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【マガジン】月の砂漠のかぐや姫

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今ではなく、人と精霊が身近であった時代。ここではなく、ゴビの赤土と砂漠の白砂が広がる場所。中国の祁連山脈の北側、後代に河西回廊と呼ばれる場所を舞台として、謎の遊牧民族「月の民」の… もっと読む
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2023年2月の記事一覧

月の砂漠のかぐや姫 第259話

月の砂漠のかぐや姫 第259話

 その濃青色の嵐を内包した球体は、地下世界の奥の方からこちらに向かって近づいて来ていました。他の透明な球体は空間の中を無秩序に動き回っていて、中には天井や地面にぶつかって割れてしまうものもありましたが、この濃青色の球体には意識があるとでもいうのか、ブワンブアンと全体を鈍く震わせながら、地面から天井に向かって伸びる石柱を上手に避けて空中を進み、確実にその姿を大きくして来ていました。
 この地下空間に

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月の砂漠のかぐや姫 第258話

月の砂漠のかぐや姫 第258話

「そうだ、羽磋殿なら」と、王柔は思いました。
「この激しい揺れの中でも立ち続けている羽磋殿なら、急斜面を駆け上がって理亜のところまで行けるのではないか。自分に気を配ってくれているのかもしれないが、羽磋殿だけでも理亜の元へ行ってくれたら、その方が良いのではないか」と。
「羽磋殿っ」
「オカアサンに理亜が・・・・・・。でも、理亜のお母さんは・・・・・・。だとしたら・・・・・・。そうだ、もう半分の?」

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月の砂漠のかぐや姫 第257話

月の砂漠のかぐや姫 第257話

 ところが、です。
「さあ行きましょう、羽磋殿」と、王柔が羽磋に呼び掛けたその声に、ドーンと言う鈍い地響きの音が重なりました。
 またもや、地面が大きく揺れたのでした。
 理亜が自分を取り戻したからか一度は揺れが小さくなっていた地下世界でしたが、王柔たちの歩みを邪魔しようとしているかのように、再び激しく揺れ出しました。それはこれまでのグラグラッと言う地震とは違って、何か大きなものが何度も地面にぶつ

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