水野与志朗/ブランドコンサルタント、ビジネス書の著者

有名食品メーカーや海外企業のブランドマネージャーなどを歴任。それまでの経験をまとめた書…

水野与志朗/ブランドコンサルタント、ビジネス書の著者

有名食品メーカーや海外企業のブランドマネージャーなどを歴任。それまでの経験をまとめた書籍「ブランド・マネージャー」の出版をきっかけに2005年に独立。200以上のブランドをコンサルティング。 https://www.bmwin.co.jp/index.html

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わからない時代に答えを見つける。

先月、支援先企業の「ハイパフォーマンス営業人材の思考特徴」を洗い出す仕事をしました。顧客からの評価(NPS)が高い人材9人を選んでもらい、4時間のデプスインタビューです。このインタビューには支援先企業の「顧客のライフタイムバリューを最大化するにはどうしたらよいか」という問題意識がありました。ビーエムウィンではブランド戦略に限らず、このような問題が持ち込まれます。つまり、欲しいものはわかっているけれど、どうやって達成したらよいかわからない問題。または課題そのものから定義しなけれ

    • 市場導入戦略とアマゾン

      今日は市場導入戦略について話しましょう。市場導入でよく見られるのが「垂直立ち上げ」と言われるものです。典型的なマスマーケティングの手法で、販売開始時期にマス広告を打ちながら製品の取扱いも一気に高め、導入早々に売上を最高潮に持っていくやり方です。よって生産体制もそれに見合うものにしておく必要があります。「市場は欲しがっているのに、欠品です」を避けなければなりません。需要予測と在庫管理をしっかり行わなければなりません。Eコマースが増えている時代でもこの手法はあり、最近の目新しい事

      • 情報交換や意見交換がもたらすもの

        ビーエムウィンには相変わらずブランドの相談が持ち込まれています。最近の課題感として、マーケティングマネージャーやディレクター(部長)の方はブランドの価値の再確認やマーケティングプロセスにあるボトルネックの発見と対策。そこには競争環境の変化によってリブランディングが求められていることがあります。一方、ブランド・マネージャーや開発担当者の方はイノヴァティブなコンセプトの開発や、その市場導入戦略の検討など。こちらはより未来志向で創造的なタスクですが、しかしその背景にはこれまでの画一

        • 自社のマーケティングのクセを知る

          製品が売れるかどうかは必ずしも製品自体の良し悪しが理由ではありません。もちろん製品は良いほうがいい。しかし仮に製品が普通でも売れることもあれば売れないこともあります。つまりそれ以外にも売上要因になるものは複数あって、それらが複合的に絡まって結果に結び付くわけです。ビーエムウィンのコンサルティングでは必要に応じてそれらをゼロベースで検証しています。おおまかに言うと「環境」「戦略」「戦術」「オペレーション」の4つに含まれるいくつかの要因を仮説ベースで「当たり」をつけた後、個別の問

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        • ブランド&マーケティングの教科書コラム
          99本
        • 水野与志朗の徒然コラム
          51本
        • 動画講座
          2本

        記事

          ブランド・エッセンスについて

          今日はブランド・エッセンスについて話しましょう。ブランド・エッセンスとは「ブランドの本質」と言っても良いでしょう。つまり「このブランドとは何か」ということです。これは言葉で聞くと「なんだ、そんなことか」と思うかもしれませんが、意外と深いものがあります。つまり「本質」とは何かに通じます。本質とは「変わらないもの」です。例えば「水」の本質は「H2O」という分子構造です。水が液体のみならず、気体になっても固体になってもH2Oであることは変わりません。逆に気体や固体、もちろん液体のH

          社内の温度感と社外への伝播

          今回は「社内からの抵抗・否定」について考えましょう。ある中堅支援先企業の人事部長さんから悩みを聞きました。社内がブランディング活動に否定的だというのです。人事部長さんだけにブランディングの目的は採用促進・離職防止となります。「社内、特に中堅層の評判はあまりよくないのです。なんでお金をかけてそんな無駄なことをするのか、今のままでよいではないか、何よりB2Bの我が社にとって意味があるのか」。B2Bの我が社という言葉から、おそらく広告やSNSが彼らの現場仕事とかけ離れていて無駄なこ

          早稲田大学で講義をします

          9月11日に早稲田大学日本橋キャンパスで社会人向けにブランド戦略の講義をすることになりました。「ブランドを実践的に学ぶためには、理論もさることながら、実際にブランドを成功に結び付けた経験者の体験から学ぶことも必要になります。この講座では、基礎的な理論を学ぶと同時に、ブランド戦略について、商標管理・企業ブランド・各業界のブランド戦略と網羅的にカバーした講座を展開します(同大学のウェブサイトより)」。講座ではコカ・コーラ、リクルート、トヨタ、味の素、ダイキン、電通デジタルという錚

          新時代に向けて

          先日、支援先企業での新規事業開発プロジェクトのキックオフに立ち会いました。最初に僕が挨拶をしました。「最近は新規事業の立ち上げに限定されず、会社そのものを新たな次元に変化させようとする企業が多いです。外的環境がこれだけ変化するなかで、円安や原料高騰など目の前の逆風に囚われ過ぎず、またこれまでの業態にも囚われ過ぎずに変化していこうと考えている企業が増えているようです」。要は新規事業開発とはいうものの、「目線を高くして新時代を作るつもりで取り組んでください」と言ったわけです。

