見出し画像

父が生前、「俺には金を使うな。病院から直葬にして、誰も呼ぶな。絶対に葬式はするな。戒名もいらない、お坊さんも呼ばなくて良い。」と言っていた。死ぬ自分にはお金を使わず、残された母にお金を残したい。そういう意図だった。父としては、母に葬儀での対応に疲れさせたくないという気持ちもあったはず。

父が強く希望していたので葬儀をあえてしない選択

私は仕事上、葬儀屋さんとのやり取りはかつてよくやっていた。祖母の時も家族葬にして、父と私で手配をした。直送の場合でも火葬場が混んでれば、何日か待機日数がある。父の時には母の強い希望で、病院から火葬場ではなく、一旦自宅に戻ることになった。父は亡くなるまで子育て団体のNPO法人の理事長をやっていたこともあり、そちらの団体の方からは葬儀をやらないのかという問い合わせもあった。数日間自宅に父がいる間、多くの方が最後のお別れに来てくれた。こんなにたくさんの人が来てくれるなら、葬儀をやっても良かったのかなと思ったりもしたが、父が強く希望していたので葬儀をあえてしない選択もありだと思った。

正解があるわけではない、葬儀もお墓も

墓も私が一人っ子であるため、両親は合同墓地を夫婦ですでに用意しており、私が墓守をする必要はない。我が家は色々なことを合理的に進めて、娘に迷惑をかけないようにする。そしてそれを娘にも逐次伝えてくれる、運命共同体のような感覚だった。これについては、正解があるわけではなく家族や個人でいろんな意見やあり方があって良いと思う。

以前のように葬儀を大々的にやる人は減ったように思う。それは、結婚式も同様。数時間のために何100万もかけるなんて馬鹿馬鹿しい。そう思ったら、やらない選択肢も出てくる。

父の以前の職場で、銀行の同期や先輩も後日自宅に来てくれた。何故、葬儀をしないのかとやや母を責めるように聞いた人もいた。誰かの選択を、自分の価値観で責めること、よくある光景だなあと感じた。母としては「お父さんが言い残したことを実行しただけ」と思っていても、周りの評価に揺れ動く気持ちもあった。

画像1

家族葬の当日

自宅から父を霊柩車に乗せる際に、夫と息子2人、近所の人、葬儀屋さんと運んでいる姿。なんとも言えない、悲しい気持ちになった。父はもう家には戻ってこないんだな。当たり前で当たり前ではなくなること。出発に合わせて、数人は自宅まで来てくれて見送ってくれた。最後まで、たくさんの人に囲まれていた。そんな父だった。

いよいよ、火葬場で最後のお別れ。父が入院した日は夜中に救急車で運ばれたため、息子たちは翌朝病室に来たのだが、長男は病室に入るなり泣き出し結局ずっと泣いており「これから学校だろ。」と父に慰められていた。入院中の面会の時には、流石に泣かずにいたが堪えている様子はよくわかった。亡くなって、自宅に帰ってきて亡骸を前に、長男はしばらく父の側を離れず静かに泣いていた。火葬場での最後のお別れ、花を入れるように葬儀屋さんから促されると長男が堰を切ったように大号泣。あまりの大号泣に、母も夫も私も思わず涙が引っ込む。過呼吸にでもなるのではないかと心配になり「息吸って!深呼吸して!」と長男に声をかけるが泣き止まず。そのままボタンを押すこととなった。

人によって悲しみ方は様々

お骨になって、火葬場から自宅に戻る途中には、長男が翌週受ける高校があったので「おじいちゃんに見せよう」と私が伝えるとお骨を抱えていた長男が泣き出し、そして高校の前を通る際にはまたもや大号泣。長男がどんな気持ちだったのかはわからない。たくさん、たくさん可愛がってもらった。そのことは、長男の中にずっと残るんだろうなあと思った。一方、次男は入院中に動かなくなってしまった父の身体にボディクリームを塗る係を買って出た。その時のニベアのクリームの匂いが今も忘れられない。父に声を掛けながら、母とお喋りしながら次男は、とても丁寧に父の身体にクリームを塗っていた。亡くなった時、葬儀の時、長男とは違い号泣することはなかった。表現の仕方が全く違う二人なので、特に気にしていなかったが、亡くなって1週間後位にふと母が「おじいちゃんは、二人が20歳になったらお酒を一緒に飲みたいと言ってたのよ」という言葉を聞いて、突然次男が泣き出した。小さい時からあまり泣かない子だったので驚いたが、人によって悲しみ方や表現は様々だなあと改めて感じた。

生きているうちに話しておかないと

こうやって家族葬として、送った私たち家族ですが、送り方は人それぞれ。だけど、生きているうちに話しておかないと、本人がどうしたいのか家族はどうしたいのか。お互いの考えも知らずに死んでしまう。まだ先だから、そんな話したら縁起が悪いからではなく。生きているからこそ、話し合いが出来る。コミュニケーションが取れる。きっとその方が、お互いにハッピーではないかなと思う。

東京ではないですが、友人の葬儀屋さんのリンクをご紹介します。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?