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ミニドラマ「ナルシスト」

●部屋

  フミヤが窓を開ける。
  ベッドに横たわり手鏡を覗き込むヒロト。

フミヤ「また見たな」

ヒロト「…何が?」

フミヤ「お前やめておけって」

ヒロト「うーん…」

フミヤ「いじるなよ。 余計崩れてる(悪くなってる)ぞ」

ヒロト「崩れるくらいが世の女性にはちょうどいいかなぁ」

  ベッドのそばにある椅子に座るフミヤ

フミヤ「…そういや明日だけど大丈夫そう?」

ヒロト「うん、大丈夫そう?」

フミヤ「俺が聞いてるんだよ」

ヒロト「そうだな…」

フミヤ「だから見るなって」

ヒロト「(鏡に向かって)なぁ、大丈夫かな?」

フミヤ「聞くなって!なぁ、そもそも、鏡見るの
 お母さんに禁止されたんじゃねぇのかよ」

ヒロト「人に指図されるようなことじゃないだろ!」

フミヤ「お母さんだってな、お前のこと心配して
 言ってるんだよ」

ヒロト「過保護すぎるんだよ。これは自分の問題なんだ」

  顔に手を当てるヒロト。
  それを横目にフミヤは携帯を取り出す

フミヤ「…で、明日は?」

ヒロト「…俺はいいけど、こいつがなんて言うか」

フミヤ「あのな…京子も来るって約束したんだぞ」

 フミヤに目をやるヒロト。慌てて鏡に視線を戻す。

ヒロト「いやぁ、なおさらこいつが許してくれるかな?」

フミヤ「お前に聞いてるんだよ!」

ヒロト「行けるわけないだろ!こんな顔で…」

フミヤ「何言ってるんだよ。これまでどれだけ
 手入れしてきた?
 何よりも、お前と久々に外に出れることを楽しみ
 にしてる。俺も、京子も」

ヒロト「俺は…怖い」

フミヤ「…(携帯に目をやる)」

ヒロト「毎日、見てきたんだ自分の顔を。人よりも
 たくさん。
 そんな自分が怖がっているのに、見せれるわけが
 ない」

看護師「こちらです」

「ありがとうございます…久しぶり」

京子が部屋に入ってくる

ヒロト「京子…フミヤ、なんでだよ!」

フミヤ「どうしてもって聞かなくて」

京子「…ごめんね」

  顔を隠し、鏡で確認するヒロト。

ヒロト「京子、悪いな今日は帰ってく…」

  ヒロトの手を強引に握る京子。
  

  鏡が割れる音が響き渡る

京子「毎日、見てたんだよ。ヒロトとの写真」

ヒロト「…あの時から随分、変わっちゃってさ」

京子「手は、変わらないね」

  
  ゆっくり京子の方を見るヒロト。

  椅子から立ち上がるフミヤ。

フミヤ「そうだ、明日の予行練習がてらに散歩でも
 行かない?いいよな、京子」

京子「うん」

フミヤ「よっしゃ!じゃあ先外出てるわ。
 ヒロトのこと頼むわ」

  部屋を後にするフミヤ。
  

2人「…」

ヒロト「京子、お前は変わらないな」

京子「どうかな…カッコいい彼が出来てたりして」

ヒロト「え?!そうなの?」

京子「ふふっ、よかった」

ヒロト「は?何が?」

京子「騙されやすいところも、変わってない」

  京子はヒロトを起こし、
  車イスに載せて2人は病室を出た。

ー完ー


短いですがnoteで初めて脚本作りにチャレンジしました!
これからスキル向上のためにも、感想・コメントしてくれると嬉しいです。
読んで頂きありがとうございました。


プロフィール:藤本たくま(19)
脚本家・演出家を目指し毎日note更新中。YouTubeチャンネル「19歳」開設予定。
今浮かんだ願望→このお話ラジオドラマにしたい!

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