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「私は病気をやめることにした」(めまい克服の認知行動療法)②

さて、前回の記事で私が長くて先の見えない暗いトンネルに入ってしまった経緯を書きました。今回はその後の経過、そして認知行動療法で安全行動と言われる、不安を取り除くためにする行動について書きます。
安全行動は不安を予防するために対策したり、不安をコントロールしようとしたり、一時しのぎの解決を図ろうとする行動のことです。
一見、不安は解消されるように思いますが、実はこの安全行動がより不安を強め、状態は悪化してしまうのです。

私は最初に倒れてから、その後も回転性めまいを繰り返して何度か救急搬送されました。
めまいは予測ができません。次はいつめまいが来るのか、私はそればかり考えて毎日恐怖と不安に怯えるようになりました。
生まれたばかりの赤ちゃんのお世話で寝不足、産後のホルモンバランスの崩れ、自律神経の乱れ。それらが更にめまいを悪化させ、私の精神状態を疲弊させていきました。

このめまいの原因が何なのか、私はいろんな病院へ行きました。
まずは出産した産婦人科。ここでは産後うつと言われました。
エジンバラ産後うつ質問票というのがあって、いくつかの質問に答え、30点満点中9点以上が産後うつと判断されます。
私は22点という高得点でした。(全然嬉しくない高得点…)
でもめまいさえなければ、低い点数だったと思います。

そして精神科を紹介されましたが、もちろんそこでも産後うつの診断。
耳鼻科にも何件か行きましたが、いろんな検査をしても異常は見つかりませんでした。
私はドクターショッピングを続け、様々な方法も試しました。
プラセンタの注射を打ってみたり、整体に行ってみたり…。

倒れてから半年が経っても、めまいは良くならず、次第に回転性めまいが起きていない時でも常にふわふわクラクラ、地面が揺れているような感覚があるようになりました。浮動性めまいです。
ひどい時は地面がスポンジのようにぐにゃぐにゃに感じられて、誰かに支えられていないと歩けないほどでした。

横になっても、船に揺られているような感覚があって怖くて気持ち悪くて眠れませんでした。一睡もできないまま朝を迎える事も多かったです。
耳鳴りもひどくて、爆音で蝉の鳴き声のような音や踏切のような音、鐘のような音が鳴り響いていました。かと思うと、急に音が聞こえなくなったりもしました。
その度にまためまいが来るのではないかと、神経過敏になりました。
それでも耳鼻科の検査では何の異常も出ないのです。

私は常に誰かにそばにいてもらわないと過呼吸発作を起こし、更にめまいも起こすようになり、どんどん状態は悪くなりました。
産後ケア施設にもお世話になりましたが、産後ケア施設は費用が高くて、しかも利用できる期間も決まっています。

旦那さんにずっと仕事を休んでもらうわけにもいかず、実家も遠く母に毎日来てもらうわけにもいきませんでした。

やむなく私はかかりつけの内科の先生に相談して入院させてもらいました。めまい止めの点滴を毎日打ってもらわないと不安で不安で仕方なかったのです。年末年始や休日など、通院できない日があるとパニックを起こすため、入院させてもらったのです。
そこで安易に処方された眠剤と精神安定剤を飲むようになったのが間違いでした。

内科はめまいの専門でもないし、精神の専門でもありません。

私はそれまで病気と言えば風邪くらいしかかかった事が無く、病気=すぐ治るものと思っていました。
どうしても産後うつとか、心因性のものでめまいが起こっていると思いたくありませんでした。

どこかに必ず異常があるはずだ、病気が見つかるはずだ、原因がわかれば治るはずだと思っていました。

内科では不眠がひどいとの事で、まず眠剤を処方されました。
マイスリー、デパス、ハルシオン、アモバン、ロゼレム、ルネスタ…
いろんな薬を飲みました。
私はマイスリーが一番眠れたので、毎晩飲むようになりました。
一番眠れたと言っても、2時間くらいです。
当時の私は2時間眠れるだけでも救いでした。

そして精神安定剤のソラナックスも処方されました。
藁にも縋る思いだった私はソラナックスも服用し始めました。
最初は一日に一回服用していたのが徐々に増えていき、一日の最高量である4回まで増えました。

ソラナックスを飲むと、不安な気持ちが落ち着き、めまいもあまり感じなくなるので飲まずにはいられませんでした。
ソラナックスがあれば大丈夫、と思い、退院しました。

これらのドクターショッピング、めまい止めの点滴、入院、眠剤や精神安定剤の服用など、すべて安全行動に当てはまります。
一時的には不安をしのげるものの、めまいを治すという本来の目的からはどんどん遠ざかり、状態を悪化させていくのです。

私はマイスリーとソラナックスの依存症になり、常に持ち歩き、薬が切れてくると動悸や息切れや手足のしびれが出るようになり、めまいや耳鳴りが悪化するようになりました。一日の最高量を超えて服用してしまったこともあります。

おそらく、めまいで苦しんでいらっしゃる皆さんの中にも安全行動をしている方は多いと思います。
目が回るようなことを避けていたり(螺旋階段を避ける、回っているものを見ないなど)、私のように薬の依存になってしまったり。

すぐに止めるのは難しいです。私も依存症から抜け出すのは時間がかかりました。安全行動も今でもしてしまうことがあります。
脳の粘土の形を変えるのは時間がかかります。
でも少しずつ変えることは出来ます。私もまだまだ粘土をこねこねしている最中です。

次の記事では、病名がついた事、そしてめまいに囚われるあまりに新たなめまいを引き起こしてしまった事について書きます。

長々と読んでいただきありがとうございます。


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