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幹部への報告の方法、間違っていませんか?

13.エグゼクティブに対する話し方(職場のコミュニケーション)

 これまで、エグゼクティブが身につけるべき話し方について見てきましたが、最後にエグゼクティブに対するコミュニケーションを考えます。職場をはじめ、構造がフラットでない集団や組織にはコミュニケーションをめぐる問題やストレスが付き物ですが、話し方の工夫によってコミュニケーションに由来するストレスは軽減できます。一人ひとりの伝える意識と能力が高まれば、職場の雰囲気は改善に向かうはずです。

 仕事力のカギは、話し言葉で伝える力(口頭での説明能力)です。まず肝に銘じるべきなのは、「相手がどう受け止めるかが全て」だということです。

 ここでは、あなたが取引先との協議結果を気難しい幹部(直属の上司ではないA部長)に対して口頭で報告し、今後の段取りについて相談する場面を想定します。まず最低限の目標は、相手に誤解を生じさせないことです。そのためには、区切りや声のトーンを変えるなど、話し方を工夫すると効果的です。それ以外にも心がけるべきことは数多くあります。あなたも普段から無意識で行っていると思いますが、重要な点を以下に書き出してみます。相手にストレスなく話を聞いてもらうことが、自分や周囲のストレス軽減にもつながるのです。

(1)まずはA部長のスケジュールを確認し、できるだけ落ち着いた時間を選びます。時間帯によって気分にムラがある相手の場合、それも考慮します。A部長が話の長い人なら、あえて直後に予定が入っているタイミングを狙うのも良いでしょう。

(2)自分が報告しようとしている案件について、A部長はどこまで把握しているか、その案件についてどのような意見を持っているかを想像します。自分が知らないところで、誰か他の関係者がすでに報告している可能性はないでしょうか。

(3)A部長と対面したら、最初に伝えるパラグラフに意識を集中させます。少し高めの声で、はっきりと聞こえるように話し始めましょう。(2)の答えがまだ出ていなければ、最初の30秒以内で相手に探りを入れて、自分なりの判断を下します。最悪なのは、相手が話の内容を理解できない状況です。どこまで「おさらい」する必要があるか、注意深く見極めることが大切です。例えば、2回連続で見逃したテレビドラマをいきなり見せられてもストーリーの流れを追えず、相手は苛立つでしょう。テレビの音声が聞こえなければ更に苛立ちます。一旦苛立てば、不快感は長引きます。逆に、前回分の録画を昨夜見たばかりの相手にこれまでのあらすじを詳しく説明しても苛立つはずです。

(4)報告をする際には、「A部長は自分より忙しく、自分より視野が広く、自分よりこの分野について詳しいが、今回の案件については詳しく知らない」と思って臨むのが基本的な姿勢です。重要な案件の進め方について判断してもらうための材料として、忙しい部長の貴重な時間を奪ってまで報告する価値のある情報だと理解してもらう必要があります。

(5)コンパクトに報告します。相手に途中で話を遮られてもいいように、報告する内容の全体像を一言で伝え、最初から結論が見えるように話します。最初に、自分が出席した会議の感想と案件の見通しをひと言で伝えてから(話の方向性を示してから)、具体的な報告に入ります。その頭出しに対してA部長から何か反応があれば、それを踏まえて柔軟に軌道修正します。A部長に限らず、結論を後回しにされるとイライラするものです。相手はいつまでも待ってくれません。待っているように見えても、頭の中では待っていないので、実際には何も聞こえていないでしょう。

(6)上記(5)のとおり、コンパクトに伝えるのは効率的ですが、短い説明ほど誤解のリスクは高まるので要注意です。相手が目の前にいる場合、表情や反応を見ながらどこまで補足説明を続けるか瞬時に判断します。自分の話をどこでも切れるように、説明はパーツの積み重ねで考え、結論を先に持ってきましょう。

(7)説明用の資料を用いる場合、資料をA部長に見せるタイミングをよく考えます。上司は資料を手渡されるとすぐに目を通したがるので、自分の話を真剣に聞いてほしければ、話し終わってから渡すべきです。もし資料に沿って相手に説明したい場合、最初に資料にざっと目を通す時間をA部長に与えてから、自分の説明を始めます。その際、資料に書いてある内容をそのまま読み上げるのではなく、付加価値をつけて話す必要があります。

(8)情報を正確に伝えるのは大前提ですが、細かい情報を盛り込み過ぎると相手は付いていけません(幹部は他にも膨大な案件をカバーしているので、話が細かくなると耳をブロックしてしまいます)。意思決定に必要な内容にしぼって、かみ砕いて説明します。

(9)担当者である自分以上に状況を把握している人はいないはずなので、「一般化」と「具体化」を使い分けて簡潔に報告します。A部長は、自分の報告を踏まえて、さらに上層部への報告や対外的な発表を行うので、部内用語は使わないように心がけます。

(10)今後の段取りについて相談することをしっかり意識しながら報告します。案件の進め方について複数の選択肢を用意し、自分の中で優先順位を明確に付けておきます。自分がベストと考える選択肢を採用してもらえるよう、事実を歪めない範囲でメリハリをつけて説明します。特に、相手が第2候補のオプションと比較しやすいように説明の仕方を工夫しましょう。

 職場での報告や相談といった一つひとつの機会を大切にしながら、相手に伝える意識を常に持ち続けて取り組むことで、ストレスの少ない環境、優れたアウトプットを生み出せる環境に一歩ずつ近づいていけると信じてします。(おわり)

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