マーティン・セリグマン『ポジティブ心理学の挑戦』読んだ
意識高い本を読むのもだいぶ疲れてきたが、ここで休むわけにはいかない。
というわけでこんなのを読んでみたのだ。こいつはずいぶんと意識が高そうだぜ。
著者のマーティン・セリグマンは学習性無力感を発見した心理学者として知られている。しかし1990年ころから無力感みたいなネガティブなことじゃなくて、ポジティブなことを研究するようになったらしい。
本書は具体的な実践についての記述は少なめで、ポジティブ心理学がどのように始まり普及しいていったかが書かれている。だから邦題は原題とはかけ離れているものの、内容的には妥当である。
ポジティブ心理学の要点は、well-beingをいかに達成するかである。翻訳をしたことがある人ならわかると思うが、well-beingは非常に訳しにくい単語である。本書ではウェルビーイングと訳されている、、、安易なカタカナ語の使用は嫌いだがしょうがないときもあるよね。
単なる幸福Happinessとウェルビーイングの違いは、前者が一時的な安楽な気分であるのに対して、後者は持続的な幸福感てことだ。
多くの心理療法は、精神分析を除けば、ネガティブに対しては対症療法でしかない。それはいたしかたないことで、ネガティブな感情は治癒することがない。常にそこにあるものなのだ。身体が冷えるとウイルスが増殖して風邪症状をきたすようなものだ。これを退けるにはなにかに没入するして。ポジティブで身体をみたすしかない。
大事なのはネガティブが消え去らないからといって不幸になるわけではないし、ネガティブが治癒するとしてもウェルビーイングを達成できるわけではないってことだ。
たとえネガティブが消えないとしても、ポジティブを増やすことでウェルビーイングに到達できるのだ。
著者らは米陸軍とも仕事をしている。イラクやアフガニスタンで戦った兵士たちにとって深刻な問題はPTSDである。しかし著者らが注目するのは、ひどい体験をしても精神的な強さを手に入れた人々がいることだ。より多く酷い目にあうほど、より強くなる傾向すら見出されたのだ。
つまり悲惨な経験をしたからといって、必ずしも弱者とか被害者になる必要はない。それを糧に強くなることもできる。これを心的外傷後成長(PTG)と呼んでいる。
PTGを達成するために必要なことは具体的には書いていないが、なるほどなあと思ったのであった。
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