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散文とか短編小説とか

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僕の回りくどい手紙のような散文
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#家族の物語

Museu Picasso──バルセロナのピカソ美術館

 スペインの偉大な画家の絵は、どれも無言のまま語りかけてくる──晴れたり曇ったりするなか…

卍丸の本棚
7か月前
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ミラボー橋のふたり

星々たちが姿を消し緑濃く霧雨が降る真夜中、深い艶のある朗読で僕は目を覚ました───音のす…

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彼岸花

僕が宮本さん一家の事件を知ったのは日曜のことだった。 前日、宮本さんのお宅のテラス修繕工…

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ケーキ

あの女ほど思い出したくない女はいなかった。 俺のことを始終馬鹿にしてきた女。 学生の頃はま…

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今でも4歳の頃のことをよく覚えてる。 「こんなの要らないわよ!」 あのひとがそう言ってスニ…

3

ノオト

僕は日記をつけている。 僕の日記は日付、天気、気温、株価変動、建材系のニュースの箇条書き…

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竹二郎の物語③ 戦後77年編

竹二郎と淑子が亡くなり、8年近くが経過していた。 台風の影響で海沿いの街は湿気が強かった。それでも雨のお陰でほんの少し暑さは柔らかくなってもいた。 2022年8月18日。 竹二郎の息子、武文は1番若い孫の大と作業場で木材の加工をしていた。 「そういえばさ、この前聞いたり確認したひいじいちゃんの話を文章にしてみたんよね。じいちゃんちょっと、見てくれる?」 午前中の休憩のとき、武文にiPhoneの画面を見せてきた大。 武文は笑いながら、孫の書いた、父親の物語を読み始めた。

竹二郎の物語② 戦後編

第一話はこちら 「安寿恋しや、ほうやれほ。 厨子王恋しや、ほうやれほ。 鳥も生(しょう)ある…

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竹二郎の物語① 戦時編

1915年、湘南某所。 比較的裕福だった家に9人兄弟の8番目の男子、竹二郎が生まれた。 竹二郎は…

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とりとめのないこと2022/04/04,05

目が覚めると妻のシモーヌ仮称大佐はいつもみたいに大の字になっておらず、丸まっていた。それ…

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旅先から

これは今旅先で書いています。 そうです、私はついに家族旅行という念願の充実した連休をとる…

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七夕、銀河鉄道の夜

こと座のベガ、わし座のアルタイ、はくちょう座のデネブ 夏の大三角形は、これらの一等星を結…

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漁港

漁港 結婚生活が破綻しかけていたところでの夫の在宅勤務。状況が悪化し続ける2人。自立する…

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檸檬

妻から檸檬🍋を帰りに買ってくるように頼まれた男。いつもの西村さんがそこへ登場する。 縦書き版 横書き版  7月になったばかりの初っ端から雨、雨、雨。お気に入りのラッパーの新曲をエンドレスで流しながら、新築の床張りをしている。午後3時過ぎに妻からLINEの通知が来ていた。 「帰りにレモンを買ってきてください」 妻は妊娠2ヶ月過ぎでもうすぐ3ヶ月だ。俗に言うデキ婚だ。先に結婚しようが子どもができようが順番なんて俺にとっては正直言って関係ない。大体そのおかげで俺と妻は雨降って