた。

「や、夜虹國というと、墓守の家系ですか?」

「はい。つい先日まで、その墓守をしていた者です」

ドミノの言葉にシイナは驚きの表情を見せた。目の前に置かれたカップに伸ばした手が震えていた。何とか乾いた喉に流し込むお茶は、ほのかに甘く懐かしい味がした。

「おかわり、しますか?」

シイナの空っぽになったカップにお茶が注がれ器が満たされる。 ラルーは2人の落ち着いたタイミングを見計らい話し始めた。

「さて、風の子の性質じゃが、一番てっとり早いのはeggを使う方法じゃ」

ラルーはドミノに机の引き出しを開けて中の物を取り出すように言った。ドミノは言われるまま机の引き出しを開けると、そこには見覚えのある夢のカケラ(egg)が並んでいた。ドミノは驚いた。残り少ないと言いながらもここに並んだegg達はきれな形をしていた。

「こんなに……」

思わずドミノは言葉が漏れた。

「これは、第1の王・ドウドウの夢のカケラ。彼は自分の夢がいつか先役に立てば、とこっそりとここに集めておったんじゃ」

何て用意周到な王だろう。ドミノは墓守の記録手帳でしか知らない彼の姿の輪郭が少しだけ濃くなった。いつか彼に会えるのではないだろうか、とまで思ってしまった。

少し黄色がかったeggを机上に置くとシイナのため息が聞こえた。

「き、きれい……」

その後に聞こえた、美味しそう…と言う言葉をドミノとラルーは聞こえないふりをした。

いつも王達の墓の機嫌をとるのにこのeggを投げ入れる。今すぐこれを小屋に届ければ、ドムの安全が守られる…そんな事をドミノは頭の隅で考えていた。

「よし、ドミノ。これを割ってみよ」

ラルーの言葉にドミノは開いた口を塞ぐことができなかった。eggをいかに大切に扱わなければならないかドミノは重々承知していた。自ら割るなんて、考えた事もない御法度行為だ。

しかし、同時に今まで慎重に扱ってきたこのeggの中身を真剣に考えた事がないかもしれない…。その事に気がついた瞬間中身に興味を抱いてしまった。

「割るんですか? これを?」

ドミノの顔色から、ラルーが無茶な事を言っているんだとシイナは想像の範囲ながらも事の重大さを感じ取っていた。

「大丈夫じゃ。さぁ」

ラルーの言葉にドミノは音を立てて固唾を飲み込み、震えるてでeggに手を伸ばした。

つづく

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