水野与志朗/ブランドコンサルタント、ビジネス書の著者

有名食品メーカーや海外企業のブランドマネージャーなどを歴任。それまでの経験をまとめ… もっとみる

水野与志朗/ブランドコンサルタント、ビジネス書の著者

有名食品メーカーや海外企業のブランドマネージャーなどを歴任。それまでの経験をまとめた書籍「ブランド・マネージャー」の出版をきっかけに2005年に独立。200以上のブランドをコンサルティング。 https://www.bmwin.co.jp/index.html

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カテゴリー創造という発想

10月20日に日本能率協会さん主催の公開セミナーを行います。「新任ブランドマネージャー入門セミナー」です。今回はその内容をちょっとだけ紹介しましょう。差別化戦略で最もわかりやすいのは「新カテゴリーであること」だと言えます。仮によく似た製品であっても新カテゴリーと認知されることによって「違うもの」と認識されます。例えばビールは好例でしょう。それまで高級ビールといえば「プレミアム・ビール」と呼ばれるものが一般的でした。代表的なのはエビスやプレモル(ザ・プレミアムモルツ)でしょう。

    • イノベーションと戦略思考

      先月、東急エージェンシーさんに招待されて渋谷QWSにて、ある日本の食材をどのように広めるかのワークショップに参加しました。食材は東北産・生キクラゲ。生産者の会長さん、その支援をしている方々、そして食品メーカーさんやコンビニなど流通企業さんたち数社が、総勢40人近くいたでしょうか。正直、僕はこれまでの人生で「キクラゲ」について3分も考えたことはありませんでした。「博多ラーメンにトッピングされている、あの黒い細切りのヤツ」くらいの認識です。ましてや「生キクラゲ」とは珍しい。この稀

      • 昇り龍の傾向を示すブランド戦略の秘訣

        僕たちのコンサルティングではコンサル開始から1年で「事業・ブランドがどのように成長したか」を年間移動平均(MAT)で検証するようにしています。この指標は「直近月の売上高を年度末とみなし過去12か月分を相加平均し毎月の推移をみる」ものです。要は毎月決算をしているのと同じで、ゆえに季節要因やキャンペーンの有無、特売の有無などの短期的・一時的要因を排除して事業の成長をそのまま見ることが出来ます。別な言葉ではプロダクト・ライフサイクル(PLC)を示すものです。S字曲線のどの状態にいる

        • ブランドの旗色を明確にする

          よく支援先企業の経営層の方々と「みなさんが今のポジションにいるうちに、この会社をブランド・カンパニーにしましょう」と話します。どのようなポジションで働く役員も、いまのポジションは一時的なもので必ず「次のステージ」があります。それは社長かもしれなければ、社外に求めることになるかもしれない。しかし、次のステージに行った時に、会社の部下や仲間から「あなたが役員で良かったです。あなたが会社を大きく変えてくれたから今の私たちがある」と言ってもらえたら嬉しいものです。しかも細々(こまごま

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        • ブランド&マーケティングの教科書コラム
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          ブランド・カンパニーを目指す

          ブランド・カンパニーを目指す。支援先企業の経営層の方々とよく話すテーマです。これは単なる売上利益と言った業績への好影響だけでなく「世間からの評判」という数値化し難いブランド資産を意味します。そういう意味では「ブランドとは評判である」という定義もまんざら悪くないかもしれません。そしてその評判は強力にビジネスを主導するものである一方、壊れやすい脆弱なものでもあるようです。経営者はそれを意識して評判を築き守る使命があります。 こんな話を思い出しました。昔、レミーマルタンというコニ

          企業倫理、ブランド倫理を整理してみた

          ビッグモーターの事件はあらためて企業倫理について考えさせられるものでした。ブランド・マネジメントの用語ではブランド倫理とも言います。説明するなら「ブランド価値を高めるために行った施策が、意図せず道徳的に反しないか」。つまり世の中の倫理基準に照らし合わせてOKかそうじゃないかを判断することです。ありていに言うと「正しいことをしているか」ということになります。むろん、ビッグモーターのケースは意図的に正しくないことを、おそらく経営者自身も認識していてやったでしょうから、ここで論じる

          【ブランド戦略のコツ 】強者の手薄なセグメントにマトを絞れ

          「自分がこのポジションにいるうちにビジネスを大きく伸ばしたい」「長年、置き去りにされてきた課題を解決したい」という想いで今の仕事に取り組む。こんなひとも多いでしょう。先日、ある外資系のCMOと食事をしていてそんなことを思いました。この方は最近この会社に転職し、早速、ビジネスが抱えている問題を話してくれました。業界事情を下敷きにして聞くと「昔から未解決のまま置き去りにされてきた問題」だと思いました。新CMOとしての挑戦はそれらを解決することです。 このような「困難に立ち向かう

          【ブランド戦略のコツ 】強者の手薄なセグメントにマトを絞れ

          ブランドは販売効率を良くする

          今日はあらためて、ブランドの基本的なお話をしましょう。何のためにブランドを作るのか。それは「販売効率」を良くするためです。「なんだ、売ることか」と思うかもしれませんが、大事なポイントは「効率」です。製品を売る時にいろいろな売り方があります。例えば営業マンが得意先を訪問して製品の特長やメリットを説明して歩く売り方もあれば、ネット広告を出して売る方法もあります。どちらも「売る」という目標は変わりませんが、「売り方の効率」は「方法」によって違います。営業マンが一軒一軒、得意先を回っ

          顧客体験はコントロールできるか?

