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超高級フレンチを食った結果、ラーメン屋のことを考えた

どうも、五月病マンです。

先日、初めて「フレンチ」を食べました。
30歳を過ぎて、初めて。

いやー、相当でしたね。

やってんね。

やりおるね……フランス……


 ……具体性ゼロのため、もう少々詳しく振り返ってみます。



港区への突入

前提として。

ギリギリ住所の上では東京23区内、玄関を開けたら室内が難なく一望できるワンルーム蟄居ボーイ(30代超え)の僕が、自発的に高級ディナーなんて赴くわけがありません。

ではなぜ、そんな僕がフレンチの場に突っ込んでいったのか?

まあ、人の縁ですね。
ちょっとしたきっかけで、仲良くなった人がいまして。
いろいろ盛り上がって
「一度食事をしよう」
て話だったんですよ。最初は。

まあ職場か家に近けりゃいいかな~、とナメた心持ちで話に乗ったものの、蓋を開けたらヤバかった。
すっげ~高級なフレンチだった。


要するに、相手が、思ったより「上流」だったんですね。


上流の方にとっては、新たな交友関係にふさわしい、選択肢として当然出てくる店だったのでしょう。
そんな上流にとってのジャブが、限界ワンルーム男性である僕のみぞおちに全力右ストレート級でクリーンヒットしたというわけです。

さて、一体どうすればいいのでしょう。
「わあ~! こんなごちそう、はじめて~~!!」
とか言っていいのでしょうか。アラサーなのに。

仕事終わりにディナーでも、とお誘いを受けてから承諾そして当日を迎えるまで、それはそれは多くの(僕の中での)困難がありました。前日譚だけで3万字くらい書けますが、詳細はまた今度ということで……


まず、場所。

「青山」と言われました。



AOYAMA。



やばない?


支配階級が住まうという街、青山。
資本主義の壁をこんなにも大きく感じたのは初めてです。

どうしよう……ワンルームに住んでるなんて言えない……聞かれてないけど……

でも、しかたない。約束したし。
バリバリ高い店だったとしても、突っ込むしかない。それが男だ。

そういうわけで、送られてきたリンクをポチッ。

すると、出るわ出るわ……

「美術館かな」と思うくらいグレートな店舗の写真。
ここで食事をする人がいるんすか?

もう入館料取れるレベルだろ、てくらいのおしゃれコンテンツが押し寄せてきます。
あれ、高い店ってチャージってのがあるんだったか。
僕の中で高級店ってロイホなのでよくわかんないっす。
(あ、ロイホはいいとこですよ!)


「うわー、2万かよ!1人あたりで? とんでもねえな~」




違いました。
正確には「¥20,000~」でした。




ひとり最低2万って。自転車より高いぞ。

食事するより1台ずつチャリンコを買ったほうが安い。


いかがでしたか? 
これが青山です。


青山ってチャリンコ乗ってる人いるんですかね?(偏見)


まあでも、どうやら僕は誘われた側だし年下だしということで、全額負担はしなくてもよさそうな雰囲気です。
最悪でも(最悪って言い方よくない)数千円OFFは確実。

ポジティブに「(正規に比べれば)格安で一流を味わう、またとない機会」と考えることにしました。

もう千円単位なんて誤差に感じますね。
いつも¥28のもやしか¥34のもやしかで悩んでいるというのに。

とはいえ値段にぐちぐち言っていられません。
僕がすべきは翌週の18:00迄にテーブルマナーを習得することです。



青山という圧力

さて、あっという間に週は明けてしまい、僕は一路青山へ向かいます。マナーは「パンはかぶりつかずにちぎって食べる」というのを覚えました。
(色々と)すごいでしょ?

待ち合わせは「青山ツイン」とかいうたっかいたっかい双子ビルヂングのロビーであり、この段階で十二分にビビっていました。

相手が来るまで

"skyscraper"

中学のとき覚えたけど受験でも終ぞ使わなかった英単語が、頭の中でグルグルしていました。

合流し、当たり障りのない会話(なんも覚えてない)をしつつ店に到着。

店の前、なんもない。
メニューとか、無い。
「一生懸命 営業中」とかそういう札は出ていない。


これ、岡山が発祥らしいですよ


シンプルに怖えな……
おそるおそる、入店。
あれ!
「カランコローン」って鳴らない!!

ドアの雰囲気で勝手にレトロ喫茶店みたいなのを想像していましたが、思いのほか「スッ…」と開きました。
てか、僕がドアに手をかけたと同時に店員さんが中から開けてくれました。

なるほど。
出迎え専門のスタッフさんがいるんですね。高級店には。

普通にお客さんがいるのに、めっちゃ静か。
自分の足音に焦るくらいでした。

こいつぁハイソ(半ば死語)だ……

叫ぶレベルじゃないと満足に会話もできない大衆酒場に慣れていた僕にとっては、まさに「格の違い」を体感する一瞬でした。


どこかしらで獲れた、何らかの魚のコンフィ

とりあえず無事着席。
椅子引いてくれちゃって、なんだか気恥ずかしいねえ! ええ!??
僕はねえ、普段は床にあぐらかいて飯にしとるんすわ!
……と、心の中でだけでもかりそめの余裕をこいていないと、空気に押しつぶされそうです。

ワインは相手さんが決めてくれたので、ちゃんとナプキン膝にかけて待機。
あれ、首元にたらすんだっけか?

と、ウェイター氏が颯爽登場し
「アミューズです」
とのこと。

大手芸能事務所か?

