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インサイト/顧客の価値観

今回はインサイトの話を少しばかりしましょう。ブランドが成功し繁栄しつづけるには製品ありきの発想や、言いたいことを一方的に言う売り手主体のコミュニケーションを戒める必要があります。そして顧客の価値観を大切にしたマーケティングを行うことが重要です。なにをいまさらと思うかもしれませんが、出来ていない会社は多いと思います。売り手主体のコミュニケーションは個人的な状況を考えるとわかりやすい。ひとは自分の価値観に基づいて相手に話しかけるものですが、相手の価値観がこちらと違っていれば、それは相手にとって苦痛になる。バイクや釣りの話を延々とされて辟易したなどの経験はないでしょうか。ブランドと顧客の関係も同じです。自分の話は一旦置いておいて、相手の話を聴くことから顧客との関係性は始まります。

顧客の価値観を知ることもインサイトの重要な目的です。ひとは自分が大切にしている価値観を実感したくて生きています。これがブランドを使う時の満足感や、ひいては人生の満足度にかなり大きく影響します。なじみのブランドについて「実際に何故、こんなに長く使っているのかな」と考えてみてください。おそらく「しっくりくるから」というような理由が思い浮かぶでしょう。これは「私の価値観に合っているから」という言い方でもあります。だから親しまれているブランドはあまり大きく変更しないほうが良いのです。製品のみならず広告でも同じです。僕がかかわっていたブレンディ・インスタントコーヒーはかれこれ30年も原田知世さんを広告で使わせてもらっています。そんなブランドは他にも多くあります。赤いきつねの武田鉄矢さんしかり、ユンケルのイチローさんしかり。このような継続を厭わないブランドは広告それ自体がブランド資産となります。

話を顧客の価値観に戻します。そもそもひとは自分の価値観を大切にしてもらえると、大事にしてくれたその人を好きになるものです。ブランドも同じです。「そうそう、よく私のこころの内を分かってくれたね」と言われるような製品やコミュニケーションなら、それだけでポチっとしたくなります。時には人生の方向性を決めるような大きな決断や買い物もできるのです。例えば住宅など高額商品を買う時は、そのひとにとって上位にある重要な価値観が影響します。お金の使い方に影響すると言っても良い。だから顧客の上位にある価値観を見抜くことが購買心理におけるインサイトの核心でしょう。そしてマーケティングではそれを大事にした顧客体験を提供すればよいのです。