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コンセプトストーリー「嵐の夜の記憶」

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ある物語に沿った作品をまとめています。
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2021年7月の記事一覧

火のように伝われ

火のように伝われ

火が燃えている
まるでそう感じるような
ただまばゆい夜明けの夢だった
寝床から這い出て耳をすますと
人々の声
ああ、声が……
ひとつひとつ聞き分けることなどできない
一人ひとりが何かを伝えているはずの声、声
きっと そのはじけるような音の群れが
わたしにあんな夢を見させたに違いない
人々が伝えようとする思いは混ざり合い火のように
いつものわたしの心に焦げ跡を残す
どうして人々の声は無関係な者にも気

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記憶、波の奥底の

記憶、波の奥底の

だんだんと思い出は暗さを増していくものだ
過去を思えば思うほど
織り重なった薄幕の奥へ歩み入るように
幾重もの波の底に沈みたゆたうように

光は
遠ざかる

ある夜、何かを告げる鐘の音が風の隙間から聞こえてきて
それが何だったのか知ることはなく夜は明けた
知らなくてもよかったことなんだよ。
と、友達は言うけれど
きみもただ何も知らなかっただけなのだろう

「知らなくてもよかったことなんだよ。
 知

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