悪運
会社が新体制になると、古い人間はどんどん片隅に追いやられる運命となった。解雇同然の人事異動があったり、給与体制の見直しによって給料が減ってしまった人も多くいた。
僕も降格人事となり、店長を外され、その分給料も減った。こんな会社辞めてやろうかと思った。実際、そういう仕打ちを受けて辞めていった人は数知れず、会社の思う壺であった。ただ思惑外だったのは、そういうベテランたちの仕打ちを見て、未来の我が身を不安に思ったのか、将来を嘱望する若手もどんどん辞めていったことである。
もっとも人件費削減を徹底していたので、若手でも辞めれば代わりは幾らでもいるくらいにしか思っていなかったようではあるが。
僕も辞めようと妻に相談したら断固反対された。「辞めるなら新しい仕事を見つけてから辞めてね」といわれた。降格を甘んじて受け、売場のリーダーとなった。
その数年後、仕事に対するストレスや、フラストレーションからであろうか、バセドウ病になり、ついでうつになり、567が追い打ちをかけて、仕事がとてもできるような状態ではなくなってしまった。とにかくマスクにフェイスガードをつけられ、とても売場に出られた気分ではなかった。
休職することにした。おかげで傷病手当、LTD保険(就労不能保険)が貰え、収入の面では心配いらなくなったので、会社を辞めた。どうせあと3年くらいで定年退職だったこともある。
今は失業手当を貰っている。60歳になれば、退職年金も貰えるようになる。妻の収入もある。
元気な時に辞めていれば、年齢的にも仕事はなく、詰んでいたかもしれない。病気になったからこそ、こうして収入もある。病気といっても薬のおかげでもあるだろうが、日常の生活に何ら支障はなく、ただ働くのは厳しいというだけである。失業手当が1年貰えるらしいので、それを貰いきったら、アルバイトでも探そうかと思っている。ちゃんと仕事ができるか不安ではあるが。
昔から悪運は強いほうだと思っていたが、まさにそんな感じだ。人間万事塞翁が馬である。これから先の人生はどうなるのかわからないけれども、カネの心配は、贅沢さえしなければ何とかなりそうでもあるので、セカンドライフをこれから楽しむべくいろいろと考えたい。