松橋 正博「本のドキュメンタリー」

経営とメディアに関する学びを発信/テレビドキュメンタリーディレクター→広告会社プロデュ…

松橋 正博「本のドキュメンタリー」

経営とメディアに関する学びを発信/テレビドキュメンタリーディレクター→広告会社プロデューサー→動画企画制作で起業/講談社「クーリエ・ジャポン」プロデューサー/動画のご依頼等は→https://www.linkedin.com/in/masahiro-matsuhashi/

マガジン

  • 本のドキュメンタリー

    経営とメディアを中心に、事業戦略、組織戦略、マーケティング、営業、チームビルディング、財務、会計などジェネラリストに必要なビジネス知識を幅広くお届けしていきます。

最近の記事

  • 固定された記事

最高の支援

誰かを支援する、という行動は、顧客やチームメンバーとのコミュニケーションにおいて重要ですが、このプロセスを研究する「支援学」という領域があることを最近初めて知りました。 最高によかれと思って行った支援がなぜ失敗するのかを研究する組織心理学の創始者・エドガー・H・シャイン教授によると、支援者が陥りがちないくつかの罠があり、最も大きな原則は「相手を知らずに、支援はできない」ということです。 「余計なお世話」「おせっかい」「的外れ」は相手のためにならない、ということは何となく想

    • 最適な目標設定

      起業する前に会計について基礎を学んでいた時に読みましたが、専門家に限らずビジネス書の名著ですね。自分の無意識に染み込んでいること、まだ努力が必要なことなど、多くの気づきがありました。 この本では、会計に関する7つの原理原則がわかりやすく、深い語り口で記されています。 1)キャッシュベース 2)土俵の真ん中で相撲を取る 3)1対1の対応 4)完璧主義 5)ダブルチェック 6)採算の向上 7)透明な経営 特に「土俵の真ん中で相撲を取る」という、切羽詰まってから全力を出すので

      • 変化に対応する

        大企業では近年、アセットを生かしながら変化に対応するために「ネットワーク組織」が重視されており、このキーワードを調べてみました。 変革のリーダーシップを研究するジョン・P・コッター教授は、ネットワーク組織を下記のように定義されています。 ▼ネットワーク組織とは ・動的に常に変化し、案件に応じてくっついたり離れたりする ・上下関係のタブーがなく、シックスシグマの縛りもない ・個人主義、創造性、イノベーションが公に認められる ・階層やサイロごとに滞留していた情報が自由に行き来

        • 学びの成功のカギ

          学び直しには、「プロセス」「学習スタイル」そのものを学ぶことも大事なようですね。 経験学習の理論で知られるデイヴィッド・A・コルブ教授によると、学びの成功のカギは、 「目標をいつ達成するか、適切な期限を設定すること」 だと言います。 挫折の最大の原因は、目標の期限が早すぎることなんですね。 「〇ヶ月で達成」のようなYouTube動画のサムネイルをよく見かけますが、期間の短さで注意を引くのは、「学び」という観点からはミスリードと言えます。 適切な期限を設定するメリッ

        マガジン

        • 本のドキュメンタリー
          60本

        記事

          スマホによる注意の分散

          スマホによっていつでも他者の情報に触れられる「常時接続の世界」で、どうすれば刺激に埋もれず大事なものを育てていけるか、というヒントが詰まった本ですね。 著者である哲学者の谷川嘉浩さんは、 ・注意の分散に抵抗しよう ・孤独を持とう というメッセージをこの本を通して発信されていました。 スマホのある生活に慣れ、無意識に手が伸びたときに「これはよくないな」と薄々感じていましたが、この習慣による弊害の1つが「言葉の使い方」であるそうです。 現代アメリカ哲学者のロバート・ブラ

          事業と一体の人事戦略

          スタートアップや新規事業の成長に必須となる、事業と密接な連携を築く人事戦略のフレームワークがまとめられた貴重な本ですね。 私自身も会社を経営しており、人事関連の部署の方から依頼から増えているため手に取りましたが、商談では必ずと言ってよいほど「事業と一体となった人事」というフレーズが出てきます。 この分野をもっと学びたいと思っていた矢先で渡りに船という感じでしたが、特に参考になったのは、そもそもスタートアップ企業はどのような壁に直面し、なぜ人事戦略で解決すべきなのか、という

          学習しながら実行する組織

          多様化する職場の中で目標を達成するために、効果的な協働に必要なプロセスとは何かを紐解いた「組織づくり」の名著ですね。 組織学習や心理的安全性を研究するエイミー・C・エドモンドソン教授は、「学習する組織」を長年のテーマとし、チームワークが発揮されるプロセスを「チーミング」と名付けました。 チーミングとは、「学習しながら実行する」を持続させることであり、組織学習の原動力であるといいます。 さまざまな企業へのコンサルティング実績から、成功しているチーミングには下記の「4つの行

