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書評講座 Vol. 4

8
課題書:1)インヴェンション・オブ・サウンド(チャック・パラニューク著、池田真紀子訳、早川書房)、2)自由課題
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#悲鳴

陰謀論について語りたい──【書評】チャック・パラニューク著『インヴェンション・オブ・サウンド』

陰謀論について語りたい──【書評】チャック・パラニューク著『インヴェンション・オブ・サウンド』

SNS台頭後、ハリウッド映画は作品に「語る仕掛け」を織り込んでいる。そのために、一見普通に楽しめる映画に敢えて違和感のあるものや雑なものを投げ込んで、人々に「あれは変だろ」と指摘させ、その議論まで計算してメッセージを伝えることまである。……そういった手法を小説界に持ち込んでいるのが、映画「ファイトクラブ」原作者のパラニュークだ。

パラニュークの18年ぶりの邦訳作『インヴェンション・オブ・サウンド

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書評『インヴェンション・オブ・サウンド』 チャック・パラニューク著/池田真紀子訳

 疫病に戦争。明日にでも終末を迎えそうなわたしたちの世界を、最後のひと突きで崩落させるのは、あるいは、人間が腹の底から発するたった一つの悲鳴かもしれない——何かの比喩かと思われるかもしれませんが、あに図らんや。邦訳は十八年ぶりとなるチャック・パラニュークの新作『インヴェンション・オブ・サウンド』(池田真紀子訳)で、悲鳴という名の音は「物理的」に世界を破壊します。

 舞台はハリウッド。音響技士とし

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