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水野与志朗の徒然コラム

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経済問題や社会問題にブランドマーケターの視点からコメントします。
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記事一覧

解決不能な課題に取り組む事業責任者

「事業の立て直し」という言葉を聞いてワクワクする事業責任者は一定数いるように思います。僕自身もマーケ部長だった頃からそうでしたし、いまでも心躍る案件はこれです。何がこんなにワクワクするのか。その根幹にあるのは「純粋な挑戦」でしょう。事業責任者の重要な資質だと思います。彼らが定義する成功とは「不可能と思われることを克服すること」「解決不能と思われてきた課題を解決すること」です。時には敢えてそのような役をかってでる人もいる。どうも成功体験を積んだ人ほどそのような傾向があるのではな

あらためてコロナ後のいま

もはや「コロナ」も一昔前の感がありますね。先日、「コロナ禍前後における価値観の意識調査結果」というプレスリリースを拝見しました。次のように報告されています。『コロナ禍後はコロナ禍前より、食品や衣服などを購入する際に「話題・トレンドのもの」「華やかなもの」よりも「暮らしに欠かせないもの」「長く使えるもの」を重要視する傾向が増えた。その理由として、「一過性ではなく、本質的な価値を求めるから」が最も多い(味の素株式会社調べ。PR TIMES、1月30日)』。この調査結果はいまの生活

多幸感とは何か

今年最後のnoteです。 先日、社内の忘年会(望年会)をしました。近所に出来たビストロでご馳走を食べワインを飲み、楽しく話しました。今年はとても忙しかったですが、素晴らしい年でした。来年も素晴らしい年になります。特に12月は毎日のように新しい相談が持ち込まれました。おそらく僕たちのようなブランド戦略などというニッチな分野を専門にしているコンサルティング会社としては、かなり恵まれていると思います。支援先企業のみなさまには感謝してもしきれず、いつも「ありがとう」と思いながら眠りに

攻勢終末点を考える

NHKオンデマンドで「英雄たちの選択」をよく見ます。磯田道史先生と杉浦友紀アナが司会をしている歴史番組です。先日「幕末最強!庄内藩の戊辰戦争〜徳川四天王・酒井忠次の遺伝子〜」を見ました。「幕末の戊辰戦争。奥羽越列藩同盟の中で唯一、新政府軍に勝ち続けた庄内藩。立役者となった二番大隊長・酒井玄蕃は徳川四天王・酒井忠次の末裔。その強さの秘密と選択とは?(NHK番組ウェブサイトより)」。庄内藩は酒井玄蕃を指揮官に、新政府軍に連戦連勝を続けます。しかし他藩は次々降伏し、残るは庄内藩だけ

共助資本主義というビジョン

日経新聞でサントリーホールディングス社長の新浪剛史さんが経済同友会代表幹事として語る記事を見ました。そのなかで心に響く一節があったので紹介します。「経営者は自社を良くするとともに、世の中から評価されることが何かも考えるべきだ。経済人だけでなく社会的企業やNPO法人の方々とも連携し、社会課題の解決に関わる。同友会ではこれを『共助』と呼んでいる。企業が社会課題の解決を支援し、社会から信頼されれば企業価値を高めることにもつながる。これは資本主義であり、日本がめざす共に助け合う社会だ

パワハラと価値観

先日、ある大手企業の経営幹部の方から「子会社のゼネラル・マネージャー(社長)になりました」と報告を受けました。「おめでとうございます」と言うと「それが大してめでたくもないのですよ」と真剣な顔で言われました。「子会社でいくつかのパワハラがあって調査をしてみるとたくさんあることが判明しました。これはもう組織文化を変えるしかないという話になったのです。私が行くのはそのためです」。18年も前にブランドのプロジェクトをご一緒させてもらい、いまでは経営幹部にまで上り詰めた方です。当時はプ

価値のある「ご縁」はどのように広がっていくか?

