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夢のカケラ

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夢のカケラ(egg)を集める風の子・「シロイト」と「マロン」。 彼らが集めた夢のカケラをまとめています。
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#ファンタジー

#122 誕生日の夢

#122 誕生日の夢

「お誕生日、おめでとう!」
目の前にだされたケーキを見て私は頬を膨らます。
「これ、嫌い! チョコレートのがいいって言ったのに!」
腕を組んで足をばたつかせる。
「でもね、こっちの方が美味しいよ? チョコレートは…よっちゃんが食べれないし…それに、こっちの方が皆んなで食べれるのよ!」
「でも、私の誕生日でしょ? 私のケーキでしょ?」
困った顔の父と母。小さな妹のよっちゃんがケーキに手を伸ばして苺を

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#115 みどりの夢

#115 みどりの夢

私の庭はとても深い。
冒険に出かける準備は整ったかしら?
私の庭はとても広い。
迷子にならない様に気をつけて。
私の庭はとても静か。
声が響くから静かにね。
私の庭はジャングル。
色んな生き物が暮らしてる。
私の庭は私の心。
そこで過ごすと元気になるの。
私の庭は秘密基地。
嫌なことも全部隠してくれる。
そこで実った小さな実。
美味しくて、綺麗で、毒にもなるのよ。
__________

シイナは

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#114 水玉の夢

#114 水玉の夢

ポツン…ポツン…蛇口の先から落ちた水滴が、水の溜まった洗面器に落ちて弾ける。
風呂場には、乾かない洗濯物が並んでいたが、一つだけ丁寧に干されたスカーフがある。
水玉模様のそれは、おばあちゃんの遺品になっちゃった。
小さい頃おばちゃんが、私にくれるって首に巻いてくれたけど「臭いからやだ!」ってすぐ外したんだよね。
「ごめんね、臭かった?」っておばあちゃんは悲しそうにスカーフを取ってくれたっけ。

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#113 リンゴの夢

#113 リンゴの夢

グルグル回る天井を見上げて、僕は何度も「お母さん」って呼び続ける。
でも、お母さんは仕事に出かけていないんだ。
側に置いてあるランドセルに手を伸ばすけど、今日はやたら腕が重い。
仕方なく起き上がると、机の上に「ウサギの形をしたりんご」が置いていた。
そこには「起きたら食べなさい」という母の優しいメモ書きが。
ランドセルを開いて小さなノートを1つ取り出す。
そっと開くと、そこからいくつものメモが流れ

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#112 ラッパの夢

#112 ラッパの夢

パッパパーーー!!

その音の煩さに、私と妻は苦笑い。
可愛い我が子にラッパのおもちゃを渡したら、それがだいぶお気に入りに。

パッパパーーーーー!!

どこに行くにもそのラッパが無いと不機嫌になる。

「この子は将来、音楽隊に入れるわね」

そんな事を言う妻は、困った顔で我が子を抱き寄せる。

「今度違うの探してくるよ…」

私はラッパを取り上げて、大泣きする我が子の声にそっと耳を塞いだ。
__

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#111 目玉焼きの夢

#111 目玉焼きの夢

朝のメニューは決まっている。セールで買った安い卵の目玉焼き。
そういえば、昔安い卵を求めて隣町まで行ったっけ。
錆びた自転車のペダルが重くて、途中で何回も休憩してさ。
君は僕の帰りが遅いって家の前に出て待っててくれたよね。
そんな君の作る目玉焼きを今日も食べて、1日が始まるんだ。

______

「夢のカケラ(egg)」を風の子・マロンから受け取ったシイナはあれ?と卵を裏返しました。

「へ、変

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#106 食らうモノ

#106 食らうモノ

その部屋には何もありませんでした。
ドミノとシイナは、夢の入り口の扉にかかる「プレート」(名札)をもう一度確認しましたが、確かに誰かが夢を見ている……はずです。
ppp!
風の子・シロイトが慌ててドミノ達の元へ戻って来ました。しかし、抱えて来た夢のカケラ(egg)に、しっかり噛り付いている者が…。

ガブっ!

「こらっ!」

慌ててドミノは食らう者を払いましたが、夢のカケラ(egg)にはしっかり

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♯103 瑞々しい夢

♯103 瑞々しい夢



「お父ちゃん!」
その声に顔をあげた。頭上に張り広がる蔓の間からぶら下がる無数の葡萄達。
「好きなん、もいで食べてんまい」
「え〜、じゃぁあれ!」
娘は笑顔で目先にある葡萄を指さした。
「どれ」
伸ばした手はシワだらけ。あれ? 自分の腕ってこんなんだっけ?
娘は笑顔で葡萄に吸い付くと満面の笑みを浮かべた。
「お父ちゃんの葡萄が世界でイッチバンや!」
……そうか、という声は出なかった。頭上の畑に

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♯98 声の夢

♯98 声の夢



黒板に並んだ先生の文字。皆んなが声を合わせてその文字を朗読している。

「こら、ちゃんと前を向いてください」

キョロキョロと見渡して自分に言われているのだとすぐに分かった。
新しい国語の教科書が懐かしく感じるのは何でだろう。隣の席のあの子がクスリと笑って24ページって小声で教えてくれる。
私はありがとうと笑顔でお礼を言うと教科書を開いた。そこには数字が並んでいた。
教科書を間違えたかな?と表

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