『エルサレム』ゴンサロ・M・タヴァレス著/木下眞穂訳——夜明け前のもっとも闇の濃い時間で展開する物語
二〇〇四年、アンゴラ生まれのゴンサロ・M・タヴァレスがポルトガル語で発表し、数々の文学賞を勝ち取り、世界五十ヶ国で翻訳された衝撃作だ。書名は『エルサレム』だが、舞台はどこかのドイツの街らしい。
それほど長くはない小説なのに、実に三十二もの短い章から構成される。途中には謎めいた預言書のようなおもむきの小説「ヨーロッパ02」が、入れ子構造のように挿入されてもいる。時間は不思議な進み方をする。ぐんと進むかと思えば少し後戻りし、種明かしがなされたかと思えば、また迷宮のような過去へと