僕はいろいろな企業の方と、よく情報交換会をします。基本的には企業のブランド担当者の方が多いです。「この人はいまこんなことで悩んでいないかな」と思い、僕から声をかけることもあれば、無料公開セミナーのフォローアップ面談やスポットコンサルの初回面談として申し込まれることもあります。先日、ある会社に伺って情報交換をしました。話題はChat GPTを活用したブランド業務でした。そこで最近、取り組んでいるテーマを教えてもらい、その場でGPTを立ち上げ、新製品コンセプトを10ほど即興で作っ

出社とそれ以外

最近はすっかり「出社」がトレンドになったようですね。つい先日、セッションを行うためにオンラインを繋いだら、プロジェクトメンバーの方々13人が全員、会議室で集まってZoomを眺めてくださっているということがありました。とても恐縮したものです。「これからはみなさんが集まる時はそちらに伺いますのでおっしゃってくださいね」。また先日、別の会社の部長さんと飲んでいた時、「管理職は全員5日間、月金で出社しています」と話されていました。「しかしこんな声もあります。せっかくリモート用のデスク

家紋の話

今週から2週に渡ってブランドロゴやブランド名のヒストリーを紹介します。今回は「家紋(ブランドロゴ)」について。羽織などに示される、日本人に身近なブランドロゴと言えるでしょう。先日、東銀座の歌舞伎座に行った時、売店で家紋入りのキーホルダーを売っていました。ちょうど家紋の専門家のひとも売場にいたので「水野の家紋はどれでしょうか?」と訊くと「名字によって家紋は決まっているわけではなく、同じ名字でもそれぞれの家で家紋は自由に決められます。おたくの家紋は何でしょうか」と逆に訊かれました

街やコミュニティを支えるもの

コロナの再拡大で今年の夏は旅行や帰省も控えるひとが多いようですね。僕もお盆には帰省しようと思っていましたが見合わせます。観光や旅行の制限は地域の公共交通にも影響があるようですね。『赤字ローカル線に廃線圧力が強まっている。新型コロナウイルス禍でJRの旅客6社は九州を除く5社が赤字だった。地域の公共交通を維持するため、自治体にはこれまでのJR依存からの脱却が求められそうだ。(日経新聞7月24日)』もっともコロナ前からこんな話はありましたが、あらためて検討することのようです。 赤

モノが壊れる意味を考えてみた。

ゴールデンウィーク、今年は出かける人も多かったようですね。街を見ていても人出はコロナ前に戻った印象でした。僕は家にいることが多かったのですが、あろうことか幾つかの家電が同時に壊れ「一体どうしたことだろう」と思いました。まず洗濯機。実は半年ほど前に新品に替えたばかりです。次にキッチンの換気扇。更に玄関のインターホン。これらはマンションに備え付けなので15年くらいになるか。そしてドライヤーに、スマホの充電プラグ。これだけ同時に様々なモノが壊れるというのは何か不吉な予感すらします。

円安の原因とは?

円安が凄い勢いで進んでいます。「東京外国為替市場で19日、円相場が約20年ぶりに1ドル=128円台まで下落した。18日に日銀の黒田東彦総裁が「急速な円安はマイナス」とけん制したが、効果は長続きしなかった。米国の長期金利が節目の3%近くに上昇し、日米金利差の拡大が円を押し下げている。景気浮揚のための金融緩和継続と円安阻止の両立は難しく、当局はジレンマに直面している(日経新聞4月19日)」。 記事にもあるように、今回の円安、直接的な原因は日米金利差にあるようです。米国FRBが3

マスク氏のツイッター買収

先週、唐突にイーロン・マスク氏によるツイッター買収騒ぎがありました。「マスク氏は4日に約9%のツイッター株を取得したと表明し、13日には残る90%超を1株あたり54ドル20セントで購入すると提案した(日経新聞4月16日)」。なぜ突然にツイッター買収なのか。マスク氏はツイッターの非公開化によってSNS上の投稿管理の透明性を高めるなどネット上の「言論の自由」を守るのが狙いだと言っているようですが、彼くらい言論の自由を奔放にやっている人が「それを守る」と言うのだから「ツイッターの私

グローバル経済は本当に終わるのか?

コロナ禍によってグローバル経済が終わるのではないかという議論がありましたが、今回のウクライナ情勢によって「終焉論」は更に加速しているようですね。「戦争が平和的に解決され、ロシアに対する制裁が撤回されたとしても、外国企業はこれまでと同じようには投資しないだろう(【私たちが知っているグローバリゼーションの終わり】/ゲント国際ヨーロッパ研究所。日経新聞4月10日)」。 そもそも、ことの発端は米中摩擦。そこにコロナ禍で世界的に需要は冷え込み、供給は停止しました。さらに今回の戦争でエ