最近、本に一目惚れしましたか?
たとえば本屋さんで。
たとえばネット検索で。
この本を読んでみようかな。
この本を買ってみようかな。
そう思う決め手はなんですか。
著者?
タイトル?
話題の本だから?
装丁に惹かれたから?
♢
ちょっとググるだけで、簡単に手に入る情報。それも、ほぼタダで。情報飽和社会のいま、ネットがなかった時代と比べて、本の衝動買いが減っているのでは?
買おうかな、どうしようかな。うーん、でもやっぱりネットで検索して、ブックレビューを見てみよう。それから決めようっと。
そんなことがたびたびあります。というか、わたしはほぼそうです。
まずはネットで本の評判や情報をチェック。下調べをしてから、買うかどうかザックリとふるいにかける。それでも決めかねたら本屋さんに足を運び、実物を手に取って確かめる。
だいたいは、そんなまどろっこしいプロセスを経て買っています。これはわたしだけでしょうか?
つまり、本屋さんでもネットでも、本に一目惚れをして買うことが少なくなりました。
タイトルに惹かれて思わず買った、装丁のデザインに目を奪われて買った、最初の数行を読んでピピッときて買った、そういう場面が減ってしまった。
ところがね。
出逢ったんですよ、つい最近。タイトルと表紙のデザインを見て、「これ欲しい!」ってなりました。
その本は【笑って、バイバイ!】。著者は、たかのてるこさん。
たかのてるこさんといえば、旅のバイブルとして親しまれている【ガンジス河でバタフライ】の著者。主演・長澤まさみ×脚本・宮藤官九郎でドラマ化された、あの本です。
見てください、この表紙のおじさんの笑顔を。
ニッコリじゃなくて、『ニッカー』ですよ。歯がむき出しになるくらいのピカピカ笑顔。すごく気持ちのいい表情ですよね。
目じりや口元の皺、白くなった髪の毛と髭、テッカーっと光る頭とおでこ。
見ているほうもつられて頬が緩んじゃう。なんでしょうか、人をグイッと引き込むこの笑顔は。
タイトル【笑って、バイバイ!】の“笑って”にぴったりの笑顔。でも、この“バイバイ”はなにを意味するんだろう?
2020年秋、ウイズコロナの今だからこそ、人類700万年ものリレーで繋いでもらった大事な命と向き合う、大きなチャンスだと思い第3弾『笑って、バイバイ! 』が誕生しました! ---中略--- お互い、命の炎を燃やし尽くしましょう。最後に、笑ってバイバイできるように!
そう、“バイバイ”は最期の別れのこと。これは“死”をテーマにした本です。
だれにでも必ずやってくる“死”。このご時世で“死”を意識する機会が多くなったとはいえ、人は心のどこかで、『自分のところにはまだ来ない』と思っている。
人生の折り返し地点を過ぎたわたしでさえ、そうなんです。なんの根拠もないのに、『自分のところにはまだ来ない』、そう思っている。
わたしという人間は、なんて傲慢なのでしょうか。命あるものすべて、致死率は100%なのに。たった1つの例外があるはずもないのに。
♢
この本は“死”をテーマにしていますが、その表紙からも分かるように、メッセージはとてもポジティブです。
たかのてるこさんのラブ&ピースのオーラに包まれると、“死”はその様相を変えます。“死”に対する湿っぽさを全く感じさせない本です。
よりよい“死”を迎えるために、生きることを楽しもう。そんなメッセージが根底に流れています。
手のひらサイズで約70ページの本。ページをめくると、あちらこちらに笑顔の花が咲いています。それも、大輪の笑顔。
70ヶ国を旅したたかのてるこさんは、老若男女の表情をたくさんカメラにおさめました。本を開ければ、まばゆい笑顔がいっぱい。まっすぐな視線に吸い込まれそうになります。
きっと、たかのさんがカメラを構えたからこそ引き出せた表情なんだろうな。そんなふうに思います。
写っている人たちが、たかのさんを信頼して笑顔を向けているのがよくわかる。カメラマンがどんな声かけをすれば、こんな“ありのまま”の笑顔を向けるのか、それを知りたいくらい。
撮る人たかのさんと撮られる人たちとの間に、キラキラッとした感情のスパークが見えるかのよう。それくらい親密感を帯びた表情です。
もし、『心に残る笑顔選手権』というものがあったとしたら、この本に出てくる人たちは、その選手権のファイナリストなんじゃないの?そう思えるくらい、まぶしい笑顔ばかり。眺めていると元気をもらえます。
元気をもらえるのは、写真だけではありません。文章にも、たくさんのラブ&ピースが満ちています。
この肉体と別れるまでにまっとうすることは 自分を愛して 信頼して 自分らしくあること
やりたいことは 全部やり尽くしたほうが 気持ちよくゴールインできるということ
よりよい“死”を迎えるために、生きることを楽しもうよ。そう語りかけるたかのさんの声が聞こえるような気がします。
たかのてるこさんというフィルターを通して、同じ地球上に住む人たちから元気をもらえる、そんな1冊です。
この本は、【生きるって、なに?】シリーズの第三弾。わたしは、シリーズごとまるっと購入しました。どの表紙もイイでしょ?
この本を教えてくれたイタリアのピロココさん、ありがとうございました。
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