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実家

 祖父が家を建てた。丁度僕が小学校1~2年生の頃だったろうと思う。その頃は立派な庭まで作って、池があり、鯉まで飼っていた。まるで成金主義的にみえるが、カネがあったのかどうかはわからない。家を建てるのに借金はしていた形跡はなさそうなので、当時は羽振りがよかったのだろう。
 僕が中学生になった時、ウチの家族と、この家で同居することになった。2世帯住宅になる。そのため庭を半分にして増築をした。庭は狭く遊べるスペースもなくなった。ついでに世話が大変なので、鯉は近くの川に流して捨てた。現在では外来種の生き物の池や沼での生息が問題になっているが、我が家も1枚嚙んでいた。
 池はそのままで、水もはらないままで、放置された。広い庭にあった石や木がその池付近に狭っ苦しく移動配置され、まるで余裕がなくなり、おしくら饅頭状態になった。
 祖父が亡くなり、庭の手入れは厄介な仕事になった。雑草刈りや、伸びすぎた木の剪定。父親が元気な時は父親がやっていたのだが、歳を取るとこちらにお鉢が回ってきた。電動バリカンを使い、剪定作業をしに帰った。そんなことを2,3度したら父親が亡くなった。
 母親独りで広い家に住むようになると、狭くなったとはいえ庭の手入れは大変である。そこで、母親は大胆にも庭を潰して駐車場にしてしまった。
 もともとあった駐車場は入れるのにテクニックが必要だったが、こちらはスッと入ってスッと出れるので、妹などは重宝したようだ。僕は相変わらずの前からの駐車場に止めるので恩恵にはあづかってはいないが、庭がそのままであったなら、手入れをしなければならないところだったので、そう考えたら大いに助かった。
 母は今年で87歳である。6LDKの家に独りで住んでいる。かつては最大で6人が住んでいた家であったが、時代と共に住んでいた人間は独立して離れたり鬼籍に入ったりした。
 母が死んだら、もしくは死なないにしても認知症かなんかになって独りで暮らせなくなったら、この家をどうしようか。妹と相談しなければならないが、築50年なので、リフォームするにはカネがないし、あまり意味もない。売っぱらうことになるだろう。あるいは家は壊して売らないといけないかもしれない。思い出の詰まった家だけれど。


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