見出し画像

コロナ外出自粛企画その2〜Boonzzyをつくった本十選

コロナなゴールデンウィークも終わり、短いワーキングウィークの後の週末を皆さん在宅で楽しんでますか?在宅の時間つぶしというと音楽聴くか、映画TV観るか、本読むか、ということになりますが、先日Facebookの方で友人から振られて「7日間ブックカバーチャレンジ」というのをやりまして、これが結構面白かったのと、7冊だと自分の選びたかった本すべてが収まらなかったので、記録の意味も含めてこちらで「Boonzzyをつくった本十選」としてまとめておくことにしました。一冊一冊が僕のいろんな側面のツボを突いたものばかり。まあそれはどうでもいいとしても、在宅で暇だという方、是非このリストの本(多くはKindleなどの電子書籍でも読めますし、Amazonでも購入できるものばかりです)をいくつか読んでみてください。

1冊目:夏目漱石「こころ」1914(大正3)年9月 岩波書店刊

画像1

まずは自分の原点から。漱石と○○(この後に出てきますw)は自分の好きな二大作家。日米の差はあれど、共通点は短い文でピタリ、ピタリと語り口が進んでいく明快さと気持ち良さ。異なる点は漱石の場合、やや当時の世相や彼自身の日本社会・文化状況への諦観を反映して、陰のあるウィットが魅力的であること。
しかしこの「こころ」は中学生時代読んだ時は衝撃でした。何せ「坊ちゃん」「吾輩は猫である」ときてこれでしたから(笑)。しかし改めてその後読み返すと、三部仕立ての全体の文章構成といい、そして極上のミステリー小説と言ってもいいほどの見事なプロット展開といい(特に最初二章と最後の章の叙述者が「私」から「先生」に暗転のように変わる手法)、そして最後の驚愕の結末といい....小説としては恐らく漱石の最高峰だろうと思ってます。
最初読んだ時は確か旺文社文庫。写真は、子供の高校の教科書に採用され、懐かしくて改めて文庫購入した時の新潮文庫です。

2冊目:Ernest Hemingway「Islands In The Stream(海流の中の島々)」1970年刊 

画像2

自分の好きな二大作家のもう一人はヘミングウェイ。その男らしい力強い短めの文章でドシ、ドシと書き綴るスタイルに最初は翻訳で惚れたもんです。その後原書でも読めるようになってからは、彼の文章の醸し出す独得の世界観にしばらく陶酔した時期がありました。彼の作品に出会ったから、キーウェストにも行ったし、彼がバケツのようなグラスでダイキリを呑んだというバーにも行きました。
この作品は彼が『老人と海』を書いた1950年代に既に書かれていたスクリプトを彼の死後マリー夫人がまとめて出版したという作品。しかし彼の海と南の島を愛する雰囲気がむせかえるように伝わってくるストーリーを、当時は新潮文庫で読んでました。この作品は後にジョージ・C・スコット主演で映画化されたようですが、未だに見てません。多分一生見ないでしょう。ヘミングウェイの世界観は僕の頭の中にあるだけで充分なんで。

ちなみに洋楽ファンの方には気付いてる人もいると思うけど、このタイトルはあのドリー・パートンケニー・ロジャースの大ヒット曲と同名。あの曲を書いたギブ兄弟がこの作品を意識していた可能性は絶対ある、とあの曲調から昔から思ってましたw

