小林秀雄「ゴッホの病気」

個性的でありたいと願う人間に「どこが一番個性的であるか」という問いを投げかけるとなんと答えるだろうか。性質、性格、外見。それが個性的である所以は?私自身にも問いかけてみた。男、北海道出身、175㎝、眼が茶色、、、いくら挙げても記号の集合密度が薄まるだけであることに気が付く。これについて小林秀雄はゴッホが弟に宛てた書簡から語る。ゴッホは自分の精神病と戦い続けた男である。己の狂気性を恐れ、またそれに真正面から立ち向かった。正気の自我と狂気の自我は果たしてどちらが正しいのか。心理学にような自我の分析ではなく、外部化できない自我にたどりつくために分析できる一切の自我を棄て続け、狂気における自我を絵を通して見詰め続けた。その疑問符が絵に表れ、我々に問い続けている。

アートの個性とは、「個人として生まれたが故に、背負わなければならなかった制約が征服された結果を指さなければならない」と小林秀雄はいう。

ゴッホの絵から投げかけられる疑問符の解はもちろん私にはわからない。ただ、その疑問符が脳を揺らす。どうやら自らと闘い続けなければならないらしい。