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楽しむメカニズム

人事部向けのDE&Iと採用を支援する中で「内発的動機」というキーワードをよく聞くようになり、リサーチの一環でこの本と出会いましたが、知っているつもりだった「フロー体験」にはいくつもの側面があるようですね。

フロー体験という言葉はビジネス書で最近よく見るようになりましたが、ポジティブ心理学の研究で知られる著者のミハイ・チクセントミハイ教授は、

「フロー活動」 = 行為者の技能に関して最適の挑戦を用意している活動

と定義され、人が活動を楽しいと感じる理由の調査によって下記の順位があることがわかったそうです。

▼活動が楽しい理由の順位
1)それを体験することや技能を用いることの楽しさ
2)活動それ自体 活動の型、その行為、その活動が生み出す世界
3)個人的技能の発達
4)友情、交友
5)競争、他社と自分との比較
6)自己の理想の追求
7)情緒的開放
8)権威、尊敬、人気

そして、実はフロー体験を妨げる要因は、「心配」と「退屈」の2つに集約できるといいます。

「心配」 = 成し得ることがたくさんあるように思えること
「退屈」 = できることが何もないこと

このどちらかに偏ることなく、ある水準の経験、技能、自分に適した条件づくりのバランスを見つけることが、フロー体験に入るコツなのだそうです。

もし自分や職場の仲間がフローになかなか入れない・・・という状況があったら、心配と退屈のどちらに偏っているかをまず観察することが大事なのですね。

また、「フロー体験」というと1つの仕事や趣味に没頭しているイメージがありましたが、日常の些細な行動の中には「マイクロフロー」と呼ばれる活動が存在することを突き止めたそうです。

人は何らかの活動を楽しむとき、行為と意識が融合し、

「うまくやれているだろうか」
「ここで自分は何をしているのだろう」
「これをやり続けるべきか」

といった雑念が頭をよぎることがなくなります。

実はこれは仕事や趣味の活動だけに当てはまるのではなく、日常に行う目立たない小さなことにも該当し、下記の6種類に分類できるといいます。

1)想像的 ・・・独り言を言う、植物に話しかける など
2)視聴的 ・・・本・新聞・雑誌を読む、音楽を聞く など
3)口唇的 ・・・ガムを噛む、お菓子を食べる など
4)身体運動的・・・散歩、ランニング など
5)創造的 ・・・絵を描く、楽器を奏でる など
6)社交的 ・・・雑談する、冗談を言う など

著者はこれらの行動を「マイクロフロー」と呼び、何とこれらの活動を禁止すると人にどんな影響を及ぼすのか、という驚くような実験を行ったそうです。
(後世のために、こうした実験に参加された先人を尊敬します…)

マイクロフローを剥奪すると、より大きな疲労、眠気、集中力低下、頭痛、無気力を訴え、以前よりくつろげなくなり不健康になった、という感想をほとんどの被験者が持ったといいます。

仕事や趣味など真剣な活動の中に散りばめられた一見無用に見える些細な行動は、人の身体や感覚機能、精神の健康を支えており、人が何かを楽しむために重要な役割があるのですね。

こうした気晴らしとなるマイクロフローは人によって異なり、職場の部下や子供の行動の中で「???」と感じるとつい口を出したくなることもありますが、実はこれは本人の大事な調整機能を奪ってしまうことになります。

人的資本経営が重視される中、人の持つ潜在能力を最大化するために、この知識は重要かもしれないですね。

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