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1年で1000万円以上赤字を出した寿司屋を建て直した話

前回のお話の続編になりますので、もしよければこちらをご覧になっていただけると、当時WEBマーケの会社で代表だった僕が寿司屋をはじめた経緯がわかると思いますので、是非。

亀有にある寿司屋を買い取って1年ほどそのまま経営を続けてきました。
でも、単月に黒字になった月がひと月あったかどうか。
年間で1000万円以上も赤字を出してしまいました。

当時の僕らで考えられるだけの様々な施策も行いましたし、ちょっとしたメディアにも出させてもらったりもしましたが、鳴かず飛ばず。

そこでちゃんとマーケティングからやり直そうとうことで、まずはお店の商圏となる葛飾区と足立区のことをしっかり調べてみると驚きのデータが見つかりました。

東京都23区平均年収ランキング

<東京23区在住者 平均年収>

1位:港区(902万円)
2位:千代田区(784万円)
3位:渋谷区(703万円)
4位:中央区(556万円)
5位:文京区(544万円)
6位:目黒区(537万円)
7位:世田谷区(506万円)
8位:新宿区(477万円)
9位:杉並区(436万円)
10位:品川区(427万円)
11位:豊島区(412万円)
12位:大田区(395万円)
13位:練馬区(395万円)
14位:江東区(389万円)
15位:中野区(387万円)
16位:台東区(385万円)
17位:墨田区(350万円)
18位:板橋区(350万円)
19位:江戸川区(346万円)
20位:荒川区(345万円)
21位:北区(344万円)
22位:葛飾区(333万円)
23位:足立区(324万円)

対象となる足立区と葛飾区は平均年収でワースト1位と2位。データをみて驚愕したのを覚えています。

そりゃぁ1回で1万円を超える食事を頻繁にするような人はなかなかおりません。

港区や中央区あたりにお店を移そうかとも考えましたが、既に1000万円以上赤字が出ているのでこれ以上新店舗で1000万単位のお金をかけることは非常に難しく、ただこれ以上赤字を垂れ流していても・・・という判断で一旦お店はクローズしました。

このままお店をやらない選択肢ももちろんあったのですが、このままの撤退は完全に敗北なので悔しい。(この思考は本当は良くないですね。)

その後、オフィスが船橋にあったのもあって、船橋に移転をすることになりました。

知人がもってる超古い(確か昭和30年代築)けど激安な物件が見つかり、知り合いの工務店さん(仕事は雑だけどめちゃくちゃ安い)に最低限の工事をしてもらって、厨房機器も製氷器以外は全部中古で揃えました。
6.8坪のお店がわずか60万円くらいの初期投資で完成です。一番お金かかったのはシャワートイレだった気がします。
家賃はわずか10万円。

知り合いというのもありますが、こだわりが無くてとにかく安価に済まそうと考えれば安価に済むものなのですよね。

ちなみに船橋市の当時の平均年収は380万円ちょっと。葛飾区、足立区よりはまだいい数字です。

熟成寿司専門店をオープン

さて、船橋に移転したのですが、圧倒的な武器がやはり必要です。
そこで目をつけたのが「熟成寿司」でした。

当時も熟成寿司を売りにしているお店というのはちらほらあったのですが、専門店は大阪に1店舗しかなく、検索をする限り首都圏で熟成寿司の専門店を大々的にうたっているお店はほとんどありませんでした。
(銀座や西大久保、二子玉川あたりには熟成寿司を出すありました。)

熟成肉の人気のピークが2015年の中盤なので、「熟成」というキーワードがしっかり認知されたいいタイミングだったと思います。

Googleトレンド 熟成寿司

ここで少しだけ熟成寿司のことを説明すると、日本の江戸前鮨はいわゆる寝かせの文化。
よく新鮮なお魚が美味しいと言いますが、新鮮で獲れたて直後の魚には旨味の成分であるイノシン酸があまり含まれておらず、時間経過とともにイノシン酸が多く含まれるようになってくるんです。

日本経済新聞 魚はとれたてが本当にうまいのか

プリプリの食感は失われてしまいますが、それが終わった後の柔らかくて旨みがMAXになった状態で提供するのが熟成寿司です。
まぁでもこれはマーケテイング的に使った言葉で、昔から江戸前鮨の職人さえであればやっていることだと思います。

マグロとかも20日とか熟成させたものをお出ししていました。もちろん、普通にただ放置しているだけではダメなので、色々な手法で臭みを排除したり腐敗が起こらないようにいろいろと工夫してのご提供です。
実験では、最大60日近く熟成させたりもしました。もはやハムみたいな感じになっていて寿司には使えなかったですがおつまみとしてはとっても美味でした。

20日以上熟成させたマグロ(中トロ)

お店をクローズしてなんだかんだ新しく船橋にお店をオープンするまでの数ヶ月、大将には熟成の研究をしてもらいました。
(もちろん給料は払い続けながら、自宅を中心にいろいろ試してもらっていたので、新しい店ができるまでの5ヶ月くらいは本当に気が気じゃないというか。)

最終的にはエイジングブースターやエイジングシートを使ったりと様々な方法で熟成方法は進化していったのですが、それはまた別のお話です。

さて、僕らはSEOには自信があったのです。
そのため、公式サイトを作り(今はクローズしています。)コンテンツマーケティング用のブログを定期的に書くことで「熟成寿司」というキーワードで Google で検索したら上位に表示されるようにするのは難しいことではなかったので、公式サイトオープンから3ヶ月くらいでそのミッションを達成。

「マグロ 熟成」「カツオ 熟成」とか、色々なキーワードで上位表示もできるようになりました。

この辺りはかなり戦略的に行なっていたのですが、こういった情報発信を行なっていくとメディアからの取材が増えるんです。

結果的に、ぶらり途中下車の旅に出させていただいたのを皮切りに、【日本人の3割しか知らないこと】や、地方のテレビ、雑誌、その他色々なところに出させていただきました。

お店は家賃10万円大将とアルバイト1名の2名体制。
減価率は30%弱。熟成にすることで、「この食材は今日出さないとロスになる」という心配もほとんどないのです。

カウンター7席で平均単価は13000円。
8800円のコースと13200円のコースの2種類(税込)を提供。
ざっくりの採算分岐点は100万円ちょっとという利益を出しやすいお店を作りました。

寿司屋は3ヶ月に一度通えば常連と言われる業態です。
そこで、サラリーマンの方でも常連になっていただくために8800円のコースを用意することで3ヶ月に一度、つまり春夏秋冬の旬をしっかり味わってもらえるようにと考えての値付けです。

オープン当初でお客様がまだ全く読めない状態からの18時と20時30分の2回転制で前日までの完全予約制
予約がない日を大将の定休日にさせてもらい、前日までに予約がない場合はアルバイトの人にも休んでもらうことで人件費を抑え(その分時給を上げていました。)ることで余計なコストを削減。

オープン当初は80万円前後の売り上げで出だしから苦戦し、お客様からは19時から予約が取りたい等のオーダーもいただきましたが、これ系に一度でも対応してしまうと常連がゆえに次回からも対応しなくてはいけないので一切拒否。

大将や他のスタッフからも客が入っていないうちは2回転制をやめようと言われましたが、後々苦労することになるので頑なに2回転制でお店を営業しました。

船橋に多くの友人知人がいたので、頻繁に僕が貸切会を主催して多くの方に足を運んでもらいました。
あのときは本当にありがとうございます。

この頃には多少飲食店のことをわかってきたので、いろいろな集客方法を実践していきました。

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