          仕えるリーダーの姿勢

          最近、企業のCHROの方と話す機会があり、DEI推進について伺うなかでこのキーワードが出てきたので調べましたが、リーダーのあり方を考える上で重要な概念ですね。 まずChatGPTに聞いてみると、 次に、どのような組織に必要とされているか聞いてみましたが、 とのことで、両利きの経営を行う大手企業には特に重要ですね。 アメリカの大企業でマネジメント教育を担当され、1977年にこの本を出版したロバート・K・グリーンリーフ氏によると、長年の研究と実践が明らかにしたのは「導く」

          DE&Iと問いかける技術

          ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの取り組みによって職場の多様性が増すなか、「問いかけ」の技術がより必要とされていると最近感じます。 組織心理学を50年以上研究するエドガー・H・シャイン教授は、多様性が増す現代の最大の問題は「人間関係」より「課題の遂行」に価値を置く文化が増えたことだといいます。 その文化は自覚されにくいため、費用対効果を求めると人間関係の構築は時間がかかるからやめておこう、となりやすいのですね。 著書が長年の研究から明らかにしたのは、社会的に大

          仕事のムダを減らす

          生産性を上げるための「合理化」のポイントと、その裏に共通する「ムダ」とは何かが実践知をもとに語られた名著ですね。 クレディセゾンのCTOである著者の小野さんは、ビジネスの「山=長所」「谷=短所」という視点を重視され、 「谷を埋めても、山がなければ顧客には何も映らない」 といい、人は「山」を見出せなければ「谷」に吸い寄せられてしまう傾向があり、谷を埋める思考はラクだがムダである、と強調します。 「谷」は、すでに他社が世に示している体験や価値なのですね。 そこで、山をつく

          仕事のストレスを減らす

          知的労働の生産性を高める方法が紹介された有名な本ですが、今後のAI活用にも役立ちそうですね。 生産性向上コンサルタントのデビッド・アレン氏によると、近年の知的労働の特徴は、 仕事の終わりがはっきりしない = やりかけの仕事が増える という点にあり、多くの人のエネルギーを奪っているといいます。 「やりかけの仕事」による最も大きなリスクは、仕事に追われ、新しい顧客や機会を追いやってしまうことです。 私が以前に仕事を依頼した企業で、忙しい様子を隠そうともせず、やりとりがい

          対話の質を高める

          「1on1ミーティング」を近年多くの企業が導入されていますが、人と組織の成長を目指し、対話の質を上げるためのマインドセットと技術がわかりやすく解説された本ですね。 最も印象深かったのは、「部下の経験学習を進めることが上司の役割」という点です。 「経験学習」とは、経験を通じて学んだ内容を、次の経験に活かすプロセスを指します。 人の成長を決める「学びの要素」は3つあり、 70%:仕事経験から学ぶ 20%:他者から学ぶ 10%:研修・書籍から学ぶ という比率になっているそ

          夢の仕事をつかむ

          LinkedInを始めて半年くらい経ち、意外なつながりからビジネスの機会ができることが増えてきました。 状況が日々変化するなかで「機会」とはそもそも何だろうか、という疑問から手に取りましたが、豊富なエピソードと見出される普遍性は、SNSでも活用できそうでした。 仕事の機会とキャリア形成を考えるうえで、心理学者のジョン・D・クランボルツ教授の「計画的偶発性理論」は、さまざまなメディアで引用されるため有名ですね。 クランボルツ教授は、夢の仕事をつかむマインドセットとして、

          意思決定を分散させる

          経営者の方とランチをする機会があり、「ティール組織」と同じく話題となったキーワードのため調べてみましたが、意思決定権を分散させることで「進化し続ける組織」を目指す重要な考え方ですね。 ChatGPTによると、 という概要で、2007年にこの組織体制を提唱したソフトウェア開発会社の創業者ブライアン・ロバートソン氏の著書も読んでみました。 ホラクラシーによる経営の主な目的は、 ・システムの不調 ・繰り返される誤り ・非効率なプロセスへの不満 など周りの現実を感知する「セ

          「時間がない」から抜け出す

          ご相談を受けるプロジェクト数が増え、タイムマネジメントが課題になってきたなかで手に取りましたが、「足りない」と感じることは人の行動をいかに変えてしまうかを理解できる1冊でした。 行動経済学を専門とするムッライナタン教授は、長年の研究から、 「欠乏は、心を占拠する」 と語り、何に注目するか、どうやって比較検討するか、どう決めるか、どう行動するかに影響を与えるといいます。 欠乏は注意を1つに集中させる一方、他のことへの集中力を邪魔するため、いわゆる「上のそら」になりやすく

          「時間がない」から抜け出す

          効果的なフィードバック

          多様化する職場の人材を育成するために欠かせない「フィードバック」の基本的な理論から実践法までが網羅された入門書でした。 人材開発の第一人者として知られる中原教授は、 「フィードバック」 = 耳の痛いことを部下にしっかりと伝え、彼らの成長を立て直すこと と定義され、下記の2つの働きかけが成長を促すといいます。 1)情報通知 たとえ耳の痛いことであっても、部下のパフォーマンス等に対して情報や結果をちゃんと通知すること (現状を把握し、向き合うことの支援) 2)立て直し