3冊目:Stephen King & Peter Straub「Talisman」1984年刊 

画像3

漱石ヘミングウェイ以外だと、僕はキング・フリークです(笑)。で、キングの作品でどれか一つというと、この作品と正に今の状況を反映するような世界中を猖獗する病原菌で壊滅した地球を舞台に巨大な悪と対決するという『The Stand』(1978)と、主人公がタイムトラベルでケネディ暗殺を阻止しようとする『11/22/63』(2011)の3つで無茶苦茶悩んだんですが、やっぱりキングの最高峰は『タリスマン』しかないかな、と。
パラレル・ワールドを題材に、今のアメリカで病気で瀕死の母親を何とか助けようとする少年ジャックが、もう一つの世界では母親はその世界を支配する良い女王で、その世界を支配できる「タリスマン」を彼女から奪って抹殺しようとする悪と戦いながら苦難と危険に満ちた旅を完結しようとする一大アドベンチャー・ロマン大作。これがスター・ウォーズシリーズとタメはるくらいスケールが大きくてワクワクするような作品なのです。ジャックが旅のお供にする狼男が、あのジャー・ジャー・ビンクスを思い出させて結構笑うんですがw
噂によるとスピルバーグが映画化権をかなり前に獲得したらしいんだけど、その後全く映画化の話は聴かないのが残念。これは今だったらCGも駆使して問題なく映像化できるので是非見たいのだけど。

最初はペーパーバックで読んだのだけど、その後写真のハードカバーを購入。そしてこの続編の『Black House』も買ってるのだけど今回まだ読んでなかったのを思い出した。いい機会なのでこのコロナ自粛期間中に改めて2冊読破したいと思ってます(^^) あ、これ新潮文庫で訳本も出てますので、是非一読下さい。

4冊目:半藤一利「昭和史」平凡社2004/2006年刊 

画像4

一応漱石つながりでもある、漱石の義理の孫、半藤さんのこの戦中戦後の日本のありのままの政治外交の歴史を綴った大作は、僕らが学校教育ですっぽりと抜け落ちている(そして抜け落ちている理由はちゃんとあるのだが)戦中戦後以降の昭和の日本の本当の姿を教えてくれる、本当に貴重な著作。
本当言うと、この本を、全ての高校の日本史の最後のエグジット・プロジェクトの題材として全ての高校生に読んでもらいたい、と思うのだけど今の首相と政権では難しいよな。
もしまだ読んでない方がいたら是非読んで下さい。今のダメダメ首相につながる日本の近代政治史が明確に理解できるので。(ちなみにこの本は昨年LA留学から帰国した娘の最初の誕生日プレゼントで謹呈しました)

5冊目:Gregory David Roberts「Shantaram」2003年刊 

画像5

この本、GEのグローバルチームにいた時に、当時のイギリス人のボスに確かチーム・クリスマス・パーティでもらったのが出会い。当時彼が読んでいたく感動したということで頂いたのだけど、全編943ページの大作だったので読めるかなと思いながらボツボツ読み始めたところ、最初の20ページでドはまり!そこから一気に(といっても4ヶ月くらいかけて)読んでしまった。

オーストラリア人の19歳の主人公が、銀行強盗を働いてぶち込まれた刑務所からまんまと脱走して、偽の身分でインドはボンベイに渡るのだけど、ここからがこのストーリーの特異性ともの凄いエンタメとスリル・サスペンスの連続のはじまり。
ボンベイで全財産を盗まれてスラムで生活する中で、スラムの大火で負傷した住民を免許もないのに医師として治療したり、コレラが流行したときもコミュニティ支援のために奔走したりしてスラムの有名人としてリスペクトされるように。
そのうち地元の外国人と知り合ってボリウッド映画に出演したり、地下組織の犯罪的取引にかかわったり、極めつけはアフガン紛争の中に巻き込まれて戦士として戦ったりと、もう無茶苦茶なストーリー(笑)。でも主人公がさまざまな冒険をくぐり抜けていく様子がホントにカタルシスを呼ぶ、絶賛興奮阿鼻叫喚のアドベンチャー・ロマン大作なのです。

この本もジョニー・デップが映画化権を取って映画化されるはずだったんだけど、未だに映画になったという話は聞かない。でもこの本も充分に脳内ビジュアルを刺激するストーリーなので、是非一度読んで見て下さい。ちなみにこちらも新潮文庫から訳本(上中下三巻)が出てますので是非そちらでも。

