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DE&Iと問いかける技術

ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの取り組みによって職場の多様性が増すなか、「問いかけ」の技術がより必要とされていると最近感じます。

組織心理学を50年以上研究するエドガー・H・シャイン教授は、多様性が増す現代の最大の問題は「人間関係」より「課題の遂行」に価値を置く文化が増えたことだといいます。
その文化は自覚されにくいため、費用対効果を求めると人間関係の構築は時間がかかるからやめておこう、となりやすいのですね。

著書が長年の研究から明らかにしたのは、社会的に大きな失敗やリスクを負うのは「考えもなく急ぐ」という状況が発生し、互いに信頼できる人間関係が構築されないときであるそうです。

そこで考案したのが、良好な人間関係を育む適切な「質問」です。
著者はその質問を「謙虚に問いかける(Humble Inquiry)」と名付けました。

具体的には、相手の警戒心を解き、自分では見出せないことについて尋ねる技術であり、その人を理解したいと思って関係を築く流儀です。

「謙虚に問いかける」は他の質問とどうちがうのか、という問いに対し、著者は問いかけを4つに分類しました。

1)謙虚な問いかけ
2)診断的な問いかけ
3)対決的な問いかけ
4)プロセス指向の問いかけ

このうち最も重要な「謙虚な問いかけ」の特徴は、まず自分が知らないことを認め、偏見を持たないよう気をつけ、相手を怖がらせない方法で情報を求めることです。

たとえば、数十万人の社員を持つある大企業の創業者は、自ら現場を訪れて「今、どんな仕事をしているの?」と社員に尋ね、多くの社員から親しまれているそうです。この質問は「こんにちは、調子はどう?」という型通りの挨拶とは、大きく異なります。

そして、私が最も参考になったのは、多様性ある職場のリーダーが身につけるべき「謙虚な問いかけ」についてです。

組織心理学を50年以上研究するシャイン教授によると、現代の最大の問題は、人間関係より「課題の遂行」に価値を置く文化が増えたことだといいます。この文化がもたらしたのが、自分が話すことによる「課題の早い遂行」を優先するマインドです。

そこで、著者が提案する問いかけが、

「他にはどんなことがあったのですか?」

というもので、ある出来事から結論を急ごうとするあまり、見落としている点をあきらかにするプロセスです。

また、課題の遂行を優先するせっかちな文化を持つ人は「内省」の時間を確保すべきであるそうです。「謙虚な問いかけ」をまず自分にしてみることで、自分が必要しているものと行動にギャップがないかを見直すことができるのですね。

そして、多様性あるメンバーによるチームを構築する際、「文化の島」をつくる考え方が大切であり、下記の質問を提案されていました。

「あなたの文化的環境では、上司が信用できるかどうか、同僚と信頼を築けるかどうかは、どのような点から判断されますか?」

それぞれのメンバーの権威や肩書きに対する接し方、信頼の構築にどのように取り組んできたか、という「経験」を語ってもらう問いかけです。

現状のルールの多様性の「幅」を把握し、全員が納得して従うことのできる「共通基盤」がどこにあるのかを探ることが、多様性ある職場のリーダーの務めなのですね。

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