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松本俊彦『誰がために医師はいる――クスリとヒトの現代論』読んだ

萩野昇先生がおすすめされていた、松本俊彦先生の著書読了。

Kindle oasisでスイスイ読むのにちょうどよい感じの本だった。

そしてまたしてもみすず書房だっていう。。。

薬物依存症を専門とする精神科医である著者の魂の彷徨といった趣でたいへん面白い。

特に生徒会室の片思いの女性と、シンナー中毒の同級生のエピソードはとても興味深かった。そして喫煙者になってしまったことも。タバコは心の隙間にすっと入ってくる。そしていったん入ってきたら追い出すのが極めて困難である。そういうことを強く意識させられるほろ苦いエピソードである。

いちばん印象的だったのは、世の中には人に依存できない人がいるということだ。いやたくさんいるのかもしれない。だからなにかしらの痛みとか不健康に依存する。そして著者はある時期、セガ・ラリー・チャンピオンシップとかいうアーケードゲームにはまっていたという。うまくいかない依存症の診療に関わっているとそういうものも必要なのかもしれない。そして私陣も英語学習にのめりこんでいるのもそうしたことかもしれない。

それとイタリア車、ことにアルファロメオに没頭し、改造をしまくっていたというエピソードもなんだか笑えた。車の改造から、整形へと話が飛ぶからだ。顔面の改造も車の改造も不可侵性や所有権の主張にちがいないとか。孔氏様は「身体髪膚これを父母に受く、あえて毀傷せざるは孝のはじめなり」と説いたが、親から虐待を受けた患者たちが身体に改造を加えるのはこれの逆のことをしており、父母から自由になり身体を取り戻しているといえなくもない。
とはいえ、著者は依存症の治療にのめりこむうちに、真に改造すべきものは車ではないと気づくのであった。

本書でも指摘されているように、私たちの世代にとっては、「覚醒剤やめますか、人間やめますか」というCMの影響で、覚醒剤というと完全に人格が荒廃してしまうというイメージが強い。しかし実際はそんなことはほとんどなくて、覚醒剤の使用者はけっこうまともらしい。ハンディキャップを抱える妻のために覚せい剤をやって、仕事に家事にフル回転していたが、ある日マトリがお家にやってきて逮捕、帰ってきたら妻子に逃げられていたという、それ以上いけなすぎるエピソードも紹介されている。

人格の荒廃という点では(そして身体的なダメージという意味でも)、覚せい剤よりもアルコールのほうが危険だと、これまた何度も指摘されている。

日本食道学会の教育講演で久里浜医療センターのお医者さんがアルコールのやばさ、なぜアルコール依存症が増えているかを熱弁していた(食道疾患はアルコールと関係が深いのでこういうセッションがある)。大きな要因は酒税が下がったらいくて、いわゆるストロング系の酎ハイはその極北であろう。だって工場の味がするし。

全然どうでもいいことだが、このアカウントのアイコンはストロングゼロTシャツである。

Tシャツもらえるまでストロングがぶ飲みして、シールを一生懸命集めてた。

しかし今はアルコールは飲むことはめったにない。

てゆうか最近のノンアルコールビールすごいよね。

ノンアルコールビールにたどりついたとこで今日はおしまい。

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