6冊目:吉川幸次郎訳「水滸伝」全16冊 岩波文庫 大正13(1924)年刊

水滸伝

中学から高校のある時期、中国文学、それも三国志とかよりもより下世話な「聊斎志異」「金瓶梅」といったいわゆる大衆中国文学にハマった時期があった。その当時、ちょうどTVドラマ化されてたこともあって(中村敦夫林冲の役やっててハマリ役、カッコよかったなあ)いわば貪り読んだのがこの京大の中国文学の大家、吉川幸次郎先生の訳による、岩波文庫の「水滸伝」。
11世紀、北宋の時代の中国、全土で官僚の汚職や不正がはびこる中、中国全土から百八人の英雄が梁山泊に集って、これを正すという勧善懲悪ものなんだけど、その英雄の出自は盗賊だったり、挫折した官僚だったり、アンガーマネジメントできずにすぐに人を殺しちゃう巨漢だったり(笑)まあキャラとしてはアウトローの集まりなんだけど、それらの英雄が一人ずつ梁山泊入りする経緯のエピソードがどれもこれも痛快で面白くて。
百八人の名前も渾名+氏名の組み合わせで例えば林冲は「豹子頭林冲(ひょうしとうりんちゅう)」。これを百八個当時必死に覚えてたのは、同じ時期にヒットチャートの曲名アーティストと最高位を必死に覚えてたのとあんまり変わらんところ(笑)

こういう昔の中国文学って、一種独特の正義感と無頼さ、とにかく結構鶏や豚つぶして肴を作ってよく酒呑むし、日本のチマチマした感じを遙かに超越するダイナミズムが妙に快感で、ホントに当時好きでした。僕が読んでた吉川先生岩波文庫のオリジナルから、先生の没後、弟子の清水先生が新たに翻訳を手直しした「完訳 水滸伝」全10冊が今は岩波から出てるらしいから久々にまた読み返してみようかな、と思い始めました。

7冊目:William Paul Young「The Shack(神の小屋)」2007年刊

画像7

ある事件で末娘が連続殺人犯人の犠牲となり、その悲しみを乗り越えられない主人公が、ある雪の日に届いた神よりの手紙に導かれて末娘が最期を遂げた小屋に戻ってみると、そこで彼を待っていたのは三位一体(父と子と精霊)が黒人女性とユダヤ人男性とアジア人女性の姿となったものだった。そこで主人公は世にも不思議な体験をし、乗り越えられなかった悲しみを克服して神の愛を心より理解する....

僕はクリスチャンではないし、この本で展開されるキリスト教的教えの部分全てを信じるかというとよく判らないけど、確か長男を失った数年後にこの本をある人に教えてもらって読んでみて、不思議な気持ちの平安を得られたことを覚えてる
いかに悲劇的のように思えて、いかに最悪のように思えることも、全ては起こるべくして起こることであり、僕らはそれを受け入れて新しい学びを得た上で更なる上のレベルに進むことを、大きな意志から期待されているのだ、ということ。
宗教臭く聞こえて「え、何それ」と思う人もいると思うけど、単純にファンタジースペクタクルストーリーとして読んでも充分読む人を引きつける本だと思います。

知らなかったけど、今回改めてチェックしたらこの作品、2017年に映画化されてて、ナレーションはトップ40ファンならお馴染みのティム・マッグロー、そして何と精霊のアジア人女性役で石田純一(そういえばコロナ大丈夫かな)の娘のすみれさんがハリウッド・デビューを果たしてたらしいw
うーん映画は観たいような観たくないような...

