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「お母さん、俺、『夢は何ですか?』と聴かれても、夢なんかないわ。」

今回は私の3番目こども、次男の話。
4月から中学3年になる次男は、この頃、表情がさえない。
塾から帰宅し夜遅い1人夕飯を食べている時、斜め向かいに座って新聞を読みながらコーヒーを飲んでいる私に向かって、急に話しだした。

中学校で、中学3年生・高校受験を迎えるにあたっての学年集会があったそうだ。
先生から、
「高校は、皆さんの将来の夢を叶える途中の過程です。皆さんの将来の夢は何ですか?」
そう言って、記入用紙を渡されたそうだ。

息子は困って、先生に
「僕は夢がありません。」と正直に先生に話したようだが、先生からは何のコメントもなく、息子の発言は無視された形でその場はどんどん進んでいった。
息子は何も書けず、白紙で提出したそうだ。

「それから、楽しいって何なん?友達とふざけて笑ってる事?なんか違うと思う。部活も楽しくないし、今は何やっても楽しいと思えない。
なんで俺、こんな風になったのかなあ~。」
と次男。

「笑ってることも、楽しいってことだと思うけど、それだけでなくて、もっといっぱいあるんじゃない?辛かったり、難しかったりしても、心が躍るような事。」
そう私が話していると、次男はポロポロ泣き始めた。

「あー、夢なんてわからないし、今、何で俺が泣いてるのかも、わけわかんないやー。」
次男はそう言って、空になった夕飯の食器を台所に置いてからリビングでゲームを始めた。

・・・・・・・・・

幼稚園の次は小学校、そして中学校と義務教育を経て、
「さあ、義務教育が終わるから、将来の夢を掲げて進路を自分で決めなさい。夢があるでしょう!」
と言われて、戸惑ってしまった次男。

そういえば子どもの頃、保育園・小学校・中学校の頃、誕生会や授業参観、卒業文集など、「将来の夢、なりたい職業」について発表することや書くことを、やたら大人から求められた記憶がある。
私はいつも困っていたし、嫌だった。
「夢は持たなきゃいけないのか?」
将来の夢など考えていなかったから、毎回、当たり障りなく、大人受けする職業を選んで答えていた気がする。
皆、意気揚々と将来の夢について発表するのを見て、「なんで私はなりたい職業が無いんだろう」と内心は思っていた。

子どもは「将来の夢を持ち、夢に向かって若々しいエネルギーでキラキラしているべきである」
それは、大人の勝手な幻想なのかもしれない。
大人のあなた、今、夢は何ですか?

・・

「人は2度誕生する」と言われている。

1度目は、母親の体内からの誕生。

2度目は、思春期・青年期の時期、親や周りから与えられた価値観を一度リセットして、自分自身としての自己の誕生。

誕生することは、苦しみを伴う。

とうとう、次男も2度目の誕生を迎える時期が来た。



先日の、塾の面談用紙の将来の夢の欄に、
「猫と暮らす、おだやかな暮らし」と書いたあなたらしさ。
お母さんは、大事にしたいと思っています。



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