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みんなでデザインする組織を育てるための試みあれこれ

ブックリスタのプロダクトデザイナー、crema(くれま)と申します。

今日は、デザイナーやPdM、BizDevメンバーを含めて、「みんなでデザインする組織」に少しずつ近づけていく取り組み(デザイン力を底上げしていく試み)についてご紹介します。


ブックリスタのデザイン組織の現状

ブックリスタでは、「エンタメ ✕ テック」(知的好奇心 ✕ 感動体験)というビジョンを掲げ、電子書籍ストアから推し活アプリ、クリエイター創作支援サービスなど、「ドキドキ・ワクワクする体験」を届けるためのサービス開発に、全社で取り組んでいます。

サービス開発と運用を強力に進めるうえで大切な職種のひとつが、デザイナーです。2024年7月現在、ブックリスタのデザイン組織はこのようになっています。

  • クリエイティブチーム

    • ディレクター 1名

    • グラフィック/ウェブデザイナー 4名(正社員 3名 + 業務委託 1名)

    • アシスタントデザイナー 1名

  • プロダクトデザイナー

    • 6名(正社員 3名 + 業務委託/副業 3名)

クリエイティブチームの仕事の流れについては、昨年note記事を公開しました。

現在弊社では、デザイナー同士で話し合いながら、「デザインスキルの底上げ」や「デザイナーやPdM間の知見共有」、「デザイン環境の整備」などに一緒に取り組んでいます。

しかし、デザインはデザイナーだけのものではない

ここまでデザイナー職だけにフォーカスして書いてきましたが、実際には、デザインはデザイナーだけで行うものではありません。

デザインを「価値をユーザーに届けること。わかりやすくすること。それを考えることやプロセス」と定義すると、表層や骨格だけではなく、戦略や要件を考える人達もデザインに関わる人達と言えるでしょう。

皆さまおなじみのUXデザインの5段階モデルは、Jesse James Garrett氏の書籍「The Elements of User Experience」から引用しています

先ほど挙げたクリエイティブチームメンバーやプロダクトデザイナー達だけではなく、PdM、ディレクター、BizDev(事業企画)の人たちも、「デザイン」に関わるメンバーです。

社内ミーティング用の資料を抜粋しています

そして、それ以上のand more…なメンバーも巻き込んで「価値をユーザーに届けること」を一緒に考えていくことにしました。いろいろなポジションの人が興味をもってくれて、エンジニア数名も参加してくれることに。こういった「領域を滲み出していく感じ」は、みんなで力を底上げしていくときにとても大切です。

多様なメンバーを巻き込んで「デザイン」を考える組織づくりに取り組んでいるのですが、メンバー間のバックグラウンドや経験の違いがかなりあるのも実情です。そこで私たちは、みんなのデザイン力を高める試みを定期的に実施しています。

みんなのデザイン力を高める試みあれこれ

それでは、ここから「試み」の具体例をご紹介していきます。小さな集まりは無数に実施していますが、外部講師をお招きした大きめの勉強会については、2022〜2024前半の2年半で5回実施しました。

第一線でご活躍の皆さまに講師を依頼させていただきました

エンタメ系アプリから学ぶ素敵なUXとUI(2022年1月)

2022年1月に実施したのが、三瓶亮さん(株式会社フライング・ペンギンズ / Design Matters Tokyo主宰)をお招きし、全社でデザインについて考えてみるイベント「エンタメ系アプリから学ぶ素敵なUXとUI」です。

コロナによる行動制限がある期間でしたが、FigJamで制作した資料をZoomで投影し、リアルとオンラインのハイブリッド方式にて全社員参加のイベントになりました。電子書籍ではない他エンタメ業界のUXとUIの好事例を多くのメンバーで持ち寄ってユーザー体験を考察することにより、様々な角度から考えを深めることができました。

Zoom配信のキャプチャです
FigJamを使って大きな資料を作りました

UXリサーチアカデミー(2022年3〜4月)

次に、2022年3〜4月にかけて、松薗美帆さん(リサーチカンファレンス主宰)に講師としていらしていただき、「UXリサーチアカデミー」と題して、UXリサーチにはどんな手法があるのか、どのような使い分けをするのかなどの座学から、ユーザビリティテストのワークショップまで、数日かけてじっくり学びました。