この本、英語も平易なのでペイパーバックもトライしていいと思うし、自己啓発本で有名なサンマーク出版から訳本も出てるので、取り敢えず是非読んで欲しい一冊です。

8冊目:C.S. Lewis「The Chronicles Of Narnia(ナルニア国物語シリーズ)」全7作 1950〜1956年刊

画像8

僕をつくった本のジャンル、というと外せないのがミステリー、エンタメ系、そしてファンタジー系。ファンタジーというとダントツに僕の血となり肉となってるのはスター・ウォーズ・シリーズなのだけど、あれは映画。同じ映画でも原作本がある『指輪物語(The Lord Of The Rings)』も映画になる随分前からカミさんと二人でハマリにハマって、カミさんは訳本、僕はペイパーバックで貪り読んだけどちょっと文章的に冗長になるところや、かなり英語読解力を要するところもあったりして随分苦労したのを覚えてる。映画化後は子供達、特に末娘がハマリまくって今でも当時買ったDVDを引っ張り出してよく観てるくらい。でも、さすがにちょっとメジャーになりすぎた感があるな。ハリポタシリーズも一瞬ハマったけど、あれは文章や設定が少年少女向きなので、大人になって再度読む、という感じでもないし。

で、悩んだあげくファンタジー系で選んだのがこのナルニア国シリーズ。「これだって映画になってるじゃん」と言われそうだけど、実は全7作中映画化されたのは1作目『The Lion, The Witch & The Wardrobe(ライオンと魔女)』(2005)、2作目『Prince Caspian(カスピアン王子の角笛)』(2008)そして3作目『The Voyage Of The Dawn Treader(朝びらき丸 東の海へ、映画タイトル:アスラン王と魔法の島)』(2010)の3つだけ。その後制作会社が映画化権を失ってどうなるか、と思ってたら何とNetflixで続きが映像化されるらしい。実はこのシリーズ、1作目の素晴らしい着想とコンセプトのストーリーに比べて、2作目3作目はやや中だるみで、4作目の『The Silver Chair(銀のいす)』からぐっとまた物語の展開のスケールと驚くようなストーリー展開が加速し、5作目『The Horse And His Boy(馬と少年)』で一旦スター・ウォーズっぽい世界観でおっと思わせた後、最後の2作『The Magician's Nephew(魔術師のおい)』『The Last Battle(最後の戦い)』で一気にカタルシスに突き進み、それまでの様々な疑問が次々に解明され、最後は壮大な宗教的とも言える(この物語全体にキリスト教的宗教観は何となく漂っているのだけど)展開から呆然とする結末になだれこむ、ということなので、ここからの映像化は是非期待したいところ。最初の映画シリーズの頃は『最後の戦い』なんてどうやって映像化するんだろ?と思ってたけど、今やどういう風に映像化されるのか?と楽しみ。

とにかくこのシリーズを3ヶ月くらいかけながら、ワクワクしながら読み進めていた当時は楽しい経験だった。善と悪の対決、パラレルワールド、時間軸のねじれ、ところどころに出てくるキャラがスターウォーズに出てくるC3POジャージャー・ビンクスらのキャラを思わせること(ジョージ・ルーカスはかなりナルニアからヒントを得てるに違いないと思ってます)、そして輪廻転生から宇宙観を想起させる全体の構想といい、ファンタジー作品としては間違いなく名作と呼んでいいと思う。その割に(映画化が途切れたこともあって)今ひとつメジャーになってないあたりにも愛着を感じるところ。ファンタジー系がお嫌いでなければ、この際腰を据えてこのシリーズ、読破してみてはいかがでしょうか。

9冊目:宮部みゆき「模倣犯」2001年 小学館刊

模倣犯

さてファンタジーの次はミステリー。これがまた死ぬほどムズい。数あるミステリーの中から自分が衝撃と感動を覚えた作品なんて死ぬほどいっぱいあるし。コナン・ドイルエラリー・クイーンの昔からアガサ・クリスティー、クロフツ、ヴァン・ダインといった古典系、近年だとパトリシア・コーンウェル、ジェフリー・ディーヴァーといった本格派からハードボイルド系のマイケル・コナリードン・ウィンズロウ(今読んでるw)、法廷もののジョン・グリシャムなどなど、挙げていけばきりがない。国内だって江戸川乱歩横溝正史の二大巨頭を筆頭に東野圭吾横山秀夫、そして姫川玲子シリーズの誉田哲也など、どれも凄いぞ。うー悩む!そんな中で最後まで選考に残ったのがロバート・ラドラムの『The Bourne Identity(暗殺者)』(1980)とこの『模倣犯』。