「蒸した○○(不明)を軽く炙り、△△(頭に入らない)仕立てのムースで包みました。下層のコンソメジュレ(???)で最後の一口(???)をお楽しみください」
だって。

~~~~~~~~~
高3のころ、進学校を自称していた我が校は、なぜか文系にも数ⅢCを課していました。
複素数、極限、行列、統計……
日本語で説明されているのに、なにも理解できない。
当時は随分苦しんだものです。
~~~~~~~~~


あまりにもわからなくて、受験生当時を思い出してしまっていました。

とりあえず、食う。

でも、食い方の正解が全く分からないから、正面の相手を後追いするしかない。
動きを真似て……でもあからさまなのはダメだ……

恋愛テクとして名高い「ミラーリング」を、僕は自分が生き残るために駆使していました。

ムースとかいうから甘いのかと思ったら、全然。
なんか、ほんだし?みたいな味やね!

ほんだしがあればなんとかなる

失礼すぎる感想を胸にしまいつつ「アミューズ」とやらはクリア。
どうにか、しのいだぞ……


「こちら、アントレでございます」

あああ、もう次が来たー。

なにアントレって?人名?

「◇◇直送のホタテをポワレし、軽く焦がしたバターソースをかけております。◎◎したバジルピューレとともにどうぞ。クスクスを合わせれば食感も変化いたします。」

ホタテをポワレ?
リリックか?

アミューズよりかは聞いたことのある単語だったので、だいたい全部わかりました。

箸で一度に摘まめる程度のアントレ?が、フリスビーくらいデカい皿に乗っています。
皿の余ったスペースには、模様を描くようにバジルピューレとクスクスが敷かれています。

クスクスってのはね、僕知ってるんですよ。
会社でもらって、どう食べるのかわかんなくてとても困ったんです。

で、相手を見ると、なんかホタテを崩してピューレとかクスクスをこすりつけてから食べるっぽい。
そっか、この模様も食べるやつなんだ。


……と、そんな感じで、料理が出てくるたびに窮地に立たされていましたが、どうにか無事完食できました。

そのあともいろいろ大変だったんですよ。
魚を食ったらデザートが来たので
「お、〆ですな~」
などと味わっていたら、その次に肉が出てきたり。
(マジなフレンチのフルコースだと、途中でデザート挟むらしいです)

「肉に合わせるワイン、なにかお好みはございますか?」
と突然相手から尋ねられ、
「え!?っと~~………ッスーーーーー(吸気)、ワインは素人でして………」
などとアワアワしていたら、ソムリエがいい感じのを出してくれたり。

肉料理は羊だったんですが、めちゃめちゃおいしかったです。
「わあ~! こんなごちそう、はじめて~~!!」
って感じでした。
……いや、アミューズからずっと、全部良かったですよ?

一番記憶に残ってるのは、ワインを頼んだときの、ソムリエと相手さんの所作ですね。
なんかソムリエが瓶もってきて、名前やら製造年やら確認するんです。生産者がどうのこうのとかも言ってたかな。

すごいな~、「この玉ねぎは私が育てました」みたいな感じ?
と思いながら見ていました。

すると、ソムリエがポンと栓を抜いて、ツイ~とグラスに注ぐ。
しかし指一本分くらいで止めてしまったんです。カルピス原液かな?

おもむろに相手さんがグラスをグイングイン動かして、じっと見て、カルピスを飲み。
少し間をおいて一言

「……すばらしい。 お願いいたします。」

それで、僕のグラスにも注がれました。こんどはたくさん注がれました。


なにこれ。

かっけ~~~~~。


後で調べたら、ホストテイスティングという儀式?だそうです。

そういうわけで、なんとか超高級フレンチレストランからは生還しました。
本当に勉強になりました。



食事って難しい

ただ、マナーとか以外にも大きな反省点があり……

ウェイターやソムリエの説明を聞いて
「そういう食べ方や味わい方が正解なんだ」
と思ってしまうことで、必死でそれに追従するだけで終始しちゃったんですね。

一通り説明されて、そのとおりの手順で口に運び、そのとおりの味がする、気がする。
ああ~、言われたとおりになってよかった!

僕は高級フレンチで、ひたすら安心したがっていたんです。

べつにマナー上等で下品に食い荒らすとか、説明を遮って好き放題するとか、そうではなくて。
提供側の意思を酌みつつも、食事の主体は自分であることを見失わないようにするのが大事ですよね。
なのに、それを全然できていなかったわけです。

これって、ラーメン屋で時折見かける
「当店での召し上がり方」
と似ている気がします。

カウンターや壁に貼ってある、筆文字の細かい手順。

『最初はスープを一口。
 次に麺だけ啜り、
 具はスープに浸してから。
 
 調味料は後にして、
 まずラーメンそのものを味わってください』

(筆者のイメージです)

こういうステップを踏ませてくることの是非は置いておきます。
ステップを踏むのが目的になったら本末転倒だな、と思うわけです。

僕個人は、ラーメン屋のルールに100%従うタイプです。
従いますが、退店後
「説明読みながら食べてたら、終わっちゃったな」
などと思い悩んでしまうことが多いです。

言うまでもなくフレンチとラーメンではジャンルが全く違いますから、どっちが偉いとかそういうことではありません。
ただ、コース料理もラーメンの手順も、基本的にはそれがベストないただき方なわけです。きっと。
そういう基本が確認するまでもなく身についたところで初めて、本当に美味しい食事というのができるようになる、のでしょうかね。

ということは、僕はあと何回フレンチすればいいのか……
てかラーメン屋も常連になってからが本番なのか……

どうなんでしょう?



とにかく!

食事はおいしく、楽しくしたい。
マナーやルールも、それのうち。

身の丈に合わない場所へ行ったことで、いろいろ身につまされました、というお話でした。


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