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あらためて、違える(たがえる)について

ブランディングで目指すものとは何か?いろいろな考えがありますが、根本では「違える(たがえる)」ことです。ブランドとは差別化戦略に他ならない。そのためには独自であることが求められる。逆説的に言えば、他と同じであれば「これ」を選ぶ理由がない。その場合、選んでもらうためには安くするしかなくなる。つまり買う理由を安さに求めないことがブランドの存在理由であり、言葉を換えれば、独自であることなのです。ココ・シャネルの有名な言葉があります。「かけがえのない人間であるためには、人と違っていなければならない」。これが彼女の強烈な魅力になっていたのは疑う余地がありません。

マ・マーという昔ながらのパスタ・ブランドがあります。ユニークなのはイタリアンがこれほど日本人の生活に定着していても、そんなことは意に介さず、昔ながらのケチャップ味のナポリタンやミートソースにこだわっていることです。これらはカレーライスやラーメンと同じく日本の食べ物でありイタリアンと言えるかどうかは微妙です。しかし今度、スーパーの棚を見て欲しい。パスタの棚にはディチェコやバリラ、スーパーが輸入した無名ブランドが並んでいる一方で、マ・マーのパスタや関連商品は三尺棚をほぼ一本、まるごと取っています。これが違えることの真価だと言えます。日本人のナポリタン愛、または昔懐かしい缶のミートソース味に応えるには海外ブランドではなく、昔ながらのマ・マーが良いのです。ただこのブランドも過去からのことを粛々とやっているだけではなく、パスタは早く茹で上がるための工夫なども怠りない。いまでは「ナポ専用ケチャップ」まであります。

結局、「ブランドにとって大事なことに専念する」ことが違(たが)えるコツでしょう。他はどうであれ、創意工夫を加えながらブランドが価値や意味を感じることを積極的に進めると、結果、違えることになる。時には遠回りをすることもあるだろうし、時間を無駄にすることもあるかもしれない。しかし僕の経験では不思議と後悔したことがない。専念するべきことを愛して、愛して、愛し抜けば、回り道でもそこに意味や価値が見えてくる。これもまた違えるに通じる道だと思います。

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違える就活/2021年3月17日
https://www.bmwin.co.jp/magazine/back_number/2021/20210317.html