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BLUESが聴こえる。

子供の頃から、どうやら自分は他の人と「音楽の趣味」が違うらしいと、うすうすは感じていた。

なぜなら、流行の音楽、みんなが好きな歌に、ひとつも心を動かされることがなかったからだ。でも、そんなことを言うと変な子だと思われそうなので、とりあえず「いいよねー」みたいな顔をしていた。

中学生の時に、ビートルズにはまった。そこから古い音楽を聴くようになっていった。

高校生の時に、ローリングストーンズを聴いて心が浮き立った。あれ?もしかしたら、私が好きなのはこれなのかなと思った。

RCサクセションを愛した。彼らが好きな音楽のルーツをたどっていったら、R&Bにたどりついた。オーティス・レディング、サム&デイブ、ウィルソン・ピケット、アレサ・フランクリン、サム・クック。大好きになった。

そんな感じでいたら、マニアックな友達と仲良くなって、憂歌団を教えてもらった。それはもうブルースだった。

その友達に、泉谷しげるを教えてもらった。その当時の泉谷さんはめちゃくちゃロックをやっていて、カッコ良かった。ライブに行くようになったら、ある時(1992年くらいかな?)、京大西部講堂で「上田正樹とサウス・トゥ・サウス」が17年ぶりに復活したのを観て、そこから1970年代の日本のブルースマンにどっぷりとはまった。毎週、京都や大阪のライブハウスに通うようになった。

彼らのルーツをたどっていけば、やっぱりそれはBLUESで、夢中になって聴いていった。B.Bキング、ジュニア・ウェルズ、オーティス・ラッシュ・・・数えきれないブルースマンと出会った。やっと本当に自分の魂まで届く音楽を見つけたと思った。

嬉しかったけれど、孤独だった。この想いを誰かと分かち合いたかった。「いいね、いいね」と言い合いながら聴きたかった。自分で音楽をやったら、そんな友達もできたかもしれないけれど、楽器は何をやっても続かなかった。

26歳で家を出て一人暮らし。30歳を過ぎて結婚の予定もなし。このままライターとしてなんとか一人で生きていかなければと考えていた時、たまたま「ブルース」で検索して見つけたブログ。タイトルは「Everyday I have the blues」。

ドキドキしながら読み進めると、最初に目に飛び込んできたのはこのワードだった。「マディ・ウォーターズ」「バー」「大江健三郎の『個人的な体験』」。

なんだ、この人は、と思った。私の大好きなBLUESと酒と文学をこの人も愛している。それが文面から伝わってきた。それも、私の好きな文体だ。リズムが心地よくてたまらない。そのうえ、仕事はコピーライターで、趣味でブルースバンドをやっている!

興奮しながら、思わずブログにコメントを残した。書きながら、「こんな人と現実の世界で出会えたらどんなにいいだろうか」と考えた。もちろん恋愛感情ではない。本とBLUESの話を思う存分しながら、一緒にお酒を飲めたら、どんなに楽しいだろう。ライブだって一緒に行けるかもしれないと思ったのだ。

そうしたら、どんなに孤独じゃなくなるだろう。

それからわずか2年後、そのブログの人と新婚旅行で、ずっと夢だった「シカゴ・ブルース・フェスティバル」に行くなんて、あの時は想像もしていなかったけれど。

人生は、何が起こるかわからない。だから、面白い。

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