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【マガジン】月の砂漠のかぐや姫

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今ではなく、人と精霊が身近であった時代。ここではなく、ゴビの赤土と砂漠の白砂が広がる場所。中国の祁連山脈の北側、後代に河西回廊と呼ばれる場所を舞台として、謎の遊牧民族「月の民」の… もっと読む
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2024年4月の記事一覧

月の砂漠のかぐや姫 第310話

月の砂漠のかぐや姫 第310話

 羽磋は顔を上げて、濃青色の球体となった母親を、正面からしっかりと見つめ直しました。そうすると、自然とある思いが羽磋の心の中に浮かんできました。それは、これまでには持ったことの無いものでした。
「この人は、輝夜を心配する俺と同じだ。それに、理亜を心配する王柔殿とも同じだ。娘さんのことを心配している、一人の母親なんだ」
 相手の立場に気持ちが及んだからでしょうか。先ほどまでは恐ろしくて仕方がなかった

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月の砂漠のかぐや姫 第309話

月の砂漠のかぐや姫 第309話

 自分がそういう弱い面を持っていることを、羽磋は身をもって知っていました。この旅に出る直前に、自分が全てを悪い方に受け取って極度に興奮し、、言ってはいけないとても酷いことを、輝夜姫に対して言ってしまったことがありました。それはやはり、自分には輝夜姫に裏切られたと思えた場面で、心を強く持って彼女を信じ続けるのではなく、感情に流されて拗ねるという楽な方を、羽磋が選んでしまったのが原因でした。
 もちろ

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月の砂漠のかぐや姫 第308話

月の砂漠のかぐや姫 第308話

 もう羽磋は、自分の指一本でさえ、自由に動かすことができなくなっていました。
 なんとか話を続けようと開いていた口から、意味のある言葉を出すこともできません。それどころか、呼吸をすることさえも困難になっています。
 どうしてこうなってしまったのか、もちろん羽磋にはわかっています。でも、それらを引き起こした原因である恐ろしい眼球を、目を閉じて見ないようにすることもできないのです。
 羽磋は、目前に浮

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月の砂漠のかぐや姫 第307話

月の砂漠のかぐや姫 第307話

「そうですっ、そうなんです!」
 母親が投げつけて来た言葉からは、羽磋の言うことがとても信じられないという疑いの念が滲み出ていましたが、羽磋はそれを聞いても眉をしかめたりはしませんでした。それどころか、彼は即座に明るい声を返しました。
 羽磋が一番恐れていたことは、母を待つ少女の母親が自分の話に腹を立てて、この場から立ち去ってしまうことでした。でも、母親はそのような事をせずに、彼に問いをぶつけてき

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