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芝木好子小説集「新しい日々」

久々に演劇部時代の先輩に会った。コロナ禍だし、対策はもちろん万全に。人にも満足に会えない世の中だから本当に困っちゃう。みんなしんどいよね。辛いなあ。早く終わんねえかな。

新しい事業というか、やりたいことがあって、先輩とあーだこうだと話して、ぷらっと蔦屋書店をのぞいてみた。相変わらずめちゃくちゃ広い。でも何周か回ってみたら案外時間はかからなくて、苦にもならない。

蔦屋書店を周回する中で見つけたのがこの小説集だ。「短編集」じゃなくて「小説集」という名前であることに編者のこだわりを感じる。      学生時代は近現代文学専攻だったけど、恥ずかしながら「芝木好子」という作家の名前は聞いたことがなかった。
エスカレーター前に、さくらや、緑の写真が表紙の美しく装丁された小説集が並んでいた。私ははじめその存在に気が付かなくて、近くに陳列されていた図録ばかり眺めていた。先輩が「めっちゃかわいい本ある!」と言ってくれてよかった。素晴らしい出会いをした。
POPには、「芝木好子はもっとたくさんの人に読まれるべき作家だ」「再評価されるだろう」といったことが書かれてあった。装丁の美しさやその売り文句に惹かれて購入。帰宅してから読んでみた。

一番初めに収録されているのが「新しい日々」。表題にもなっている作品ということで、少し構えて読んだ。
晩ごはんを食べてから、もともとは応接室だった部屋に無印の人をだめにするクッションを置いて。
読み進めるにつれて、自分の中の興味の枝がどんどんのびて、頭の久しく動いていなかった部分がガンガン稼働するのを感じる。

なんやこれ。おもしろい!

芝木好子という人は、女性の、どうにもならない諦念が根底にあるような憧憬を描くのが巧みだ他人には絶対に晒したくない自分の嫌なところが掻かれるような感覚。本当におもしろい。普段なら、「おもしろい」と感じた小説は集中して二時間くらいで読み切ってしまうけど、この小説集は別。少しずつ、ゆっくり味わいたい。一日一篇ずつがちょうどいい。学生時代に出会いたかったな。学生時代に出会っていたら、たぶんこの人を研究したと思う。

別冊の解説集(めいたもの)も興味深いし、久々に大ヒット。またゆっくりおかわりもしていこう。

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装丁がかわいかろ?





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