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【実話怪談】窓の拭き掃除。

家事はどちらというと好きだし積極的にやるタイプだというYさんだが、窓の拭き掃除だけは最近気が向かないという。
「それはこの家に引っ越してきてからの話しですけどね…。」

田舎暮らしに憧れていたYさんは一年前、のどかな田園風景が広がる北関東の山沿いの町で中古の一軒家を購入した。
前の持ち主だった老夫婦がふたりとも亡くなり、都会へ出た子供たちも家を引き継がなかったために売りに出された、破格の値段の物件だった。
空き家になってからほんの数年しか経っていないこともあり、部屋も庭もあまり荒れておらず比較的綺麗な状態が保たれていて、差し迫ったリフォームなども必要なし。簡単な清掃さえすればすぐに住めるような状態であった。
「車が余裕で三台は停められるくらいの広さの庭も気に入ってますね。柿の木とちょっとした植木があって。つつじかなぁ?それを眺めながら縁側でお茶やらビール飲んだら最高でしょうね。でも…」

その縁側の窓が厄介なのだという。

「どこの国の人だとか人種とかははっきり分からないんですが、外国人と思われる人の顔が浮かび上がってくるんです。」

綺麗に拭き掃除しようとクロスで水拭きをすると、どんな拭き方をしても、その拭き跡が白い線で描かれた人の顔に変化してしまう。

窓の最上部右端から左端へ、そして少し下に降ろして今度は左端から右端へ。それを繰り返して最下部へ。
そのように機械的に拭いていき出来た、窓全体に引かれた拭き跡の白い横線が、じわじわ真ん中に集約されていって、やがて人の顔になる。
拭き方を変えて、ぐるぐると回転させたり、支離滅裂に拭いていっても、拭き跡はしばらくすると、顔になっていってしまうのだ。
他の窓ではそんなことは起こらず、縁側の窓だけで起こる不気味な現象だった。

「から拭きするとあっさりその人の顔は消えちゃいます。それに水拭きしなければ済む話しなんですけどね。」

それでもYさんは、やっと手に入れた田舎暮らしの、憧れの縁側生活のために、窓は綺麗にしておきたいからと水拭きは止めないらしい。
から拭きだけでは限界がある。
だから、拭き跡が残らないという高性能の窓拭き用クロスの購入をYさんは検討しているという。













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