          7月24日の日経新聞に「Twitter、ロゴを青い鳥から「X」に変更へ」という記事が出ていました。『米起業家のイーロン・マスク氏は23日までに、買収したツイッターのロゴを青い鳥から「X」に近く変更すると明らかにした。「間もなく私たちはツイッターブランドとさよならをして、徐々に全ての鳥たちにも別れを告げるでしょう」と投稿(日経新聞7月24日)』。これに対してツイッターユーザーの反応は複雑で、青い鳥(ツイッターバード)を惜しむ声や「X」へ反発する声などもあるようですね。この記事を

          価値のある「ご縁」はどのように広がっていくか?

          僕はいろいろな企業の方と、よく情報交換会をします。基本的には企業のブランド担当者の方が多いです。「この人はいまこんなことで悩んでいないかな」と思い、僕から声をかけることもあれば、無料公開セミナーのフォローアップ面談やスポットコンサルの初回面談として申し込まれることもあります。先日、ある会社に伺って情報交換をしました。話題はChat GPTを活用したブランド業務でした。そこで最近、取り組んでいるテーマを教えてもらい、その場でGPTを立ち上げ、新製品コンセプトを10ほど即興で作っ

          価値のある「ご縁」はどのように広がっていくか?

          トレンドとファッド

          Meta社の新しいSNSが話題になっています。『米メタが始めた短文投稿サービスThreads(スレッズ)の登録者がアプリ公開から2日間で7000万人に達した(日経新聞7月8日)』。どうやらツイッターを模したもので、マスク氏に経営が移った後のツイッターのごたごたに乗じて伸びているようですね。しかもインスタグラム(Meta社のSNSブランド)の利用者はそのアカウントでログイン出来て、同じ人を簡単にフォローできるのも始めやすい理由のようです。ブランド戦略の視点でみれば「競合の弱みと

          出社とそれ以外

          最近はすっかり「出社」がトレンドになったようですね。つい先日、セッションを行うためにオンラインを繋いだら、プロジェクトメンバーの方々13人が全員、会議室で集まってZoomを眺めてくださっているということがありました。とても恐縮したものです。「これからはみなさんが集まる時はそちらに伺いますのでおっしゃってくださいね」。また先日、別の会社の部長さんと飲んでいた時、「管理職は全員5日間、月金で出社しています」と話されていました。「しかしこんな声もあります。せっかくリモート用のデスク

          ブランド・ポジショニングの話

          ブランド・ポジショニングは競争戦略と密接な関係があります。つまり競合ブランドとの棲み分け、競争優位を保った状態で有利にビジネスをすることを目的とします。競争戦略に「正攻法」と「奇襲法」があるとすれば、ポジショニングは正攻法と言えるでしょう。ただし正攻法というように「攻める」と文字では書くものの、実態は「守る」ためのものだと思います。脇を固めるとでもいいましょうか、まるで城郭に似て「競合からの攻撃を防ぐ」「負けない」ために仕込むのが実態です。逆に言うなら文字通りの「攻める」機能

          コーポレイト・スローガンについて

          コーポレイト・ブランディングでは「コーポレイト・スローガン」を作ることが多いものです。どのようなスローガンが好ましいかは企業の事情によって様々ですが「顧客や従業員との心理的つながり」を作り出せることは大事なポイントになるでしょう。有名なところではナイキのJust Do It。これは1988年にワイデン・ケネディ(広告代理店)が行ったキャンペーンが始まりで、文字通り顧客との心理的つながりを生み出すことに成功したことから、長年使用され続け、最終的にコーポレイト・スローガンにまで昇

          テック系起業家に起きている変化

          こんな記事が出ていました。「山積みの社会課題を前にテクノロジーを梃子にして解決しようとする起業家が世界で増えている(日経新聞6月5日)」。この2ヵ月ほど、フランス人の若いAI開発者とLINEで仕事をしています。彼はベンチャーのAI開発者で、近い将来に自前のアプリを立ち上げるのこと。私の古い知り合いのフランス人が連絡をしてきてブランドの立ち上げを手伝うことになりました。このアプリは精神不安、社会からの断絶感からくる薬物・アルコールなどの依存症からの脱却を促すものです。その解決策

          ブランドを変更する・しないの問題

          4月にスープストックトーキョーさんのツイッターでの炎上騒ぎがありましたね。離乳食を全店で無償提供するとツイッターで発信したところ賛否両論が飛び出し、なんと3,200万件もの閲覧があったとのことです。「離乳食はありがたい」という声の一方、子連れのお客さんが増えることへのネガティブな反応もあったらしい。「子どもが苦手なので行くのをやめます」など、企業としては胸を切り裂かれるような言葉です。結論からいうと、いまでは炎上も収まり平静に帰ったようで良かったです。ただこれを単なる炎上と見