UXリサーチに興味はあっても実施したことがないメンバーも多かったのですが、この勉強会を機にUXリサーチャー専任にアサインされる人が出るほど、組織に大きな影響が生まれました。

定性分析講座:KA法(2023年3〜4月)

松薗さんの講座にも強力に後押しされ、全社の各部署でユーザビリティテストやデプスインタビューに取り組んでいくなかで、次に課題として浮かび上がってきたのは、得られた定性的なフィードバックを、社内メンバー全員で使いやすいインサイトとしてまとめる手法が苦手な人が多いということでした。

そこで、翌年の2023年3〜4月には、日本ウェブデザイン代表で人間中心設計専門家の羽山祥樹さんをお招きし、インタビューで得られた発言ログをKA法を使って可視化する手法を、3回シリーズで教えていただきました。

この講座でとても印象的だった出来事は、社内メンバーであらかじめ制作していたKA法による価値マップを、羽山さんにレビューしていただいたこと。

「頑張っているけれど後半の進め方が恣意的になってしまっていて、本来のやり方と違いますね!」というダメ出しをいただき、劇的ビフォアアフターのごとく修正してくださったので、最初からスラスラ答えを教えていただくよりもはるかに濃い考え方を身につけることができました。

左が社内メンバーが作った価値マップ。右が羽山さんが作り直したもの。ユーザーが感じている価値が、より明確にわかるようになりました

定量分析講座(2023年3〜4月)

プロダクトデザイナーとしては、定性的なデータへの着目ももちろんですが、定量的なデータを使ったアプローチも非常に重要です。数値的なデータを根拠に仮説を立て、施策を提案できるようになるべく、基本的な考え方を改めて学び直すことにしました。特に、分析チームにデータを出してもらう際の基本的な作法などを知り、チーム連携による生産性を高められるようにしていきたかったのです。

そこで、分析チームメンバーがかねてよりSNS等で注目していたSTORESの西村純さんにご依頼し、デザイナーやPdM向けの「基礎講座」と分析チーム向けの「中級講座」をご担当いただきました。

この講座を実施したことにより、データ分析について完全に理解することはできないまでも、これまで分析チームに各自バラバラと「この数字を出してほしい」とSlackでお願いしてしまっていたことが整理され、デザイナーやPdMとの共通言語をある程度獲得できたようです(今後も定期的に振り返る必要はあります)。

グラフィックデザイン講座(2024年3月)

これまで実施してきた講座は「戦略」「要件」寄りのものが多かったため、2023年度末の講座では、バランスを取る意味を込めて「表層」に近いものを学ぼうということになりました。

クリエイティブチームに所属するデザイナーたちも含めて話し合った結果、「タイポグラフィをメインとしたレイアウト」に確固たる自信を持っていきたいということで、「美術大学の先生から教えていただこう!」という企画になったのです。

そこで、「デザインの教室」などの名著を執筆されているデザイナーで大学講師のご経験もある佐藤好彦先生をお招きし、弊社の主要な商材であるコミックの表紙なども交えたオリジナルの教材をご用意いただいた講座を開催していただきました。

デザイナーだけではなくPdMやエンジニアも数名参加してくれたことにより、「デザインするときにどんな視点で考えているのかが分かってきた」という嬉しい反響もありました。講座最終日には、それぞれがデザインした雑誌の表紙をオンラインで講評しあい、非常に盛り上がった企画となりました。

架空雑誌の表紙デザイン課題。Canva上で、お互いの感想を周囲に書き込みました

2024年度は他社のプロダクトデザイナーと一緒に学ぶ取り組みへと変化してきた

これまでご紹介したように、2022年から2023年度にかけては、外部の強力な講師をお招きして教えを請うスタイルの学びがメインでした。

2024年度は、これまで積み上げたものをベースに、自分たちが発信していくこと / 他者と知見を交換することでの学びも深めていこうとしています。そのために取り組んでいることを2つご紹介します。

Voicyさんとの合同プロダクトレビュー会

音声総合プラットフォームVoicyのプロダクトデザイナーさん達と御縁があり、お互いにUGC要素やエンタメ要素があるサービスを展開している企業でデザイナーが少人数であるということから盛り上がったので、プロダクトレビュー会を合同で開催する流れになりました。

