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せんべろと願いごと

赤羽という街をご存じだろうか?東京都北区にある、新宿から埼京線で14分の都市。千円でべろべろに酔っぱらうことが出来ることから「せんべろ」の街と呼ばれたりする。飲み仲間とよく行くのは立ち飲み屋の「いこい」。本店と支店がある。僕たちは支店に行くことが多い。

メニューは安くて豊富。ハイボール230円。納豆キムチ150円。たまご焼き150円。豆腐サラダ150円。1杯飲んで3品頼んでも680円。「これは安い・・・」最初は度肝をぬかれた。

入口はビニールで出来たのれんだ。そこをくぐるとすぐ右手にL字型のカウンターが目に入る。ほとんどが1人客で、みんな黙々と飲んでいる。フロアには横長や丸い形のテーブルが整然と並べられている。グループのお客さんはテーブルに案内される。
平均滞在時間は1~2時間といったところだろうか。それでも安く大量に飲める。
因みに朝の7時30分から営業しているのも驚きだ。

「おーい、こっちにレモンサワー」とか「お新香ちょうだい」と大きな声が常に飛び交う。
常連さんが多いこともあり、お店の人にタメ口の人が多い。
一方、お店の人は一見さんにもタメ口だ。最初は戸惑うことだろう。
でも、そんなフレンドリーな接客がアカバネという街を表している(温かい親しみの持てるという意味で)。

飲んだ後、僕たちが向かう場所がある。神社だ。ビルの屋上にあるこの神社は「作徳稲荷大明神(さくとくいなりだいみょうじん)」という。1階にある案内書きには「昭和5年に鍵屋染物店を開業する中西栄一が京都の伏見稲荷大社より観請(かんじょう)した」とある。

「ちょっと良く分からない」

観請の意味を調べると<神仏の降臨を請い、その説法・神託をうけること>とある。
「ああ、なるほど。商売繁盛を願って伏見稲荷のありがたいお話をいただいたうえで作ったということか」多分、解釈としては合っているはず。違っていたらすいません、神様。

最初は地上にあったらしい。が、同じ土地にビルを建てた昭和34年に屋上に持って行ったとのこと。

「屋上・・・このビルだと6階。参拝してもらうことをあきらめたのか・・・」
しかし、参拝客用の道順などは所々に貼ってある。あきらめた訳ではないようだ。

僕たちはかなり酔った状態でここに行く。
「えー、また行くの」「今日はもうきついよ」などと言いながらも、それぞれのご利益を願って、みんな階段を上りはじめる。なんと、このビル階段しか無いのだ。

はあはあ、ぜいぜい言いながら1段1段登っていく。酔っているので足が上がりにくい。途中、人が住んでいる部屋もあるので、静かに上がっていかなければならない。そのため、呼吸も控えめになり余計に苦しい。酔いのせいで吐きそうにもなる。

やっとのことで屋上である6階に到着。屋上はテトリスの正方形の1ブロック分削られた造りになっている。5階と6階が階段状になっている箇所がある訳だ。おしゃれなマンションに良くある、1つ下の階は5部屋で最上階は真ん中の3部屋しか無いデザインを思い浮かべてもらえれば、イメージがつくと思う。


その5階の屋根部分に神社は置かれている。屋上からは柵越しにななめ下にのぞき込む形だ。「これまた変な所に置いたな」

降りられないので正確なサイズは分からないが、2mほどの鳥居とその下にお賽銭箱が置いてある。その後ろにお社がある。シンプルな造りだ。

参拝者は柵越しにお賽銭を投げ入れるのだが、とても入りにくい。お賽銭箱の周辺は小銭がたくさん落ちている。前回行った時、1発で入ると願いごとが叶うと連れが言う。酔った勢いもあり、ウケ狙いで僕は「巨乳になりたい!」と叫んで100円玉を投げ入れた。見事に投入成功。みんな大爆笑。

次に行くときはちゃんとした願いごとをしよう。

千円で十分に酔える、ご利益のある神社もある人情味あふれる街、赤羽。
大好きです。コロナが落ち着いたらまた行きたいと思う。

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