暗殺者』は新潮文庫上下二巻だったけど、会社から帰宅する途中、会社最寄り駅前の書店で何気なく440ページの上巻を買って、電車の中で読み始めたらもう最後、ページを繰る手が止まらず、家の最寄り駅に着くころには残り20ページほど。こりゃいかんということで駅前で400ページの下巻を買って帰宅したけど、結局その日のうちに読了してしまったという、熱量満点の読書経験があっただけに悩んだ(ちなみにこの作品から後2作品は、『ジェイソン・ボーン・シリーズ』としてマット・デイモン主演で映画化されてるけど、僕は映画は観てません。観る必要もないと思ってます)。

しかし、知り合いに勧められて当時あまりその著書を読んでなかった宮部みゆきのこの『模倣犯』の読書経験たるや、『暗殺者』のそれに匹敵いやかなり凌駕する熱量だったのが、これを自分をつくったミステリーの代表作に選んだ理由。この作品での宮部のプロットとストーリー構成力の素晴らしさは、しばらく他のミステリー作品を読む気がしなくなったほど。これも新潮文庫の全五巻で読んだのだけど、最初の第一巻の終わりで犯人(と思われた登場人物)があっさり死んでしまうという呆気にとられる展開、第二巻と第三巻では一点主人公の視点が犯人側に移る倒叙ミステリー手法で、いやが上にもスリルとサスペンスをガンガン上げて行くその筆致と、中盤のストーリーを支える主要キャラとその妹を取り巻く心がつぶれるような残酷な運命、そして最後の二巻で真犯人が自らの傲慢さと愚かさで墓穴を掘っていく痛快さと虚脱感。こんなに読み終わった後に悲しさとむなしさと感動と虚脱感に満たされたミステリー作品は始めてだったな。この後宮部作品を次から次に読んで、他にも傑作作品が多いことを知ったけど、この『模倣犯』は未だに超えてないと思う。当然というか2002年度の宝島社このミステリーが凄い!」の国内1位に選ばれているこの作品、そうそう何度も読めるものではないので、まだ読まれてないミステリー・ファンの方なら、絶対一読に値します(随分ネタバレしちゃってますがお許しを)。

10冊目:Tom Shales & James Andrew Miller「Live From New York: An Uncensored History Of Saturday Night Live」2002年 Back Bay Books社刊

画像10

そして最後はエンタメ系。音楽系の本も随分読んでていろいろ迷ったんだけど、ミュージシャンの自伝とかはあまり興味なくて読んでないのと、読んだやつもまあ結構自慢話が多く、面白かったのはバート・バカラックの『Anyone Who Had A Heart: My Life And Music』(2013、訳本あり)くらいかな。あとは内幕暴露本とかはかなり面白いものも多く、例えばフィリー・ソウルの大御所、ギャンブル&ハフトム・ベルらのフィラデルフィア・インターナショナル・レーベルの内幕を書いた『A House On Fire: The Rise And Fall Of Philadelphia Soul』(2004)なんかはかなり楽しく読んだけど、エンタメ系で一冊、というとやっぱり僕的に外せないのは、この本。