Discordなどでクローズドな場をつくり、プロダクトデザイナーや一部のPdMが集まって、お互いの守秘義務に反しない範囲で、施策について悩んでいることやユーザー体験を再検討するポイントについて、率直に意見を述べ合っています。

互いの自社プロダクトの課題について非常に活発に意見交換し、付箋も沢山残しての終了

近い考え方を持ちながらもドメイン知識やバックグラウンドが異なる者同士での意見交換は非常に刺激的で、参加者全員の満足度が非常に高い取り組みです。全員が積極的にコミットしている良い状態を保っているので、細く長く続けていきたいと考えています。

登壇初心者練習会

長い記事となりましたが、最後のトピックです。

インプットが積み重なってきた弊社プロダクトデザイナー達ですが、知識のアウトプットも増やして、さらにバランスの良い成長をしていけると良いなという局面になりました。お付き合いのある事業会社のプロダクトデザイナーさん達も似たような課題感を持っているということが分かり、試しにクローズドな登壇初心者練習会を実施してみました。

参加したのは、下記のサービスと会社です。

  • ビジネスチャット「Chatwork

    • 「Chatwork」は、誰もが使いやすく、社外のユーザーとも簡単につながることができる日本最大級のビジネスチャットです。

  • Stockmark

    • ストックマークは、自然言語処理に特化したAIスタートアップです。言葉のAIで、人類はもっと進化できる。

  • Voicy

    • Voicyは、厳選されたコンテンツを"ながら聴き"できる音声の総合プラットフォームです。

  • booklista

    • 「エンタメ ✕ テック」のビジョンの下、電子書籍から推し活、クリエイター支援等の新規事業を手掛ける会社です。

皆さんの発表内容をNotion上で表にしてみたところ、オープンな勉強会に勝るとも劣らない充実したラインナップになりました。

運営の想像以上に充実したラインナップの発表に!

社外での登壇機会とは楽しいものだよ、情報を出すと数倍になって返ってくるよ、ということを温かい雰囲気の中で味わってもらえるよう、運営一同話し合って場作りを実施。MetaLifeというオンライン会議ツールを使って、できるだけ多くの社員に集まってもらいました。

ゲームのような会場で、わいわい盛り上がりました

チャット欄でもコメントや質問が流れ、終始楽しい雰囲気の練習会。

左側のチャット欄もめちゃくちゃ盛り上がりました

「この人たち、本当に登壇初めてなの?」と思ってしまうほど、テーマも話しぶりもクオリティが高く、満足度の高いイベントとなりました。

複数企業が合同で学びに取り組む意味とは

ただでさえ業務で忙しいなか、アドオンでの学びの場の準備。さらに他の事業会社さん達との共同運営も含んでくるとなると、どうしても負荷が高くなってしまい、「なぜこれをするのか?」と問いかけられるかもしれません。

しかし、自社の事業領域だけで物事を考えず視野を広く持ったプロダクトデザイナーの育成は、必ず組織に良い影響を与えます。また、広い目で見れば、将来なにかのチャンスで協業するかもしれない方々、熱意とやる気を持った方々と交流していくことが、業界全体の発展につながっていくと考えています。

企業や職種の枠を超えて、デザイナー同士の知見共有や学び合いが日常的にできている状態をつくることが、ある種の社会への貢献ともいえます。

ゆるく連携したコミュニティがたくさんある状態が理想と考えています

オンライン / オフライン、日本語 / 英語をはじめとした様々な言語、多種多様な業界に関連するデザイナーのコミュニティは、世の中に沢山存在します。各デザイナーが複数のコミュニティにまたがって出入りし、知見や経験がゆるく伝播していく状態になることが理想です。

そのような場を少しずつでも提供することが、デザインに関わるメンバーの力を強くし、被雇用者の満足度を上げ、ひいては組織を強くしていくのではないでしょうか。

仲間を募集しています!

ブックリスタでは、このような環境を楽しみつつ新規事業にトライしたいプロダクトデザイナーを、積極採用中です! カジュアル面談からでも、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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