          AIと共存するHIという概念

          今週、SMBCコンサルティングさんでネーミングのセミナーをしました。このセミナーは2014年から続いているロングランのコンテンツで、主に事業会社のマーケターが製品サービスのネーミングを決める時の基本戦略と作り方を教えています。今回のセミナーではコンテンツをリニューアルしChatGPTを活用したネーミング戦略を教えました。特にイメージワードを捻出するプロセスで実際にGPTを立ち上げ利用してみました。そしてクリエイティブのプロセスでは対象製品の市場状況を鑑みネーミングのルールに従

          あらたな戦略やビジョンを描くような抽象度の高い課題

          新たに事業部長になったような人の最初の課題はこれだと思います。特に目の前に難解な問題があるなら尚更で、そのソリューションとして組織に示すものが将来戦略でありビジョンです。経営陣からもそれを求められていることもあるし、部下もそれを期待して見ていることもあります。一方で将来の戦略や新たなビジョンを描くこと自体は問題解決の出口・納品物だというのも大事な理解だと思います。おそらくはそれを求めるに相応しい抽象的で難解な課題があって、どうやって着手したらよいか迷いあぐねているのが現実では

          あらたな戦略やビジョンを描くような抽象度の高い課題

          競争の激しい市場で新ブランドを売る

          今回は「ブランドを売る」についてあらためて考えてみましょう。簡単に言うと、ブランドを売るとは「いままでにない新しさを認知させる」ことと説明できるかもしれません。先週の日経新聞で連載されていた「ユニクロ秘録」はとても面白い記事でした。そのなかにNYの繁華街ソーホーでユニクロが旗艦店を出した時の苦労話が書かれています。 『足元から頭の上まで1列を同じ色にそろえて服を積み上げる「ボリューム陳列」は、ユニクロが日本で始めた店舗デザインの基本だ。特に壁際は、タペストリーをイメージして

          柔軟な新規事業戦略は「流れ」を掴む

          新規事業の立ち上げを行っている部署でありながら「十分な成果が出ていない」と考えているビジネスパーソンは意外と多いのではないかと思います。ある調査によると「起業家が思い描いた当初の計画、新規事業の93%は不成功に終わる」というデータもありますから、100案件中1〜2件の成功だとしても仕方ないかもしれない。ただこれでは満足できないのが現実です。4月になって増えてきている問い合わせのいくつかにはこのような新規事業の相談が含まれています。なかには既に立派な製品ブランドを持っている企業

          リーダーブランド失敗の舞台裏

          リーダーブランドが市場地位を失う理由には、例えば市場の変化への適応のまずさがあります。顧客のニーズの変化、新たなトレンドや技術革新、競合他社の動きなどに対応できなかった結果、リーダーの地位を失う。これは頑張ったにもかかわらず市場の変化に適応できなかったことが原因のように見えますが、実際には「やってみたが対応がまずかった」が本当の理由ではないかと思います。なかには意図的に「対応しないという決断を下した」などもあります。そんな事例を見てみましょう。 ネットフリックスの台頭とブロ

          日本企業の社長の夢

          今週から新年度を迎える会社も多いと思います。新年度に際して、先日、日経新聞で「社長、夢は何ですか?」という記事を読み「とてもいいなぁ」と思いました。まるで入社式で新人に語るようでした。「夢は成長の原動力だ。社会を変え、世界市場を席巻し、常識に挑む。日本企業の社長の夢からは覚悟が透ける。停滞の30年で蓄えた人材や資金、技術を武器に世界で再び勝負する。(日経新聞4月1日)」。数えてみると117人の社長が登場しておられました。時間をかけて、すべてじっくり読みました。感じるところも大

          固定観念が出来上がっている事業ブランドの変革

          ロングセラー・ブランドの悩みと言えばこれだと思います。かれこれ30年も続いているブランドをあらたに担当すると、いろいろな綻び(ほころび)や経年劣化が見られるものです。そしてそれに着手しようとすると、驚くことに社内の保守的な圧力が想像以上に強いことを思い知らされます。たいていは「変えることへの恐れ」を「これを好む消費者がいるから」という文脈に変換して語られます。今回はそのような「固定観念が出来上がっている事業ブランドをどのように変革するか」の話をしましょう。まず言えるのは変革し

          固定観念が出来上がっている事業ブランドの変革

          イノベーションや新規事業など上手く行くかどうかわからない手探りの課題

          一般的にイノベーションは「プロダクト」「プロセス」「市場」「サプライチェーン」「組織」の5つに分類されます。特に日本で多いのは「プロダクト・イノベーション」ですね。先日、支援先企業のプロマネの方が悩んでいたテーマでもあるので、今日はそんな話をしましょう。ちなみに最近では「組織イノベーション」も台頭してきています。僕たちのような外部コンサルタントを雇うのもその一環です。外部コンサルタントは組織に新しい視点や専門性をもたらし組織の成長や効率性を向上させる役割を果たします。 さて

          イノベーションや新規事業など上手く行くかどうかわからない手探りの課題