アメリカNBCで1975年にスタート以来45シーズン目になる現在も毎週土曜日の夜にオン・エアされ、毎週その時ホットなミュージカル・ゲストのライヴをフィーチャーし、政治・社会的な風刺精神満点のコメディ・スキットを披露する長寿人気コメディ・ショー、サタデイ・ナイト・ライヴ。日本の「オレ達ひょうきん族!」なんかはもろこの番組のフォーマットのパクリ(失礼、オマージュ)だったし、このショーから生まれた人気コメディアン転じて映画スター達には枚挙に暇がないよね。SNLがなければジョン・ベルーシダン・アークロイドの『ブルース・ブラザーズ』も、マイク・マイヤーズデイナ・カーヴィーの『ウェインズ・ワールド』も、そしてエディー・マーフィーの『ベヴァリー・ヒルズ・コップ』も、ひいては『ゴーストバスターズ』も『ロスト・イン・トランスレーション』も『オースティン・パワーズ』もなかったわけで。この番組が1970年代後半以降、アメリカのポップ・カルチャーに与えてきた影響たるや、もの凄いどころの話ではないのです。

そんな番組のシーズン1からシーズン28までの間のショーを飾ったキャスト・コメディアン達や、番組の生みの親ローン・マイケルズ、そして番組の裏方であるスキャット・ライター達(ライターからキャストになったティナ・フェイや、後に自分のレイト・ショーを持つことになるコナン・オブライエンなど、ここからも数々の才能が輩出されてる)へのインタビューを中心にショーの30年近い歴史を様々な証言とボケとツッコミと涙と暴露話で(笑)生き生きと物語るこの本、正にSNLのファンにはたまらない宝物のような本です。

スタート数シーズンのスターキャスト達、特にベルーシ、アークロイド、チェビー・チェイス、ギルダ・ラドナー、ビル・マレーらがショーを離れた80年代初頭の番組の危機的状況、それを救済した天才エディ・マーフィーの登場と80年代後半第2期黄金期を支えた、カーヴィー(「チャーチ・レイディ」)、マイヤーズ、フィル・ハートマン、ジャン・フックスらから90年代初頭の第3期黄金期のクリス・ロック、クリス・ファーリー、アダム・サンドラー、デヴィッド・スペイド、ロブ・シュナイダー(「Makin' copies!」)達がショーを完全復活させた時代は、自分がNYに住んでて毎週土曜日ライヴでショーを観てた時代なので、特に思い入れが強いんですよね。同じくNY2度目の駐在だった2000〜2004年もジミー・ファロン(現在NBC看板ショー『The Tonight Show』のホスト)、ウィル・フェレル、トレイシー・モーガン、ティナ・フェイ、マヤ・ルドルフ(あのミニー・リパートンが名曲「Lovin' You」を捧げた実娘)などなど、SNL史上屈指のベスト・キャストの時代。いやあこういう話をし出すと止まりません。

ただこの本で辛いのは今は故人となってしまったベルーシ(薬物過剰摂取)、ギルダ(子宮癌)、フィル・ハートマン(精神的に不安定だった妻が射殺)、クリス・ファーリー(薬物過剰摂取)といった番組の歴史を飾った素晴らしい亡きコメディアン達を惜しむインタビューも多く含まれていること。改めて彼らのご冥福をお祈りします。そしてこんなこと書いてるとまた読みたくなってきたのだけど、この本のアップデイト版が2015年に出版されてるらしく、ということはシーズン40までカバーされてるわけで、オリジナルでは出てこなかったセス・マイヤーズ、ウィル・フォーテ、アンディ・サンバーグ、カーステン・ウィグとかのインタビューも読めるのか!買わなきゃ(笑)

ううむ、思わず長くなってしまった。なお個人的に僕がSNLキャストのトップ3を選ぶとすると、1位クリス・ファーリー、2位ウィル・フェレル、3位カーステン・ウィグといったところでしょうか。え、よう判らん?いいのいいの、SNLファンには絶対判ってもらえるんですから(笑)。

ということで僕をつくった本十選。こいい奴もありましたが(笑)楽しんで頂けたでしょうか。このうち一冊でも二冊でもお気に入りの作品があればうれしいですし、これを機会にご自分をつくった本は何だろう、と考えるのもコロナなご時世、楽しく自宅で過ごすのにいいですよね。

この記事が参加している募集

#読書感想文

189,568件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?