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組織行動論から学ぶ注意の配分

経営学の分野の一つに組織行動論があることを知った。

組織マネジメントの学術的な本を読みたいと手に取ったのが、組織行動 -- 組織の中の人間行動を探る。Organizational Behavior。OBとも。組織の中の人間の行動に注目した学問だ。

組織のモチベーションを上げたい。離職を避けたい。個人の要求に応えても成果につながらないといった悩みのヒントになるのが本書。

人の行動にフォーカスして欲求の定義から始まり、モチベーションやリーダーシップといった組織で必要な行動指針の要となるキーワードが頻出。造りも会話形式で読みやすい。

早速、欲求や行動について読み解いてみる。

マズローの欲求階層説とアルダファーのERG理論

近年はあまりマズローの話を事例に出さなくなった感がある。

人の欲求階層は五段階ではなさそうだという話があるからだ。本書でも同様のことを指摘しつつ、ERG理論の話を紹介。こちらは欲求をExstence(存在)・Relatedness(関係性)・Growth(成長)と定義している。

ERG理論は、欲求階層説とは異なり、同じ個人が異なる欲求を同時に持つことがあると考えます。

組織行動 -- 組織の中の人間行動を探る P.24

欲求が満たされない時と満たした時をわけるのが特徴。可逆性があるとして、満たされないときは関係性も成長も同時に渇望することがあるし、成長を満たしても関係性を求めることはあるという考え。

これは、階層説よりもしっくりくる。あくまで欲求のモデルだが、段階的に満たすのではなく、欲求に限りはないと考える。組織が個人の欲求に応え続けるのは難しいと思えた。

欲求に応えれば生産性はあがるのか

本書で欲求の話から入るのは、実行動の影響を明らかにしたいからだ。ハッピー・ワーカー仮説より満足と成果を以下の流れとしている。

欲求 -> (行動)-> 満足 ---> 生産性・成果

組織行動 -- 組織の中の人間行動を探る P.33

最終的に組織では成果を出したい。ただこの話も三種類ぐらい分けられるとし、成果が出るから満足するのか、満足したからといって生産性が上がるのかといった議論を本書で紹介している。

ここで覚えておきたいのは、単純な欲求と行動のワンセットだけじゃないということ。モチベーションが高いから成果が産むといった安易な発想は避けたほうがよさそうだと欲求の章より学んだ。

プロアクティブ行動に注目

2000年代からプロアクティブ行動に注目しているとのこと。

組織の中の個人が、将来を見越して、組織や仕事に何らかの変化をもたらすことを意図して起こす、主体的で先取り志向の行動を指します。

組織行動 -- 組織の中の人間行動を探る P.261

いわゆる自律。自走する組織を目指すヒントを探る研究のようだ。積極的な情報収集やリーダーシップ・フォロワーシップの動きの話なので、組織の中で求められている行動と言えそう。

この実践に、フィードバック探索(feedback seeking)の話をしている。フィードバックを得ると職務パフォーマンスが高くなると。ただ、新人には対面コストが高く所属組織の文化にもよるので努力が必要との見解も。

確かに、いくらフィードバックが成長や関係性の改善に向かうとしても、ネガティブフィードバックを自ら受けるのは新人だと難しそうだ。そこで、組織的にとりいれる+個人の努力の組み合わせが必要との教えだった。

社会科戦術 -> リアリティ・ショック -> 適応

組織行動 -- 組織の中の人間行動を探る P.102

採用後はギャップを埋める必要があるのも、リアリティ・ショックが都度発生するから。OJTやフォローが少なくギャップを感じると、欲求から生まれるモチベーション・行動が低減し、離職という流れにもなると。

フィードバックループを組織的に実践するには、この辺りの話を丁寧に紡ぐ必要があるなと感じた。

リーダーシップにパス・ゴール理論

8章のリーダーシップの話は経営学で語られている範囲なので古典的リーダーシップを含めてふむふむと学んだ。リーダーシップ行動 → フォロワーのモチベーション → 成果という考えはそうなんだけどなーの思い。

マネージメントの交渉範囲

10章のコンフリクトの話はまさにマネージャーが求められる仕事と捉えた。

コンフリクト → 交渉 → 成果

組織行動 -- 組織の中の人間行動を探る P.212

このまとめのとおりである。このタフな交渉に心理学アンカーリング効果やパイの総和の考え方で妥協するのか回避するのか強調となる妥当性を得るのかが求められるよねとなった。

What -> Why -> What'

本書より得た一番の学びは、WhatからWhyの発見。

うまくいっている組織から、Whatを見出す。つまり、何をしたことによって、その組織がよいフィードバックループを生み出しているか。その発見から入る。これはナレッジ共有にもなる。

しかし、よく体験することだがそのままマネをしてもうまくいかない。チームや規模が異なるので前提が異なってしまいマッチしないからだ。そこで、WhatからWhyを抽出する。なぜそれをするのか。なぜそれなのか。

これにより、Whyから別のWhatアプローチを導き出すことができる。本質や抽象化の話になるかもしれないが、方法論をそのまま輸入するのでなく、考え方を学ぶというのが基本だと改めて感じた。

組織的に適切なフィードバックを回し続けたい

本書からヒントは得ても答えはない。Whyが見えてもWhatは組織次第。わかることは、個人の欲求と組織が求める行動をマッチさせるには、適切なフィードバックがやはり大事じゃないかと思えたことだ。

フィードバックには対話。その前段となる土台作りが先決。

新しく入社した人を迎えることをスタートとすると、会社や文化といったギャップを埋めるところからはじめ、アイデンティティを確立してもらう。個人の努力に任せるだけじゃなくて、組織として戦術的に支え組み立てる。

そこをフォローするには本書でも語られるリーダーシップとなり組織マネージメントとなる。個々の活躍と組織のフォローが噛み合えば、フィードバックループのサイクルが回ると感じた。

フィードバックを受け続ける環境が整えば、自ずとプロアクティブ行動の話のように、自走する組織へと迎えるんじゃないか。自走できれば、成果が出る組織になるんじゃないか。

欲求は果てしないからこそ、その欲求をきちんと捉える。組織が提供できるものって、案外ストレッチ目標だったりするのかなーと感じた。お金も業績も大事だけど、それだけでも満足しないのが欲求。難しい。

組織行動論の詳しい話は上記が参考になるので委ねる。むしろ、本書を手に取るとざっくり網羅的にわかる。

職務特性理論(職務特性モデル)で即実践できそうなのは、オープンな場所でリアルタイムに即時フィードバックをすること。これは、すぐに実践できることだから人にオススメできるし、やっていることなので継続したい。

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