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野村萬斎と上品なゴブリン

野村萬斎と上品なゴブリン

「ぐっはっ…」

ダブルベッドの下の段、起き上がろうとして異変に気づいた。

猛烈に腰が痛い。

先日決めたルーティーンを止めるわけにも行かず、「にほんごであそぼ!」の野村萬斎のように、ソロリソロリと階段を下ってリビングへ向かう。

なんとか朝のコーヒーを投下し終え、ナスやかぼちゃ、トマトの苗を見るために畑へ玄関を出る。

梅雨の合間の朝8時、太陽の光に照らされてチャキチャキと体を動かす祖父の姿が見えた。

小柄ながらもがっしりとした体躯。
ジーンズ生地のシャツにベージュのスラックスを履いたその姿は、遠目からは人間界に慣れ親しんだ屈強なゴブリンのように見える。

何を隠そう、ゴブリンは現在わたしの生活指導を担っているのだ。
健康を維持するための新しい習慣として、毎日土いじりを一緒にすることになっている。

今日も朝から、さつまいもを植えるための畝作りや、先日植えた苗たちの水やりをソロリソロリと遂行したのである。

土からクック

離職してから習慣となっている毎日クッキングも、先日50品目を越えることとなった。

もともと調理が好きというよりも、誰かと一緒に御飯を食べたり、新しい食材を見つけたりというような食をキッカケに交流することが好きなタイプだ。

人の特徴が一番表に出るのは、実は食事の時だとおもっている。

一緒に卓を囲む時は、どんな他人でも隣り合う事ができるし、仕草や顔がよく見える。食事に集中することで、建前や本音を調整する機能が落ちて、その人らしい振る舞いが出てくるからだ。

さまざまな場所を旅してきて気づいた、他人との距離を縮めるコツの一つに「ご飯をもりもり食べる」という技がある。

その術について興味がある人には、以下の書籍をオススメしたい。


料理を始める前は「美味しく・楽しく食べる」ことをプロフェッションとして生きていた。

人やものをしっかり観察して食べることで、人は人を幸せにすることができる。誰かを幸せにしたいと思っている人はぜひ、一緒にその術を磨いていこう。

せっかくなので、この際オケラやミミズとも卓を囲んで交流できるくらいになろうと思う。

食べるは続くよどこまでも

「空腹は最高のスパイスだから、たくさん働くのがいいぞ」

ゴブリンは土埃をあげながら、すごいスピードで肥料を畝に敷き込んでいく。

たしかに体を動かすことが料理の素材だとは、よく言ったものだ。

雑草をとったり、両手に血豆をつくったり、筋肉痛になったり…
そのために精のつくものを食べることまで、料理の一部なんじゃないかと思えてくる。

食べる側と作る側も境目なんて無いのかも…とか考えてると目のうらがひっくり返りそうになるのでこのへんで止めておこう。脳みその容量を増設しなきゃならなくなってしまう。

朝起きたときも、トイレに行くときも、誰かと話してるときも、ケータイをいじってるときも、実は食事中なのかも。

そんなことを考えながら、こんばんは先程ゲットした新玉ねぎでかき揚げを作ることにする。

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